6.午後の八千代
家に帰ってきた八千代は、そのまま組長室のじいさまを尋ねた。
「じいさま、ただいま戻りました」
「おお帰ったか、八千代。学校はどうじゃったかの」
「はい、お友達ができました」
「そうか、そらよかったのぉ」
孝太郎はとても嬉しそうだった。戦後はずっと家族のいなかった孝太郎にとって、血はつながっていないものの、初めての家族となった孫娘は、かわいくてしょうがないのだ。
「もっと学校であったことを、いろいろ教えてくれんかの」
八千代は、孝太郎の求めに応じて、授業のこと、体育のこと、洋子のことを話した。ただし、一女レディースの件については、珠代から話さないように頼まれていたため、黙っていた。
八千代が勉強に関して自信を無くしていることを知ると、孝太郎は大いにあわてた。これはなんとかせねば。
「国語については、お前は中身は理解できているのだから、ひらがなへの慣れの問題じゃ。今の本をしっかり読めばすぐ慣れるじゃろう」
「でも、本って貴重なものですから、そんなには手に入らないんじゃないですか」
「いやいや、そんなことはないぞ。そうじゃ、わしの持っておる本を貸してやろう。
ほれ、こっちの本棚にたくさんあるじゃろう。全部読んでいいぞ」
「わー、すごい。ありがとうございます、じいさま」
八千代はこの後、大量の任侠物を読むことになるのである。
「それと英語じゃが、お前は今まで全然英語を勉強したことがないのか」
「はい、英語なんか一切学んでいません」
「勉強する気もないのか」
「はい、もちろんです。敵性語の勉強なんてとんでもないことです」
かなり英語に対して抵抗があるようだ。これはなんとかしないといけない。
「八千代や、英語が敵性語だなんて、もともとはお国ではなく、市民団体が言い出したことを知っておるか」
「えっ、そうなんですか?」
「そうじゃ、それでその市民団体は、当時の首相の東条英機にも英語教育の停止を申し入れたんじゃ」
「それで敵性語を学ぶことを禁止したんですね」
「そうじゃない。東条英機は取り合わなかったんじゃ。英語教育は大事じゃと言っての」
「どういうことでしょう」
「孫子も言っておるじゃろう。敵を知り己を知れば百戦危うからずとな。敵のことは知らねばならん」
八千代は孝太郎の顔を真剣に見ていた。
「例えば、進駐軍が作戦を立てているところにお前が出くわした場合、英語が分かるのと分からないのと、どっちがお国のために役立てるかの?」
「もちろん英語が分かれば、敵の行動が把握できます」
「そういうことじゃ。
東条英機は日本を破滅に導いた男じゃが、この点については正しい見識を持っておったようじゃ」
一方、八千代はこれまでの自分の思慮の浅さに赤面する思いだった。
「じいさま、私はなんて愚かだったのでしょう。
これからは大日本帝国のために、敵の言葉もしっかりと身につけるようにします」
「そうか、よしよし」
孝太郎は八千代の扱い方がだんだんと分かってきていた。
「あと、情報教育じゃが、これはわしもさっぱり分からん。まあ、おいおい考えてみるとしよう。
ところで八千代、お前昼めしは食ったのか」
「いえ、今日は食べていません。でも、お昼ごはんって毎日食べられるものじゃないですよね」
「いや、今は毎日食べておるぞ。
うーん、学校の食堂ででも食ってくるのかと思っとったが、短縮授業だったとはのぉ。
組の昼食も終わったし。
そうじゃ、お前そこのコンビニで昼飯を買ってこい」
「えっ、私が一人でですか?」
「これも社会勉強じゃ」
というわけで、八千代は組事務所のすぐ近くにあるコンビニに行くこととなった。
「これがコンビニよね。バス乗り場の近くにあったのと同じような感じだし・・」
コンビニの前で八千代は戸惑っていた。八千代の村には店はなく、買い物をするというのは、桔梗先生に教わった一般教育上の知識だけでしかなかった。
思い切って店内に入ろうとしたが、扉に取っ手らしきものが見当たらない。近づいて調べてみようとすると、突然扉が勝手に開いた。
少し驚いたが、バスの扉のように店の人が操作したのかなと納得した。
中に入ってみると、いろいろなものが並んでいたが、ほとんどがきっちりと包装されていて、いまいち中身が分からなかった。
棚にあった、ポテトチップの袋をまじまじと眺めてみた。
「プッチトテポって何かしら」
右から左に読む習慣はなかなか治るものではない。
「茶色くて丸いものの絵が描いてあるけど、手足がついていて目や口も描いてあるわ。きっとお人形が入っているのね。
それにしてもいろいろなお人形を売っているものね」
菓子類の多くは、パッケージにキャラクターが描いてあった。
他に店内を見て回ったが、中身の分からないものばかりだった。
『ボディーソープ?コンディショナー?いったい何なのかしら。横文字もたくさん書いてあるし・・。いずれにせよ、進駐軍の言葉の侵略は深刻ね。早く横文字も勉強して、敵の考えも理解できるようにならなきゃ』
たしか部屋には前の住人が使っていた英和辞典があった。帰ったらそれを使って、ShiseidoとかKaoとかDoveとかの意味を調べてみることにした。しっかりと覚えておこう。
その横にはペットフードのコーナーがあった。
『キャットフード?ドッグフード?何なのこれ。猫や犬の絵が描いてあるし、肉そぼろみたな絵も一緒に描いてあるし・・。
これは猫や犬の肉なのかしら。猫や犬は愛玩用の動物だって桔梗先生は言ってたけど、食用の家畜だったのかな。
そうよね、そもそも動物を愛玩用に飼うなんて、理解できないものね』
食糧事情の悪い一宇村には当然、猫も犬もいなかったのだ。
『そういえば、店で買い物をする時には、店員さんに欲しいものをいえばいいって先生が言ってたわね』
と、思い出し、店員を探した。
店員らしき人が台の向こうにいたので、声をかけてみた。
「すみません、お昼ご飯を売ってください」
「えっ?」
「お昼ご飯を買いに来たのですが」
「ああ、お弁当類でしたら、あちらの棚にあります」
店員が弁当類のコーナーを指さした。
『えっ、自分で探すってことなの?先生は、お店の人が商品を出してくれるって言ってたのに』
どうもここは不親切な店のようだ。
とにかく、店員が指さした方に行ってみた。
そこにはフタが透明な折箱に入ったお弁当が何種類か置いてあった。
どれもおいしそうで、思わずよだれをたらしそうになった八千代だが、弁当の上の棚におにぎりが並んでいるのに気付いた。村の近くでお遍路さんが食べていたやつだ。たしかに150円と書いてある。間違いない。
「これだわっ。」
そそくさと1つのおにぎりを握りしめて、店員のいる台に向かった。
八千代にとって、昼食としてはおにぎり1つでも最高に贅沢であり、2つ以上もなどということは考えもつかないことだった。
「これをお願いします」
と、店員に見せると、店員はなにやら機械を操作した後、八千代に尋ねた。
「袋は必要ですか?」
八千代には何のことかわからなかったが、別に袋を買いに来たわけではないので、不要であることを伝えた。
抱き合わせで余計なものを買わせる魂胆なのだろう。油断のならない店である。
「162円です」
店員は八千代にそう告げたが、八千代は納得いかなかった。
「えっ、150円って書いてるんですけど」
ここは不親切で油断のならない店である。
まるで桑原和子のように、八千代に理不尽なお金を請求しているのかもしれないので、八千代は警戒していた。
しかし、店員は眉一つ動かさずに答えた。
「消費税込みで162円です」
「消費税・・って何ですか?」
「税金です」
まだなんとなく腑に落ちなかったが、税金ならしょうがない。
税はお国のためのものであり、八千代はお国のためというなら逆らえないのだ。
とにかくお金を払い、おにぎりを胸に大事そうに抱えて、うきうきとしながら帰ってきた。
「ただいま、じいさま。
ちゃんとお昼ご飯を買うことができました」
「おお、お帰り、八千代。
なんじゃ、それだけでいいのか」
「はい、こんな素敵な昼食が食べられるなんて、夢のようです。
これもおじいさまのおかげです。本当にありがとうございます」
八千代にそう言われ、孝太郎は眼を細くしてニヤけていた。
「さあおあがり。
おーい、かなえさん、お茶をもってきてくれんか」
八千代は組長室のソファに座って、おにぎりをみつめていた。
「でも、これってどうやって開封するのかしら」
「裏に書いてあるじゃろ」
孝太郎にそう言われ、おにぎりの裏を見ると開封の仕方が書いてあった。
その通りにしてみると、きちんと梱包されていたおにぎりを、するっと開封することができた。
「すごいっ、これを考えた人って天才だわ」
叫ぶ八千代の鼻孔に海苔の香りが漂ってきた。
山中の村では海苔は貴重品だった。
海苔と白米、それに梅干しまで入ったおにぎりを、今八千代は食べることができるのだ。
結局、八千代はまた涙を流しながら、ちまちまとおにぎりを食べることになった。
そんな八千代の様子を見ながら、孝太郎はもっと八千代にしてやれることはないかと考えていた。
「おおそうじゃ。八千代や、お前スマホを持たんといかんのぉ」
「スマホってなんですか」
「わしもよく分からんが、若い子はみんな持っておるようじゃ。
携帯電話の一種なんじゃろう」
「携帯電話ってなんですか」
「そこから説明せにゃならんのか。
携帯電話は持ち運びできる電話のことじゃ」
八千代は、電話なら桔梗先生に教えてもらって知っていた。遠くの人と話ができる道具らしい。
確か電線を通して声を遠方に伝える、糸電話みたいな装置のはずだ。
それを持ち運べるようにしたものらしい。
「それじゃ、ずっと電線を引きずって持って行かないといけないのですか」
「いや、線はなくていいんじゃ。こんなんじゃよ」
孝太郎は自分のガラケーを見せながら、そう言った。
どうしてずっと電話を持ち歩く必要があるのか八千代にはよくわからなかったが、みんなが持っているなら持つ必要があるのだろう。
そういえば、クラスの友達もケータイとかスマホといった言葉を使っていたような気がする。
八千代は孝太郎が持っているガラケーを指さして言った。
「わかりました。とにかく、それを私が持っていたらいいんですね」
「いや、これはワシのじゃから、お前のを買ってくる必要がある。
こういうのは、ノブの野郎が詳しいから、お前ノブと一緒に店に行って、お前のを手に入れてくるんじゃ。
おーい、ノブよ、ちょっと来てもらえんか」
ノブと呼ばれた若者は組長室に飛んできた。
「はいっ組長。なんの御用でしょうか」
「お前、スマホとかに詳しかっただろ。
今から八千代を連れて店に行って、スマホを買ってやってくれんか。
ワシはよーわからんから、一番ええのを買うんやぞ」
孝太郎はノブに組のクレジットカードを渡しながらそう伝えた。
「へぇ、わかりやした」
おにぎりを食べ終えた八千代は、涙を拭いて、ノブに連れられ、事務所を出た。
「ノブさん、よろしくお願いします」
「あ・・姐さん、頭を下げないでください」
ノブは昨日の昼会で、八千代の信奉者の一人となっていた。
八千代と一緒に出かけられることがうれしくてたまらない様子で、手もみしながら横を歩いていた。
「ノブさん、すまほってなんですか。携帯電話となにが違うんですか」
「スマホは電話以外にいろんなことができるんでさぁ」
「いろんなことですか?」
「はい、ネットサーフィンしたり、メールしたり、チャットしたり」
「えっ、ねっとさーひん?めえる?ちゃっと?何ですかそれ?」
「いや、インターネットやSNSで・・」
「いんたーねぇと?えすえすえぬ?」
会話はどんどん泥沼化していった。
八千代の疑問は一つも解決しないうちに、二人はケータイショップの前に着いた。
「ここが、すまほのコンビニですか」
「えっ、ああ、ケータイショップですね」
また新しい用語が出てきた。これらの使い分けを理解するのは大変だ。
「あの、コンビニとは違うのですか?」
「はい、ここはショップでさぁ」
横文字の使い分けはどうやら非常に難しいようである。八千代が敵の秘密を暴くために言葉を理解できるようになるまでの道のりは果てしなく遠い。
とにかく、二人は店に入っていった。
店に入るなり、ノブは店員に言った。
「おい、この店で一番高いスマホをくれや」
「はい、それでしたら、アイフォン13のこのモデルになります」
「姐さん、これでよろしいですか」
「あの、私、あいほんっていうのではなく、すまほを買ってくるように言われたんですけど」
店員は笑いながら答えた。
「お客様、アイフォンはスマホの一種です」
「おい、てめぇ何を笑ってやがる」
「ひっ、・・申し訳ありません」
おびえる店員を八千代が庇った。
「ノブさん、こんなことで怒らないでください」
「へぇ」
しゅんとなるノブをよそに、八千代は店員に言った。
「ごめんなさいね。
じゃあ、これを下さい」
「あの、色やメモリはどうしますか。それとProやPro Maxの方がいいですか」
わけの分からない八千代は、ノブに救いを求めた。
「あんまり大きいのは使いにくいだろうから、無印でいいんじゃないっすか。
メモリは最大でいきやしょう」
「ありがとうございます。それじゃあそれで」
「色はどうなさいますか。13種類あるのですが、その条件ですと今の在庫は赤だけになります。
他の色ですと、取り寄せには一週間ぐらいかかります」
八千代にとって、色なんかどうでもよかったので、今あるものでいいと答えた。
その後、通信容量やなんだのと、八千代にはよくわからない取り決めがあったようだが、ノブがすべてやってくれた。
すべての手続きを終えるまで結構時間がかかった。どうやら買い物というのは大変なようである。
「ノブさん、今日はどうもありがとうございました」
「とんでもありやせん。姐さんのお役に立ててうれしいです」
「でも、これってどう使ったらいいのですか」
「そうですね、いろんなことができますので、帰ってからぼちぼち教えてさしあげやす」
ノブはこれからも八千代と二人で話す口実ができて喜んでいた。
しかし、ITに関しては原始人に等しい八千代にスマホを教えることの大変さを、ノブはまだ理解していなかった。
携帯ショップからの帰路、二人が街を歩いていると、前から八千代の知っている女が歩いてきた。一女レディースの珠代だ。
珠代は男と二人で歩いており、八千代に気づくとあわてて男の陰に隠れた。
男の方もこちらに気づき、声をかけてきた。
「あっ、ノブの兄さん、いつもお世話になってます」
「おう、シゲオか。なんだ、彼女とデートか」
「へぇ、まあそんなところっす。
そちら、ノブさんの女っすか」
「ばかやろー、失礼なこというんじゃねぇ。
こちらは組長のお孫さんの、八千代姐さんだ」
「わわっ、それは失礼しやした。どうもすんません」
八千代はにこにこしながら、シゲオに答えた。
「別にいいですよ。これからよろしくお願いしますね。」
そして珠代に向かって言った。
「奇遇ですね。それにしても、先程は大変失礼しました。」
八千代にとっては、ちょっとした誤解でもめたものの、仲間内であったことが分かって誤解が解けたという認識でしかなかった。
しかし、珠代にとっては、とんでもない失態をしでかしており、それがバレたら大変なことになるという恐怖におびえていた。
「なんだ、お前、姐さんの知り合いだったんか」
シゲオは珠代に向かって言ったが、珠代は無言でうなずくことしかできなかった。
「今日、学校で知り合いになったんです」
八千代は一応空気を読んで、もめごとがあったことを伏せて答えたものの、珠代にとっては、すれすれのところまでバラされて、脅迫されていると感じ、冷や汗をかいていた。
「ところで兄さん、これからカラオケ行くんすけど、兄さんたちもどうっすか?」
「おっ、いいねぇ。
姐さん、カラオケ行きやせんか?」
「えっ、カラオケってなんですか」
「みんなで歌を歌うんすよ」
歌は軍事教練の時に歌うものであり、歌を歌うってことは、訓練をしながらということになるが、まだまだ鍛え方が足りないことを自覚していた八千代はすぐに同意した。
「それなら、ぜひお願いします。
私、まだまだ鍛えないといけませんから」
「おっ姐さん、歌う気満々でやすね」
ということで、針のムシロ状態の珠代も含めて4人はカラオケルームに入っていった。
もちろん、八千代にとってカラオケは初めてである。長いソファーのある狭い部屋に入ると、正面には事務所の食堂にもあるテレビがあった。
『こんな狭い部屋で、どんな訓練をするのかしら』
と思ったが、みんなの様子をみることにした。
一番に八千代が歌うように勧められたが、とにかくやり方がよくわからないので、まずはシゲオに歌ってもらうことにした。
なんか平たい機械を操作すると、急に音楽が流れ始め、シゲオが大声で歌いだした。
八千代はその声の大きさに驚いたが、よく観察してみると、シゲオが持っている棒のようなものを使って、機械で声を大きくしているようだった。
そういえば、バスの運転手の声も、そうやって大きくしていたのか、と納得がいった。
それにしても、いつも軍事教練時に歌う声だけのものではなく、楽器を併せた歌はとてもすばらしく感じた。
なるほど、ここは歌そのものの訓練をして、心肺を鍛えるところらしい。
「姐さん、なんか歌ってください」
ノブは端末を八千代に渡し、曲の検索方法を教えてくれた。端末は案外簡単に使えた。
しかし、八千代は歌というと童謡か軍歌しか知らない。とにかく知っている軍歌を入力した。
「雪の進軍」である。日清戦争の際の冬の大陸を進軍する兵士の心情を歌った軍歌である。
伴奏に続いて、八千代が歌い始めた。
「雪~の進軍、氷を踏んで♪」
「おおっ、いいっすね」
と、ノブも一緒に歌いだした。ノブはアニメファンなので、『ガールズ&パンツァー』で使われたこの歌を、ガルパンの歌だと思っているのだ。
しかし、事情を知らないシゲオと珠代は、『軍歌か、さすがは右翼暴力団だ』とびびりながらも感心していた。
初めて歌うカラオケは、伴奏で自分の声が聞き取りづらく、かなり調子外れとなったが、呼吸法の訓練となれば、一生懸命やるしかない。
八千代は次々と軍歌を歌っていったが、八千代が歌う歌は他のメンバーは知らず、他のメンバーの歌は八千代の知らないものばかりだった。
多少奇妙な空気が流れながらも、八千代にとっては心肺鍛錬の充実した時間が流れていたが、時計を見たノブが切り出した。
「やべっ、もうすぐ7時か。
こんなに油を売っていると、おやっさんにどやされる。
今日はもう引き上げましょうや、姐さん」
「わかりました。
シゲオさんも珠代さんも、ありがとうございました」
一緒にカラオケをしたこともあって、珠代とも多少打ち解け、二人とは和やかに分かれた。
事務所に帰ると、ノブは待ちくたびれていた孝太郎に叱責されたが、カラオケに連れて行ってもらったと八千代が説明すると、よい経験をさせられことを孝太郎は喜び、逆にノブをほめていた。
ただし、今度カラオケに行くときは、自分も一緒に連れていくよう孝太郎は釘を刺していた。
とにかく今日は長い一日であった。
初めて学校に行き、買い物をし、カラオケという新しい訓練方法も覚えた。
村にいたときと異なり、ここ数日は毎日が変化の連続である。
明日は何があるのだろうと期待しながら、八千代は眠りについた。