記憶に残る、あの夏
ー――― 「青太郎さん。海に映る星って、幻想的だと思いませんか?」 ――――
彼女の声は、今でも僕の脳裏に深く刻まれている。
二十二歳になったばかりの夏、僕は茨城の那珂常陸市で、忘れられない思い出ができた。
学生時代最後の夏。本当に、忘れられない夏。忘れてはならない夏。
あの出来事は今でも鮮明に詳しく思い出せるほど、僕の心の隅々にまで刻み込まれている。
僕はその当時、茨城の水都市にある国立水都城大学教育学部の四年生だった。実家は沖縄のはずれにある城間村。直線距離では軽く一千キロ以上離れた茨城の大学に入ったのは、時代劇が好きで「水都の副将軍」に憧れがあったため。教育学部では、特に日本史を専攻していた。
アパートには、オンボロスクーターが一台置いてあった。それが学生時代の僕にとって、これ以上ない愛車だった。水都市に隣接した那珂常陸市や大荒井町などは、庭のようによく行っていた。
あの頃が、懐かしい。
時代も平成から令和となり、もう四年が過ぎた。あれからもう、二十五年が経つのか。
この部屋の窓から見える海を見ていると、彼女の声が、今もどこかから聞こえてきそうだ。