表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ワンナイトした飲み友が翌朝に婚姻届を差し出してきた

作者: 結城 からく

 目覚めるとピンクを基調とした部屋にいた。

 見覚えがあるものの、二日酔いのせいで頭が上手く回らない。


「ここは……」


「おはよう! ちゃんと寝れた?」


 話しかけられて顔を向ける。

 そこにはもこもこしたパジャマを着た美女——秋奈さんがいた。


 彼女は飲み友達で、ネトゲで出会ったのがきっかけだった。

 リアルだけでも数年の仲となり、たまにこうして宅飲みをするのだ。

 昨晩もたくさん飲んだのは、この強烈な頭痛が物語っていた。


「お味噌汁飲む? 即席だけど」


「あっ、お願いします……」


「それと加崎君」


 秋奈さんが意味深な顔で近寄ってくる。

 彼女は俺の耳元に顔を寄せると、少し恥ずかしそうに囁いてきた。


「——昨日は気持ちよかったよ」


「はい?」


「何回戦もしたから腰が疲れちゃったね。加崎君は大丈夫?」


「えっと、その……」


 俺は恐る恐る自分の身体を見る。

 全裸だった。

 ベッドの横には俺と秋奈さんが脱ぎ捨てたと思しき服と下着が散乱している。


 その瞬間、昨夜の記憶が蘇ってきた。

 宅飲みが盛り上がった結果、俺達は一線を越えてしまったらしい。


(ワンナイト……注意してたんだけどなぁ)


 秋奈さんは酔うと距離が近くなる。

 男女の友情を壊さないため、俺も警戒していたのだが理性が負けたようだ。

 幸いなのは秋奈さんが普段通りに接してくれていることだろう。

 そう考えていると、秋奈さんが俺の肩を叩く。


「ねえ、ねえ、加崎君」


「何です?」


「いつ結婚しよっか」


「えっ」


 俺はフリーズする。

 気が付くと秋奈さんが一枚の書類を大事そうに胸に抱えていた。


「あの、それって……」


「婚姻届だよ。用意してたの」


 秋奈さんは嬉しそうに微笑む。

 そして前のめりになって顔を近付けてきた。


「あたし、フリーランスだからどこにでも引っ越せるよ。引っ越し代も自分で出せるし」


「いや、ちょっと……」


「仕事が嫌なら養うよ? 最近、仕事の愚痴多かったもんね。加崎君、家事が得意って言ってたからあたしも助かるよ。あっ、そうだ! 諦めたって言ってたラノベ作家! 今から目指してもいいんじゃないかなっ。加崎君ならきっと実現できるよ!」


 秋奈さんが早口で語る。

 妙な迫力があり、途中で遮る余裕などなかった。

 秋奈さんはじっとりとした上目遣いで俺を見つめながら、ダメ押しの言葉を告げてくる。


「あたし、理想の奥さんになるよ。だから……絶対に捨てないでね?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ジャンル:ホラー恋愛 ……。美女で良かったね。資金も稼いでくれるらしいよ。
婚姻届け準備済みというのが計画的すぎるけど 独身で過ごす老後を考えれば幸せだと思う ただ、美女なのに考え方が卑屈すぎるのは何か理由があるんだろうか?
お幸せにw うん。 責任と言う名の墓場へようこそw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ