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第7話「邂逅スピリットサイクロン」(生還するまでが観光です。)

ー二〇二〇年 六月七日 午前 伏見稲荷大社・千本鳥居ー


俺の名前は寳田尚彦、大阪出身、

九州在住のもうすぐ三十歳の独身男性だ。

ある日突然、目の前に現れたこの織姫と言う人物。

正体がまだよく解らないコイツとの出会いを皮切りに

生活が一変した。


三年前に取得した特許が功を奏し、

多くはないがそれなりの収入を得ているので、

こうやって今、

沢山の人に囲まれ

千本鳥居を登っている。

しんどすぎて吐きそうだ。

思ってたんと違う。

舐めていた。リサーチ不足だ。

これは俺自身のミスだ。


「あら尚彦君、だらしないわねえ」

「おいおい、俺の半分しか生きてねえのに情けねえな!」


少し先を歩く野田夫妻から激励を受ける。

スマホの着信が鳴る


「尚彦殿!どこにおるのじゃ?ウチはもう上に到着したのじゃ」


俺が情けないんじゃねえ。

こいつらの体力が異常なだけだ

チクショウ。諦めようかな

振り返っても前を向いても

解放感がない。

千本鳥居も相まって人間の大渋滞。


いろんな国の人々がいろんな国の言葉を話し

いろんな匂いがして眩暈がする。

ここはどこだ。異世界か?

思考が乱れて、アホな事を考えてしまう。

よし、もし次があるならば平日にしよう。


気が付けば足が完全に止まり

先を見つめるだけの地蔵と化していた。


「織子、すまんが俺は下で待っている」


主観ではあるが、織姫に電話を掛けていた俺は

人生で一番自信に満ちた男前フェイスだったはずだ。




ー三十三間堂ー


建物の正式名称は蓮華王院本堂といって、

近くにある妙法院というところの飛地境内らしい。

太古の日本が凝縮されたような独特な雰囲気を醸している。


「ひょほおおお!圧巻であるのー!」


織姫は目を輝かせている。


「おお、こりゃすげえな」

「来てよかったわね。オリちゃん」

「怖っ!何本手ぇあんねん」


千一体の千手観音が立ち並ぶ。

これは嫌でもパワーに満ちていそうだ。



ー清水寺ー


いい景色だった。素晴らしい景色だった。

それだけしか思い出せない程、

尚彦は人ごみに酔っていた。

ここ数年は田舎ののどかな空気に慣れて

完全に油断していた。

地動説すら嘘なのではないかと思うほど、

思考がバグっていた。

この暑さと相まって。

まさに苦行である。


見る度に織姫の居場所が変わっている。

あいつはどうしてこんなにアクティブなのか。

今日、自分は生きて帰られるのか。



三年坂・二寧坂と進み、ここで野田夫妻は高台寺へ、

尚彦と織姫は一念坂から八坂神社へ向かうことになった。


「尚彦殿、京都とはすばらしい街じゃな」

「そうか。お前の記憶とはやっぱり違うもんなのか?」

「・・うむ、それがよくわからんのじゃ。」


解らんのかい。と心の中でツッコミを入れつつ、

下河原通りをしばらく歩くと

八坂神社が近づいてきた。


「参拝だけして、俺はその辺で時間を潰しておくから、

なんかあったら連絡しろよ」

「ありがとう、尚彦殿」


大きな神社は、他の神社と違って

どこかインパクトがある。

個性が強いというべきか、

格式が高いというべきか。


南楼門から正面にある本殿へ。

尚彦はここで参拝する。


「じゃ、またあとでな」

「わかりました。また連絡いたします」

「・・・ああ」


このたまにまともな話し方になるのは

一体何なんだろうと思いながら

西楼門から祇園商店街へ出る。


フリをしてもう一度南楼門へ回り込み、

舞殿を盾にして距離を取り、

織姫を見守ることにした。



ぐるっと周回するように全ての社へ一通り参拝し、

もう一周歩く。

その後、もう一度本殿前で立ち止まり、

無言で屋根辺りを見上げている織姫。

その様子は、まるで誰かを待っているようだった。



ー同日 同時刻 同場所ー


「ほらあなた。何年振りかしらね。三十年くらい?」

「ああ、懐かしいな。この階段。昨日の出来事のように覚えているよ。

学生の貧乏旅行で来ていた俺は、ここで動けなくなって・・・」

「そうね、あなた五時間は座っていたわね」

「そうだそうだ、あれは半分気を失っていたな」


と、思い出話に花を咲かせ、

祇園商店街から八坂神社のシンボルともとれる

西楼門へたどり着いた藤原雅彦・沙織夫妻。

入ってすぐにある三つの社へ参り、そのまま外周の社へ参る。


談笑しながら本殿へ向かう。

二人揃って参拝し振り返ると、

そこに立っていたのは

大きな屋根を見つめる

小さくて不思議な雰囲気を持つ女性だった。

先に雅彦が気付く。


「あれ?あの人、君の若い頃に少し似ているね。」

「あら本当ね、目の辺りなんか伊織にも似て・・・」


一瞬魂が拡張したような、大きな鼓動に似た感覚。

目を大きく開き、その姿に釘付けとなった

しばらく彼女を見つめる沙織。

「ん?どうした沙織。もしかして親戚の子だったかい?」


ゆっくり近づく沙織。

それに気づいた女性は笑顔で目を合わせる。


「あ、あね、さま?」

「ど、どうした?沙織、大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ。(今私、姉様って言ったわね)

突然ごめんなさいね。変なこと言って」


その女性が二人へ歩み寄り、話す。


「そうですか。私を知っているという事は、

やはり私は帰ることが出来るようですね。

そして、私と共に飛ばされたか。ちふる。

それも違った時間に」

「ちふる・・そうずっと昔。

私はそのちふるという名で生きていました。

ありがとう、姉様。

私はやっと今、あなたに辿り着きました。

数百年・・・

ずっと、ずっと。お会いしたかったです。

それとね、聞いてください姉様、もう一つの・・・」


二人の魂の思い出話は、しばらく続いた・・・

途中、体調不良でフラフラになりながら書いたので

後日加筆&修正すると思います。

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