4話 オークの出現
「き、緊急です!!」
入り口から鎧を着た兵士が駆け込んでくる。
「はぁ、はぁ、実は西門前にロイヤルオークが出現し衛兵が応戦してますが!かなり手強く、」
ふむ、肩の紋章から見るに王国の警備兵のようだ。見るからにボロボロで息を切らしている。
昼頃は出かけている冒険者がほとんどで建物内には僕しか冒険者がいない。
「僕しかいないみたいですし行きます!」
本当なら御免だが今の状況じゃ僕に言っているようなものだ。それに王国軍の警備所よりこっちのほうが近いからこちらに来たようだし。
「で、ですがロイヤルオーク相手に1人には危険です!」
ミアムさんが心配そうに見ている。
「大丈夫です。引き目に戦います。その間に騎士を集めておいてください!」
「分かりました、ですが無理をなさらぬよう、あと現地で3人の衛兵が戦っています。彼らと連携してください!」
「了解です、それでは!」
僕は協会を出ると西門に向かい走る。
西本に近付くにつれ騒ぎの声が大きくなる。西門付近にはかなりの人だかりと通行規制が行われていた。
「ここから先は危険です!皆様事態が落ち着くまでしばし待機をお願い致します!」
西門検問の職員が大声で叫ぶが周りはパニックの声でなかなか収まりそうもない。僕は人込みを抜けて職員の前まで行くと、
「冒険者ギルドから来ました、ネシアです!ここを通してください!」
「君一人かい!?」
驚いた様子を見せる。
「大丈夫です、騎士様が来るまでの時間稼ぎです!それより港町から街道を通る人たちが危険ですから通してください!」
「分かったが、無理はするなよ」
「えぇ心得ています、それでは!」
西門を出てすぐのところに目標がいた。
グワァァァ!!!
ロイヤルオークと3人の衛兵がいる。
すでに2人は瀕死でもう1人もかなり危ない様子だった。
ギリギリのところで庇いに入る。
グギャォォォォォ!!
オークの棍棒攻撃を剣で受ける。
バゴンッ!
「っく!」
重い。オークの体重を乗せた攻撃は剣から腕、全身に痺れが回る。オークの攻撃を流し衛兵のほうに駆け寄る。
「大丈夫ですか?このポーションで2人をお願いします!」
腰にひっかけたポーチから人差し指程度の瓶を投げ渡す。
「すまない、助かった。2人は任せてくれ、応援が来るはずだから無理はするなよ!」
そういうと衛兵は2人を助けに行く。
グオワァァァ!!
オークと1対1。
5メートルくらいの背丈はあるだろうか。
前身の筋肉は興隆しており、木の棍棒と盾を持っていた。
危険だ。Bランクが束になって倒すレベルだろうか。
オークは棍棒を振り下ろす。
見た目とは裏腹にかなり素早い攻撃だ。
僕は攻撃をかわし剣を抜くと同時に距離を詰める。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
膝を狙った攻撃はいともたやすくよけられる。
なるほど確かに危険だ。
俺は不意に笑みをこぼした。
ギルドのランク制限で弱い魔獣としか戦ってこなかったから、久々の手ごたえがうれしい。
周りに人らしき人物はいないだろうか。
「ここなら、使っても大丈夫かな。」
息を整えると全身に力を籠める。
「≪神気開放≫!!」
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私はフェリカ。
今日念願の冒険者登録ができた!!
お父様に駄々をこね続けた結果だ。
お目付け役の冒険者がつくらしいがそこは妥協した。
やっぱり1人じゃ不安なところもあるからね。
家に帰ろうとしたとき慌てた衛兵が走っていく。
西門で何かあったのかな。
「もしかして魔獣かな!」
だとしたら私が倒して登録1日で魔獣退治した期待の星!!なんていわれるのを想像する。
これは行くしかない!!そう思って西門に向かった。
人混みを潜り抜け検門官の隙をついて抜け出す。
西門を出てすぐの平原で1人の少年と巨大なオークが戦っていた。
私は近くの茂みに身を隠し顔をちょこんとだして覗く。
少年は同い年くらいかなと思う。
でも同い年には見えなかった。
洗練された剣筋に驚異的な運動神経は既に1人前の冒険者のようだった。
「すごい…」
思わず口に出てしまうほどだった。
倍以上の大きさのあるオークを相手に互角以上に渡り合っている。
私は剣にも魔法にも自信があった。
でも彼には敵いそうになかった。
私は自他ともに認めるほど才能があり騎士団からの招待も来ていたが断った。
つまんなそうだったから。
貴族の騎士はまず前線に立つことはない。
指揮官となるか秘書みたいな役割になるかだった。
机に向かうだけの人生は御免だ。
どうせなら派手にドラゴンでも倒したい。
気づけば徐々にオークに傷がつき動きも鈍っていた。
まさに蹂躙という言葉が似合う。
オークの薙ぎ払いををすれすれで避けカウンターを放ち、
大きく跳躍しオークを切りつける。
オークは盾で防ごうとするが、
盾は真っ二つに斬られてしまう
割れた一方を隠れ蓑にして彼の姿が消える。
オークが彼を探しに顔をキョロキョロさせるが、
目があっただろう頃には大きく跳躍した彼が剣を振りかざし首が飛んでいた。
オークは消滅し魔石が残る。
魔獣は魔力からなる特殊な生き物だ。
傷がついたり、死ぬと魔力が噴き出て、心臓部分に当たるコアだけが残る。
不謹慎かもしれないが初めて見て感動した。
私は家に帰るまで手が終始震えていた。
それはとても武者震いと言えるものではなかった。
恐怖という感情が時を重ねるごとに強くなる。
最初はオークが怖かったのだろうが恐怖の対象は次第にあの少年へと移っていった。
あの子は私が今までに見てきた歴戦の騎士たちと同じ雰囲気を感じた。
同年代らしき人でそんな風に思うのは彼が初めてでオークも含めて世界は広いんだと体感した1日だった。
これからたくさんの魔獣相手に一抹の不安を覚えるが、私は楽しみのほうが強くなっていった。
下界での初戦闘シーンでした。ネシアともう一人の子のやり取りが楽しみです!ちなみに第三者目線はこれからは書くつもりはありませんのであしからず。
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次回もお楽しみに!