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プロローグ「平安蹴鞠スマッシュ」(超新星爆発の可能性を想像します。)

目を覆っても眩しいほどの光に包まれ、宙に浮く女性。

一人の男が、なにかを叫びながらこちらへ手を伸ばしている。

プラズマの様な何かが周辺を迸り、彼女は叫んだ。

『私のこの魂を、この匂いを、感触を覚えておいて下さい。

必ず、この血と記憶をもう一度貴方のそばへ連れて行きます。

だから、

お願い!

信じて!

待っ・・・!!』





-二〇二〇年 十二月 関西地方北部-

光が極限まで明るくなったところで、目が覚める。

そんな夢が何日も続く。

いつもここで終わる夢。

光に包まれて消えて、目が覚める。


「んーまたこの夢かぁ。」


この頃よく見る夢。

つい最近の出来事のような、

遠い昔の記憶のような。


いやいやこんなシーン、私は知らない。

覚えているわけでもなく、

思い出したわけでもない。

テレビで見たりしたわけでもない。

絶対に知らない場面。


私の名前は藤原伊織。

真面目で優しい父がうつ病を発症してしまい、

母と家族三人で東京からこの母方の実家に引っ越した。

それに伴い、大学は辞めた。

半年前くらい前の話だ。

私は今、近くの歴史資料館で働いている。


引っ越した母の実家の掃除をしている時に

天袋の奥から出てきた大きな箱。

ほうきと孫の手を駆使してなんとか取り出した。

中には何かの記録っぽい本があった。それは

先祖代々伝わってきたらしい

千年くらい前の記録のようだ。


・・・のわりには、

多少おふざけが過ぎるような描写が

散見されるけど。

それと、立派な小箱に保管されていた古い櫛。


職場で知り合った歴史オタクの先輩

十和田百花さんに

解析、解読をしてもらう事ができた。

これがきっかけで友人になった。

いおちゃん、ももちゃんと呼び合う仲になった。

少し年齢は離れているけど

移住して初めての友人だからね。

そりゃ嬉しいよね。

まあその話はまた次の機会にしよう。


このご先祖様らしき人による記録だと、

天喜二年(一〇五四年)四月のある夜、

夜空をかき消すほどの真っ直ぐで強い

柱のような閃光が目の前に現れた。

その光に照らされたご先祖様は、

二〇二〇年に飛ばされて、

しばらくそこで過ごして、

元の時代に帰ったという。


挿絵のようなものがいくつかある。

よく解らないバイクの様な乗り物に乗って

ジャンプしている?

ETか?

見たのか?ETを。

二〇二〇年に?

まさかリメイクされるのかな?

えっ今??

この独特な絵にも興味が湧く。


まさかの今年か。

でも帰った日付はない。

今もまだ現代にいるのかもしれない。

胸が躍る。

正直ワクワクが止まらない。

こりゃ踊らにゃ損だ。

私の直感がそう言っている。


『後冷泉院、天喜二年四月中旬以後 

丑時客星觜参の度に出ず、

東方に見え、客星天関に(はい)す、

大きさ歳星の如し。』


藤原定家が記した『明月記』に

それっぽく当てはまるような記述を見つけた。

今風に書くと、


『天喜二年(一〇五四年)四月の中旬以降の夜中に、

東の空、おうし座の角のあたりに明るい星が現れ、

その明るさは木星と同じくらいだ』


という事らしい。

この記述はあの有名な『かに星雲』との事。

同じ平安時代ではあるものの

藤原定家が生まれる遥か昔の話で、

過去の陰陽師が残した記録を付け足したものらしい。

だから確証はない。面白いけどね。


超新星爆発とは、寿命を迎えた恒星が

それまで放出したエネルギーよりも

大きな力を一気に放ち、華々しく散る。

その後、恒星の質量によっては重力崩壊を起こし

ブラックホールになっちゃうような

世にも恐ろしくて美しくもある天体現象だ。

見た事はないし、

そうそう見られるものでもないらしいけど。

もし、この影響で起こったものが

このタイムスリップと思われるような現象ならば

確かめたい。

知りたい。

ただの作り話かも知れないけど、

それでも、そうだったとしてもそれはそれで物語として

辿ってみたい。ここに記された場所へ訪れたい。

ある種の聖地巡礼というやつだ。

近頃よく見る夢と同じような内容なのも気になるし。


母に話をした。ご先祖様らしき人の伝説を知っていた。

この話は口伝でも継承されているらしい。

口伝だけあって少し違った味付けがされていた。

その記録の主は、

この血筋の中で何度か生まれ変わっていて、

男だったり女だったりしながらここまで来たとかいう

もうそれは聞き様によってはホラーな展開だった。

でも、なぜ私には伝えていないのだろう。


「もしその人に会えたのなら、これを見せれば一発よ」


母から差し出された立派な小箱。

それはあの時に見つけた櫛と同じものだった。


準備をしよう。

会いに行こう。

この時代にいたご先祖様と思しき人が過ごした場所へ

行ってみようと思う。


そう、

有休と正月休みを併用して。


この話は「過去と未来」、「超科学と魂の神秘」、

「運命と偶然」が織りなす壮大な物語である。


はずである。

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