一生懸命に生きればいい。
「ねえ、お姉さんお姉さん」
「ん、どうしたの?」
「ちょっと屈んでみてくれませんか?」
「屈む?え、こう?」
「そうですそうです。そのままですよ」
少年はお姉さんの首に左手を当て、
思いっきり右手を振り抜いた。
白一色の大地は鮮やかな赤色で彩られ、
お姉さんの首が落ちていく。
彼の右手には隠し持っていたナイフ。
少年は彼女の首からピアスや髪飾りを盗り、
残りはそこにあったゴミ箱に投げ入れた。
頭の無くなったお姉さんの身体を
お姫様抱っこの要領で抱え、
少年は薄暗い路地裏の奥へ消えていった。
少年は稼いだ金を握りしめ、吐くように言う。
「全然、足りない」
辺りには雪が降り乱れ、
彼の言葉は白い息へ変わっていった。
少年は薄暗い路地裏を歩く。
しばらくして、
彼は朽ちた一軒家のドアを開けた。
そこには、床に臥す彼の妹の姿があった。
「おかえり。お兄ちゃん」
「おう、ただいま。具合はどうだ?」
「あんまり良くはない、かも」
「そうか」
少年は溜息をつきそうになるのを我慢する。
妹は病気なのだ。
病院に行くための金が無く
未だに病名は分からないが、症状は重い。
かれこれ二年は床に臥したままだ。
妹はか細い声で聞いてくる。
「お兄ちゃん。今日、どうだった?」
少年は威勢よく答えてみせた。
「大漁だ。だから、
お前は安心して寝てて大丈夫だ。
お兄ちゃんに任せておけ」
「うん、ありがとう。
でも、無理しないで?私は大丈夫だから、ね」
「ああ。俺も大丈夫だ、大丈夫」
少年は水と、薬草で自作した薬を取りに立った。
すると酷い立ち眩みがして、
今までに落としてきた幾つもの首が
俺を恨めしそうに
睨みつけてきているのが見えた。
少年は乱暴に頭を振り、血の匂いに耐える。
「お兄ちゃん?」
そう呼ばれた瞬間に何もかもが鮮明になった。
まだ、俺は大丈夫だ、と自分に言い聞かせる。
俺がしっかりしなきゃ、
妹はどうなるっていうんだ。
8000文字くらいの小説です。