5話 期待の新人
あれから数日。
ロイヤルオークの一件は衛兵のおかげで手負いの状態だったことからギリギリ勝てたということにしている。
僕が倒したことがバレるのは目立ってしまうから。
それでも賞金30000ゴールドとBランクへの打診が行われているようだった。
そして今日からサイアス家の依頼が始まる。
僕は待ち合わせ場所の冒険者ギルドに入ると、いきなり
「あーーーーー!!」
と大声を上げる少女がいる。
前にすれ違った少女のようだ。
彼女は僕に駆け寄ると
「あんた、前にオークたおしてた人でしょ!!」
「え、えっと…」
いきなり声を掛けられ、驚いた。
「ぁ、ごめんなさい、私はフェリカ。昨日オーク相手に圧倒していて、私感動しました!」
見られていた!!どう口封じしようかと咄嗟に考えたがあるワードが引っかかる。
「フェリカ?ひょっとしてサイアス家の?」
「えぇ、ネシアって人と待ち合わせしているんだけど…」
「それ僕です。僕がネシアです」
「えぇぇぇぇぇーーー!!」
彼女の大声が再び協会内に響き渡る。
「じゃあ、あなたが私の?てっきり女の子だと思ったからびっくりしちゃった」
少し移動した先の食堂で話を続ける。
「そうです、これが依頼状です」
少女は驚きを隠せない様子で続ける。
「ゴホン、えっと改めてフェリカ・サイアスです。この度は依頼を受けてくださりありがとうございます」
「ネシアです。よろしくお願いします、フェリカ様」
「フェリカでいいわよ、様付けとか好きじゃないから。あと敬語もなしで。むず痒いのよ」
親子そろってフランクな人らしい、まぁ固いよりはましなのだが。
「分かった、それでオークの件なんだけど、」
僕はヒソヒソと言う。
「まさかあなたみたいな高ランクが護衛なんて思いもしなかったわよ」
うーん、そういうことじゃないんだが。
「えーっと、オークの件については他言無用でお願いしたいんだけど」
「??まぁいいけど、冒険者にはいろいろ事情があるものね!」
なぜかは分からんが納得してもらったので大丈夫だろうか。
「そうそう、ケネアの森にある薬草採りのクエストを受けてあるから」
用意周到だな。確かに駆け出し冒険者が1番に受けるクエストにはもってこいだろう。
「いいと思う。明日行くのかい?」
今日は準備があるだろうから出発は明日か明後日だろうか。
「何言ってるの?今からに決まってるでしょ!ほらポーションも持ったし」
本当に用意周到だな。僕は手持ちが心もとないが薬草採りなら問題ないだろう。
「分かった。それじゃあ出発しようか」
2人は手荷物をまとめてギルドから出る。
まだお昼過ぎの日差しの気持ちい時間だ。
僕たちは西口を出て人気の少ない道を歩く。
「それより、オークの件です。あんたかなりの手練れよね」
この話はさっきで終わりだと思ってたんだけど…
「あー、一体いつから見てたの?誰もいないと思ったんだけど」
「うーん、私が来た時には既に1対1で戦っていたわね」
やってしまった。
力を使うときは人目のないところでと思っていたんだけど。
まあこれから一緒に活動するんだし時間の問題かな。
「あれ何?自己教化魔法?」
はぐらかそうかとも思うが、隠す理由もないし正直に話す。
「神気っていうんだけど、」
「神気?聞いたことないわ」
「あまり知られてないからね」
神気。それは体内に存在する魔力のような力のことだ。しかし、誰にでも存在する魔力とは違い発現するかどうか運次第だ。さらに神気を扱うには数年単位での修行が必要だ。ただし神気を習得できれば魔法より優れた点も多い。
その1つが神気による、≪神気開放≫だ。
魔法による自己強化より燃費がいい。
「___つまりあんたはその神気を習得した珍しい冒険者って訳ね」
「ま、そういう訳だ」
「ねぇ、その神気ってやつ私にもー」
「おしゃべりばっかじゃなくて周りも見といてよ、そろそろ森に入るから」
「むぅ、はーい」
本当に冒険者になれてうれしいのだろう。
彼女の震える手とは裏腹に目は希望に満ち溢れていた。
本作ヒロインとの邂逅でした。ちょっと少なめですいません('◇')ゞ
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次回もお楽しみに!