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間話、The Girl in the Revolving Lantern-Fragment from Ep.12。

 オレンジ色に染まった公園。

 幼い頃、よく遊んだ思い出の場所。


「キッチョ‥‥‥これ、あげる」


 そこで俺は、自分より1つか2つ年下のお人形さんのような可愛らしい少女からあるものを差し出されていた。


「え‥‥くれるの?」


「嬉し?」


 公園にはもう他に誰もいない。

 皆門限やらなにやらで帰ってしまった後の事。


「ありがとう! ミサンガだね!」


「ミサンガじゃない‥‥」


 この少女とはいつの頃からか、よく遊ぶようになっていた。

 違う小学校に通っていたようで、他の友達と一緒に遊んだ記憶はない。

 それどころか、他の友達と遊んでる時間に目にした記憶すらない。

 そう俺は、夕暮れ時にふらっと現れるこの少女に会う為に、皆が帰った後も独り公園に残っていたような気がする。


「ご、ごめん、ミサンガじゃないんだね。なんだろう? でも凄く綺麗だ!」


 それは色とりどりな布を重ねて造られた、ミサンガより少し大きめな輪っか状をしていた。


「ここに付けて」


 少女の可愛らしい手は自らの首を指差していた。


「ん‥‥‥首に? あ! これネックレスなんだね!」


 好きだった女の子からのプレゼントにテンション爆上がりな少年、俺。

 ネックレスとはだいぶ形状が違うが、当時の幼かった俺にはそれが分からなかったのだろう。


 ———多分コレは、犬などに付ける首輪だ‥‥‥。


「付けて」


「うん!」


 嬉しそうに自らの首に少女から貰ったソレを装備する少年、俺。

 何度見ても、ニヤニヤしただらしない顔をしている‥‥‥。


「いつも付けてて」


「ありがとう、大事にするよ!」


「悪い虫()けになるの」


 虫?

 コレを付けるとに刺されなくなるのかな? なんて思ってた少年時代。

 今思えば、おそらくこの少女も俺に好意を持ってくれていたのだろう。

 そして大人になった今ならわかる、こういうプレゼントには本来指輪などが相応しい、けっして首輪ではない。


「これで僕は世界中の虫から守られた、霊長類ヒト科最強になったぞ!」


 テンションの上がり方が凄まじい。

 当時の俺はちょっとアホの子だったのかもしれない‥‥‥。


「キッチョ、また明日ね」


 そう言い残し少女は公園から消えていった。


 その後、少女は本当に消えてしまった。


 明日も会えるはずだった少女と俺は2度と会う事はなかった。


 これは何度も見る甘酸っぱい初恋の夢‥‥‥ん、夢?


 ———あ、そうだ、これ夢だ!







「はっ!!」


「‥‥‥っ」


 目を開くと、目と鼻の先に軽く悲鳴をあげて目をまん丸にしてるこの世のものとは思えない美しい顔。


「ご主人様、何やってんです?」


 学園に向かう馬車の中、どうやら俺は日常生活の疲れを消し去る為に意識を手放してしまっていたようだ‥‥‥うん、単純にうたた寝してしまっていたと思ってもらって構わない。


 ———何か懐かしい夢を見ていた気がする‥‥‥。


 大人になると、起きると夢って忘れがち。


「き、急に起きんじゃ‥‥‥ないわよ‥‥‥」


 ご主人様の手には綺麗な装飾の施された革製の輪っか。


「あ、それ家庭科の授業で作ったって言ってた‥‥‥」


 そう、首輪。


「‥‥‥」


「あ、勝手に俺に装備させようとしてましたね!」


「‥‥‥うるさい‥‥‥うじ虫」


 奴隷から犬にジョブチェンジ出来るご主人様お手製のアイテム。


「だから、そんなの付けなくても手をつなげば全て解決ですって」


「‥‥‥手は‥‥‥つなぐ」


「ほら、解決です」


 犬の散歩スタイルで外を出歩くのは俺のメンタルがもちません。


「いない時‥‥‥」


「はい?」


「‥‥‥一緒にいない時に」


「いない時に?」


「虫()け‥‥‥」


 首に付けるだけで、あら不思議、血を吸う憎っくきアイツも近づけない、なんて素敵な首輪!

 て‥‥‥んなアホな。

 わかってます、ほんとの虫じゃなくて、この場合の悪い虫、主に女性()けって事なんじゃないかな?


「ご主人様、普通はそういうのって首輪じゃなくて、指輪とかなんじゃないですかね?」


「‥‥‥あっ!」


 目を見開くご主人様。

 

 ———あっ! じゃないよ‥‥‥。


 やっぱりご主人様は少し変わってる。

 鎖の付いた首輪じゃ、呪物になっちゃいそうです。


「でも、コレ貰ってても良いですか?」


 せっかくご主人様が作ってくれた首輪モノだ。大事に保管はしておこう。


「‥‥‥いいの?」


「はい、大事にします」


 そう言うと俺はご主人様お手製の呪物をポケットにしまった。

 モノが首輪モノだけにどうかとは思うが、やはりご主人様が俺の為に作ってくれたってのは嬉しい。


「‥‥‥あ、ありがと」


「お礼を言うのは俺の方です。さ、行きましょう」


 そうこうしてると馬車はいつもの学園に。

 俺は慣れた手つきでご主人様の前に手を差し出した。


「学業頑張ってくださいね」


「うん」


 そう言うと、そそそと近寄って俺の手をちょこんと掴む赤い顔のご主人様は今日も今日とて、とても可愛い。




 朝の太陽は寝起きの俺には少し眩しくて、それでもとても暖かくて、手をつなぎ歩く2人を優しく見守ってくれてるような気がした。


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