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第4話 親戚の美少女

「それで、このお金はどう使えば良い」


 F銀行のATMからお金を100万フィル借りた。現金ではなくデータのみなので手には持っていない状態だ。

 3年契約で返済して行く予定にしている。

 フィルの通貨は日本円と然程変わらない基準だと察する。


「武器と防具と生活費、それとモビルスーツ。あと……その前に為替の変更が必要ね。この国じゃフィルじゃなくてビスだから」


 何故わざわざ外国のお金で借りたのか、少しだけ思考を巡らせば直ぐに気付く。それはもう単純に破格な金利が重要な要素だ。


「なるほどな。最も信頼性の高い金融業者が外国のフィルを扱っているという事か」

「そうよ。ビスク王国内じゃF銀行よりも優れた金融業者なんて無いから」

「確かに年1%の利子なんて破格だしな」


 金融業者からお金を借りるのは非常に手っ取り早い資金調達手段だ。現実世界じゃこんな方法に頼ってはいけないが。

 しかしこの使いやすさは詐欺の犠牲にも利用されやすい危険な存在でもある。


「そうよね。犯罪行為にも利用されやすいように思うけれども、何故だか詐欺に遭っている人が利用しようとするとNGを出されて借りれない状態になるのよ。不思議だわ」

「そいつは不思議だ」


 登録していない筈だのに俺の名前が瞬時に判明したのも怖いものがあるがしかし、犯罪行為を未然に防ぐならばその情報がばれるというのも、案外信頼性がとても高く安心出来るものだ。


「流石シャーリィちゃんですね。正に神」

「……うん? どうしてそこでシャーリィちゃんの名前が」


 女神改め厨二病のマナミが噂の姪っ子を褒め称える。その少女がF銀行と関係でも有るのか。

 だが神はこのマナミの筈。シャーリィの方が余程神らしい。


「だってシャーリィちゃんが作った銀行ですよ。F銀行って」

「………………あぁ、常識的に考えれば、それが腑に落ちる答えね。あの子ならやりかねない」


 つまり異世界から来たチートスキルの持ち主という奴だ。

 なろう小説でよくある奴、俺SUGEEEEな方法でお金を掻き集めちゃっているようだ。


「そうなると、シャーリィちゃんってシャンダルキア1の大金持ちじゃないの。だのに、暮らしている家はちょっと実入りが良いって程度の一般家庭なのよね。本当なら豪邸でも買って豪遊出来るのに……あれ? つまり嘘?」


 普通ならば信じ難い話だ。ちょっとエーテルが高いからって何もかもが万能という訳では無かろう。

 多少なりとも疑って掛かるべきだ。


「嘘じゃないですよ! 本当にシャーリィちゃんが作った銀行ですから! 気になるなら本人に通話してみれば良いではないですか」

「ならちょっと聞いてみるわ」


 思い立ったが吉日と早速モビルスーツで連絡を入れる。


「もしもしシャーリィちゃん」

{その声、ミウおばさんですか}


 コール三回程度で噂の美少女がモビルスーツのウインドウから姿を表す。

 声も鈴を転がした音色みたいに澄んでいてとても綺麗だ。

 従姉妹で綺羅びやかなハニーブロンドと純白の翼という共通点は有れど、翼の枚数は四枚と六枚で違う。四枚がハイセラフで六枚がアークセラフという。翼の枚数が多い程高位らしいが、実際の能力は二枚翼である通常のセラフの方が優れているのが皮肉だ。


「おばさんて言わないで頂戴って。二歳違いでしかないんだから」

{それもそうでした。今はボルガノートに居るんでしたかね}

「そうよー。あたしは学園なんて堅苦しい所には行きたく無かったし、自立してこっちで自由気侭に冒険させて貰っているわ」

{充実しているようで何よりですね}


 当初の要件から脱して世間話に花を咲かせている。無駄話が多いのは女同士だからなのか。


「リスクも高いしボーデットに比べて生活水準も落ちている所は有るんだけれどね」

{それは仕方がないでしょう。冒険者は危険な職業ですし、命を失っていなくて良かったです}

「38エーテルの天才であるあたしがそう簡単にくたばってたまるものですか」

{人間の基準では、ですね。モンスターにはそれ以上に濃度の高いのがゾロゾロ居ると聞きますし、驕っては駄目ですよ。足を掬われます}

「そういうシャーリィちゃんはモンスター基準よねぇ。魔力濃度100エーテルだし」

{モンスター基準とか人聞き悪いですね……嫌味ですか}


 あんな美少女にモンスターだとか末恐ろしい。

 しかし本当に美少女過ぎる。写真で視るよりも断然可愛い。この美貌は絶対に国を傾ける。


「ごめんごめん、ところでシャーリィちゃんってF銀行を立ち上げた人なの?」


 ようやく要件に入る。真相は如何に。


{あたしにそんな大きな企業を立ち上げる力なんてありませんよ。いったい何を言い出すのですか}

「だってHATAの社長とも令嬢とも親しいし」

{確かにレイちゃんとはお友達ですが、だからといってF銀行とも繋がっているとは限らないですっ! 変な言い掛かりは止めて下さい!}


 HATA社、確かモビルスーツというピコマシン集合体の魔導器を製造したりする大企業だ。そんな凄い所の社長や令嬢とコネクトを持っているならF銀行のオーナーというの頷けそうだ。

 確かにF銀行なるものを立ち上げていても不思議ではない。口では否定しているが真相は未だ定かではない。


「んー……何かね、実はF銀行を作ったのはシャーリィちゃんだって言う人が居るの」

{もしそうならあたしは今頃真面目な生活もせずに自堕落な毎日をおくってますよ。シャンダルキア1の大富豪ですよねF銀行のオーナーなんて}

「流石に無関係かぁ」


 大金持ちになれば自堕落な生活をおくるというが、一目見た限りでは大金を得ても堕落しなさそうな真面目っぽい印象を抱いた。


{………………ちなみに、そんな話を出したのって、誰ですか}

「うん? 今一千万の借金をしているね――」

{――なるほど佐藤愛美さん……}

「あれ知っているの?」


 これは、どういう事だ。何故直ぐに誰なのかが分かった。


{えっ!? あ……あー、知っている理由は、ほらっ、あれ!}

「ああっ! あれね! キヲクとソウキだっけ」

{そうそれ! だから覚えている事を忘れないですぐに思い出せるから、知っているの。うちの店にも来た事があって幾ら借金をしていたかも覚えていたから}


 辻褄は合っている。だがしかし、疑いの芽は摘まれていない。

 しかしキヲクとソウキなる魔法が非常に便利な魔法に思う。テストで100点を確実に取れそうだ。

 いや、そもそも映像を繋ぎ合う会話なのだからマナミは画面に映り込んでいた筈だ。分かった種はその程度の事でもある。


「なるほどなるほどそういう事だったのね。ごめんね疑っちゃって」

{いえ気にしないで下さい。また良かったらファビウスにも遊びに来て下さいね。待ってますから}

「うんうん、絶対行くよ」


 そろそろ長話を切り上げる頃合いだ。


{ではまた。用事が有るので通信切りますが良いですか}

「忙しい所ごめんね」

{そんなに気を使わなくても大丈夫ですから。また顔を見せてくれたらお父さんも喜びますし、もっと気軽に来て下さい}


 じゃあ会話を切り上げよう。


「お兄様! カイルお兄様は元気かしらっ」

{銀級に上がってもう本当に素敵で格好良い最高のお父さんよ! それに以前ね、また女性冒険者を救出したら惚れられちゃってね、結構凄い落ち方したみたいで振るのが大変だったみたいなの}


 あれ、切り上げるんじゃないのか。

 イケメンの話になり、声のトーンが上がり姦しさが増す。


「流石カイルお兄様だわ! 危ない所を救われるってなにそれもう恋に落ちるしかないじゃない。さらりと心を奪っちゃうんだから罪よ罪! 罪状を言い渡して罰にデート位はしてあげても良いんじゃない」

{頑なにお母さんだけ愛するからお父さんです。浮ついた心を一切持たないのもお父さんの魅力だからっ}

「そうそう、ただしイケメンに限るっていう言葉もあるけれど、カイルお兄様の場合は何もかもが様になるからその程度の言葉で済む枠じゃないわ」


 最高位のイケメンだというカイルさんの話で盛り上がる。

 シャーリィには用事が有ると言っていた気がするのに切り上げなくて良いのか。

 しかしシャーリィも実父に惚れている気がする。将来の夢はお父さんのお嫁さんとか言いそうだ。


{お風呂上がりが特にやばい}

「ちょっと映像で送って頂戴」

{良いわよ。あたしが幼かった頃と比べて本当に随分と逞しくなったわ。あの腕と胸板に抱かれたら……あっ、駄目っ…♥ あの感触と匂いは正に凶器ね}

「えぇ……あたしはセラフィエスに居た頃のカイルお兄様しかよく知らないから、良いなぁ」

{セラフィエスに居た頃よりもずっと凄いわよ。ファビウスが成功したから危険な冒険は引退しても良いって言ったのに、冒険を続けているのは心配にはなるんだけれどね}


 妹に娘まで虜にさせて罪作りな男だカイルとやらは。

 男の目からも非常に魅力的な外見をしていて思わず惚れてしまいそうではあった。女の目からだと更に魅力的なのだと察する。


「ねえシャーリィちゃん、最近おっぱい大きくなった?」

{卑猥な目で見ないで下さい! ……確かに、成長はして来ましたが。今はDカップですね}

「その話詳しく!」


 次は成長期な美少女に鉾先が向く。

 美少女の話題となって黙って居られない借金抱えた厨ニ病患者が横槍を入れる。

 ミウの二歳差ならば未だ11歳だというのに、かなり大人に近付いてもうDカップも有る。幼い筈だというのに成長が著しい。


{マナミさんじゃないですか。ボルガノート大陸でミウさんと一緒になったのですね}


 育ちの良いシャーリィはいきなりの横槍にも嫌な顔せずに対応する。


「良ければブラジャーを取って直接見せ――」

「――いい加減にしろッ!!」


 こいつは本当に破廉恥極まりない親父っぽい性格をしている厨ニ病患者だ。

 再びハリセンを取り出して全力でしばき倒す。マナミは「ぶべらっ」と下品に悲鳴を漏らし、勢い吹き飛んで良く錐揉み状に回転しながらターミナルホール中央の噴水に飛び込む。


{マナミさんが大変な事に}

「気にしないで大丈夫よいつもの事だから」

「その通りだ。あいつならこの程度は平気だろ」


 大丈夫な証拠に噴水台の中から顔を出してぎゃあぎゃあ「いきなりなんて事をするんですかーっ!」などと煩く騒いでいる。


{そうですか。えっと、あなたは……初めましてですね。あたしはシャーリィ、シャルリエッタ・ファビウス、10歳です}

「ジャン=グラス・ファビウスだ。年齢は秘密にしておく」


 一応まだ少年とは言える筈。そろそろおじさんかもしれない。そのどちらともいえない微妙な年齢不詳である。

 いったい幾つなのかは想像に任せる。

 このシャーリィも転生したらしいので本来の年齢は不詳であろう。10歳との事だがミウと二歳差ならば数カ月遅いという事か。実際は転生して前世の+10が本来の精神年齢となる。同じくシャーリィという名前以外に前世の名も有る筈だ。


{つまりその名前も本名ではないのですね。ん、ファビウス?}

「良く分かったな。同じ異世界人だから分かったのか。ファビウスはこいつ「だからこいつじゃない!」……ミウの家来にされて名乗る事になったんだ」


 こいつと言うと激しく非難して来る。確かに配慮が足りなかったので言い直す。


{あなたも異世界人でしたか。いえ、そこまで見抜いていた訳ではありませんよ。ミウさん、見ず知らずの人に対して酷いのではないですか}


 その通り、いきなり家来だなんてびっくりした。


「いやだから家来は冗談だって言ったし!」

{だとしてももっとやりようはあった筈では{シャーリィ、まだなの? もう時間過ぎているわよ}……あー、ごめんなさいすぐ行きます! 急用がありますので切ります}


 映像の奥、部屋の扉から赤い四枚翼の女性が現れる。十代っぽい可愛らしさと大人びた雰囲気の入り混じった美少女だから、恐らく姉か。


「ありがとうねシャーリィちゃん」

{では失礼します}


 深々とお辞儀をして通信を切る。とても礼儀正しい女の子であった。そして何より超絶美少女であった。写真で視るよりも圧倒的に魅力的過ぎる。

 あの少女を我が物にする為に手段を問わず力尽くで奪い取る者が絶対に現れる。あれは、危ういまでに魅力的過ぎだ。男女問わず一目惚れする人が続出する。


「……あれは、可愛過ぎるな。あんな美少女が存在していたとは」

「そうでしょう! 本当に物凄く可愛いんだからっ」

「あの子を巡って戦争が起きてもおかしくないな」

「そうね。現に貴族階級の人が煩いらしいから」


 魅力的過ぎるのもどうかしている。あそこまで行くと男にちやほやで済まなく、本当に国を傾ける。さいわいと100エーテルの持ち主で自分でどうにか出来ているらしいのが救いだ。


「F銀行というのはどうやら正解っぽいな」

「シャーリィちゃんは否定していたけれど」

「いや、あれは事実だけれど隠したいっていう反応だ」


 F銀行の話題になった時に若干の焦りを見せていた。真っ向から否定しているのも怪しい。全くの無関係ならばむしろ冗談を混ぜたりそんな立場を羨んだりする事もある。


「確かに……言われてみるとそんな気がするわ。本当は億万長者だなんて、犯罪のターゲットにしてくださいっていうものだし」

「秘密にしたかったのもそういう事だ」


 そこに大金が在るというのならば、対象がか弱そうな女の子だというのならば、魔が差す輩が現れるのも必然だ。

 不要な犯罪を減らす為にも隠し通すのは必要不可欠である。


「だから言いましたよ。本当にF銀行はシャーリィちゃんが作った企業だって」

「それは理解したが、知らなくても良い情報だったな。本人は隠したかった事実のようだし」

「マナミは配慮が足りないわ」

「うぐっ……確かに、失言でした」


 この情報は墓場まで持って行くべきだ。無用ないざこざを招くのは勘弁だから。


――――――


 お母さんが呼びに来た事で通話は終了だ。モビルスーツのウインドウを閉じて用事の準備をする。


「何故、あたしがオーナーだって分かったのかしら。誰にもばれないように徹底していたつもりなのに」


 お父さんの妹、ミューゼリアさんとの会話中に寝耳に水な話題が出て来た。

 F銀行、それはあたしが作り上げた銀行、通貨のシステムだ。F銀行のオーナーはつまりフィルという通貨そのものがあたしの手中に在るといっても過言ではない。

 これもHATA社のフーリーシステムが出来上がったからこそ叶った偉業だ。


「シャーリィ、お客さんが待っているわ。お願いだから早く」

「分かったわお母さん。急いで行くからっ」


 今回の用事は、新薬サンプルの受け渡しだ。

 毒物を調味料にする魔法もあたしが作り上げた故に、新たな味の可能性を切り開いた。日本にあった河豚の卵巣の毒を無毒化する技法を参考にさせて貰った。

 これは調味料だけでなく新薬の開発にも利用が可能な魔法が構築された故に、注目を浴びてまた忙しさが増してしまった。

 魔力濃度100エーテルも有るとありとあらゆる奇跡的な現象を自由自在にこなせるから様々な発見と閃きを容易に形に出来てしまえる。

 今回もまた、新たな可能性を生み出してしまった。

 新薬サンプルを硝子瓶に封じた物を持ち、喫茶店の客室へと向かう。


 喫茶店ファビウスのVIP席には既に、依頼主である白衣に身を包む薬剤師が待っていた。あたしが来ると咄嗟に立ち上がってお辞儀をする。

 お辞儀を返しながら「おまたせしてすみません」と謝るが「素晴らしいお店で待つのも快適でしたよ」と返された。

 対面席へと向かうのだが、薬剤師はあたしを上座へと案内し、自分は下座へと腰掛ける。あたしが年下だというのに多大な敬意を抱かれている。


「シャルリエッタ様、今回の新薬は……」

「こちらです。薄めたとはいえ、100kgの人でも致死量が10g程だから気を付けて」

「ありがとうございます! これが、モウコフグから作った薬なのですね」

「神経を麻痺させて鎮痛の効果が見込めるわ。効果は約半日続きます」


 硝子瓶に詰め込んだモウコフグの毒素を薄めた物を薬剤師に渡す。

 毒素をここまで弱めるのに本来であれば約10年の熟成が必要であったが、あたしの魔法冥炎プルトを使って一瞬で済ませた。

 瓶を受け取ると丁重に布巾に包み、収納魔術ハコの効果のある携帯魔導器のモビルスーツへと仕舞い込む。

 これで、今回の用事は終了した。


「流石は魔法の天才ですね。それに純白の六枚翼、聖女クリスティアの産まれ変わりというのも頷ける」

「聖女とかやめてくれますか。あたしは一般人で居たいんです」


 この薬剤師は医療の本場である国、クリスティアのかなり偉い人だ。医学部のトップにあたる。そんなセラフがあたしの作る薬を求めて来ている。

 そもそもうちは普通の喫茶店の筈なのだが、何故、あたしが薬剤師に新薬サンプルを渡しているのか。

 この喫茶店には他にも貴族階級、王族、国賓、大企業の上位階級などなど、お貴い方々が大勢集まる。三階がVIPの個室となり二階が様々なイベントを執り行う大部屋で、一階がキッチンと庶民向けの席となっている。三階に行くには特別な入り口で行く必要がある。

 これも機冥全さんと強力なコネクトを持ち、お母さんの作るお菓子を気に入ったからだがしかし、こんな御大層な大型レストランにまで大きな店へ仕上げたのはやり過ぎだ。大評判となって売り上げも凄くて忙しい店なのだが、ガイノイド達が居るお陰で目まぐるしさとは無縁である。


「これは申し訳無い。でも、シャルリエッタ様の薬のおかげで救われる人が居る。シャルリエッタ嬢の奇跡の魔法のおかげで数多の命が救われた。もうこの偉業を覆すなんて無理ですよ」

「だとしても、あたしにもあたしの生活が有るんです……」


 喫茶店ファビウスのVIPルームで薬剤師さんに新薬を渡すだけであった筈だというのに、またクリスティアに来て欲しいようだ。

 あの国は、シスカと出会った国は病に苦しむ人が望みを託してシャンダルキア中からやって来る医療の最先端が揃った国だ。

 幼い頃に立ち寄った時、軽々しく清浄魔法クリアを使ったら脅威的な感染症を忽ちに打ち払い、奇跡を起こした。それ以来あたしは聖女クリスティアの産まれ変わりだと崇められるようになり、暫くの間滞在して数多の怪我と病気を治療した。


「クリスティアには今も、シャルリエッタ様の力が必要なのです」


 深く頭を下げて「どうか病に苦しむ人々を助けて下さい」と頼み込む。

 魔力濃度100エーテルという才能は、清浄魔法クリアを軽々しく使いこなすだけの力を秘めている。あたしは普段クリアは周囲の汚れを取り除く目的で使っていたのだが、本来の使い方は体内の病原体となるものを取り除く奇跡の魔法であった。病に苦しむ人にクリアを使えば、一瞬で病気を治療してしまえる。

 魔法は魔術とは違う。魔法は人の力で奇跡を起こし、魔術は理論で奇跡を構築する。

 故に未知なる奇跡で病気を治療してしまえるあたしは、忽ちにクリスティアの聖女と崇められた。


「あたしは……神ではありません。全知全能でもありません。あたしにだって、治せない怪我や病気があるのです。もうクリスティアには行きません。もう……聖女クリスティアにはなりません」


 あたしの力では、シスカを救えなかった。

 あたしの魔法も万能ではなかった。

 魔法では無い物を有る物には出来なかったから。

 もっと幅広い方法で人々の命を守る方法を構築する道を、あたしは選んだ。

 そっと席を立ち上がり、VIPルームの出入り口に手を伸ばす。


「新薬開発には協力しますが、それだけです。それ以上は望まないで下さい」


 あたしは、一人しか居ない。あたし一人だけの力でできる事には限界がある。

 だからもっとやり方を変える必要があったのだ。

 頭を下げ続ける薬剤師には酷な言い方になってしまったが、致し方のない事だ。

 静かに扉を潜り、カチャりと扉の閉まる音がやけに大きく響いて聞こえた。


――――――


「そもそも思ったんだが、このターミナルならフィルのまま使えるんじゃないのか?」

「品揃えが悪いのよ。確かに港内の一部だけならフィルを扱えるんだけれどね」

「駄目かー……」


 世の中そう上手く行かないものだ。繋がっていた場所がシャーリィ嬢の支配するテウスト大陸とやらではなかったのが不幸であった。


「まぁビスク王国もそろそろF銀行の傘下に入りそうではあるけれどね」

「正確にはビスク王国を含めた複数の国ですね」

「シャーリィはまじで世界征服するつもりか」

「それもそう遠くありませんね」


 あの女の子は本物のチート能力を持っているようだ。このシャンダルキア全土を集中に収めそうな勢いで支配力を広げているらしい。

 シャーリィがF銀行のオーナーだと見抜いたマナミが言うのだからこれも可能性が高そうだ。厨二病だが見る目は有りそうである。借金1000万フィル抱えているどうしようもない奴だが。


 ビスク銀行でフィルからビスに為替の変更を行ったら107万ビスになった。今はビス安フィル高だから借りてでもビスに変えた方がお得になるらしい。

 ミウは「こういうの難しいからあたしには分からないわ」というが、俺も分からん。大損しなければどうでも良い。

 今回必要な出費は多くて50万ビス程度らしく、現金を50万用意して財布に収め、残りはモビルスーツのウォレット機能に収める。


「……お財布、実体のまま持ち歩くの?」

「実体? 50万は現金にしろって言ったよな」

「いえそうじゃないの。収納魔法ハコに……って、まだ魔法は使えないんだったわね」

「確かにな」


 今現在の俺の魔力量はほんの僅かのみだから、空を5分も飛べない程度しか無いらしい。

 そんな状況では魔法を使おうにもままならないので習得が後回しの状態だ。


「ジャンのお金だからあたしが持つ訳にも行かないし、ジャンはまだ魔法を行使出来ない……ん、致し方無いか」


 思考を巡らして何を思い付いたのか、豊満な胸の谷間に手を伸ばしてまさぐる。

 マナミが「おおっ」と歓喜の声を漏らしながら覗き見をするのでミウが顰めっ面になってしまう。

 胸の谷間から取り出したのは、香水の瓶っぽい物。60cc程度が収まる小さな硝子瓶にケミカルライトのようにほんのり蜂蜜色の光りを漏らす液体が入っている。


「エーテルウォーター、いえ、マナポーションですか」

「そうね。本当ならダンジョンの空気を吸っているだけで魔力量は回復するからあまり使いたくないんだけれど」


 それはと聞くと「マナポーション。即効性の有る魔力回復薬よ」と説明してくれた。

 ポーションとか本格的にファンタジーなアイテムが出て来たものだ。まぁポーションという言葉の意味は一回分だが。

 ちょっとお高くて冒険時の緊急用で使う為に持っている物だから出来ればあまり使いたくないんだそうだ。


「なるほどな……だったら俺が払おうか」

「そんなっ、そこまであたしはケチじゃないから!」


 早速お金の使い道が出来て、いよいよ魔法が使えるならば惜しくないのだがミウは遠慮をする。

 最初会った時のジュース代のお返し位させてくれても良かろうに。


「それならマナポーションを使わないでエレクシオンすれば良いじゃないですか」

「えっ……エレクシオンッ!?」


 エレクシオンとは何なのか、ミウの顔が途端に紅く染まる。


「エレクシオンすれば簡単じゃないですか。まぁ私はきもい男とだなんてごめん葬りますがね」

「た、確かに、エレクシオンなら……だけどあれって」

「魔力を譲渡するだけの魔法ですよ」

「そうだけど! でも……」


 顔を紅くしたままにしてエレクシオンを使う事を躊躇っている。

 魔力譲渡の効果が有るみたいだが、様子からして、それ以外に何かしらのリスクが伴うようだ。


「まぁ選ぶのはミウさんです。でもぉ、エレクシオンすれば節約になりますよ。個人的にはこちらをお勧めしますね」

「だったらマナミがエレクシオンすれば良いじゃない!」

「えっ、良いんですか! やったあ!」


 マナミがエレクシオンを使えば良いと聞けば瞬く速度でミウに組み付く。

 がばりと、正面からぎゅっと抱き締めた。


「エレクシオン! あふぁああああん♥」

「あたしにじゃないから! て、んっ、ふぁ♥ んんっ♥」


 ターミナルのベンチで、若い乙女達の艶めかしい嬌声が上がる。

 通行人が「こんな所でレズって……」と遠巻きに白い目を向ける。

 ミウの白い四枚翼が必死に暴れて羽根が散り、マナミの細く白い腕ががっちりミウを捕まえて首元に口で吸い付いてキスマークを作る。

 いったい何が起きているのか、俺の思考が追い付かない。


「乙女の魔力ぅ♥ 素敵ですぅうう♥ はぁああああああん♥」

「こんなのっ……♥ やっ、らめぇっ♥ らめなのにっ、感じちゃうぅうううッ♥」


 一段と甲高い嬌声を漏らし、ビクッビクッ体を震わす。

 綺麗であった筈のミウのハニーブロンドも汗ばんで乱れ、四枚翼の毛並みも乱れてしまって、妙な色気を醸し出している。服装も乱れ、メロンの上のストロベリーがはみ出てしまっている。

 数分間余韻に浸り、マナミはとても満足行ったのか肌をつやつやさせてミウはがっくり項垂れる。

 もう事後の雰囲気が半端無い。


「あー、えがったぁー」

「こんなのって……ひどい……だのに、何で魔力量は、充実しているの……」

「そりゃ私は神様ですから。大きな魔力を持つのは当たり前です」


 光を無くした目で項垂れてはいるものの、体内に巡る魔力の方は充実しているらしい。

 マナミは自称神為れど、大きな魔力を保有する。俺も使った事のあるエーテル測定器を取り出して「私の魔力濃度は53エーテルです」とどやる。シャーリィやジュリアを100エーテルにしたと言っていたのに本人はそれ以下なのか。


「53? 思ったより低いじゃないか」

「何ですかモブ男。偉大な女神様に文句が有るのですか」


 モブ男、まぁ良い。確かに俺は庶民ど真ん中20エーテルなのだから。


「だってシャーリィが100エーテルなんだろ。相手を100エーテルに出来て自分が100じゃないって何かおかしくないか」

「前も言ったじゃないですか。一度完成された生態系には手を加えないって。私自身も例外では無いのです」


 何か矛盾している気がする。自分も例外ではないというが、それでも100エーテルの子を創造する事に矛盾を感じる。


「……んん? つまり、どういう事だ?」

「男の脳味噌は白い液体を生成して放出する事しか機能していないから理解出来ないんですよ」


 結論、こいつはやっぱり神ではなく神と思い込んでいる厨二病患者だ。

 喋る言葉を鵜呑みにしてはいけない。

 毎度男を見下す発言で俺を苛立たせてくれる。こめかみに青筋が浮き立ってしまう。


「はぁぁぁ……マナミって、只者じゃないとは思っていたけれど人の領域を超えていたのね」


 呼吸が落ち着いたミウが話に加わる。

 モビルスーツのウインドウで鏡の機能を展開し、櫛で髪を櫛り、吸い付かれた首元に回復魔法を施して跡を消し、翼も丁寧に羽根を整えていく。

 マナミも乱した本人ではあるものの「手伝いますね」とブロウの魔法を使ったりしてミウの身嗜みを整える。


「再度言いますけれど、私はエルキュトゥリズユーラの女神ですから。人類以上の力を持っていて当然です」

「それでもシャーリィちゃん達には劣るのよね」

「そういう子達を創造するか否かの采配を持っている立場なんですよ。人類だって自分の能力以上の物を作り上げるでしょう。例えばあれとか」


 マナミが指差した硝子張りの窓の外には、大空を埋め尽くすように巨大な艦艇が浮かんでいる。

 一際凄い存在感を放っているファンタジックな乗り物だ。


「ビスク王国が持つ航空母艦の、何だっけあれ」

「シャルロッティア級のジョフレイアですね」


 推定1200mも有りそうな巨大っぷりだ。

 あんな巨大艦艇が存在し、しかも飛行するなんてこの世界の軍事力が計り知れない。

 地球の科学力じゃ絶対に敵わない強大さだ。


「人は既に神以上の力を持っています。本当、凄いですよね。あんな大きな艦艇を空に飛ばす技術を持っているのですから」


 いつものふざけっぷりは何処へ行ったのか、何故かマナミが本当の女神っぽく見えてしまう。

 多分疲れが出て来て幻覚を見てしまっている。ちょっと休もうか。


「それに比べて、人一人の魔力濃度を100エーテルにする程度は、神にとっては案外造作も無いんですが、むしろそれが精一杯って所なんですよ」

「だったら今からでもあたしの濃度を100にして欲しいんだけれど」

「駄目です。というか不可能に近いんですよね」


 不可能に近い、全くの不可能ではなく、何かしらの方法は有るという意味なのか。


「どういう事? やっぱり嘘なの?」

「やっぱりって……まだ信じてくれないんですかもう…」


 ミウの翼の羽根を丁寧に繕っていく。

 信じられないもなにも、具体的な証明が為されていないから信じるに値しない。


「……まぁ、宗教によっては全知全能の唯一神なんていうのもありますが、私の場合はちょっと人より優れている程度の力しか無いですから。そう期待されても困ってしまいます」


 神の造形にも色々在るようだ。

 神らしくないとはいえ、少しは神らしい所もたまに見受けられる。

 それでもやっぱり全く信用為らない男嫌いでレズビアンの変態だ。

 俺はマナミを佐藤愛美という個の変態だという認識でいる。


「まぁ、マナミはやっぱり神じゃないって事で良いわね」

「もう……はぁ、とりあえずそれで良いです。実際の所、人類さんが神に対して凄い盛り盛りに設定を持って考えているだけなんですけれどね」


 伝言ゲームで話しが大きくなるみたいに誇張され過ぎたとそんな感じらしい。

 実際の神はただの凄い人なのも夢が無いように思うが。


「と……うん、終わりました。ミウさん、可愛いですよ」

「一応感謝してあげない事もないわ。ありがとう」


 身嗜みが完了し、ウインドウの鏡で姿を確認する。

 ちょっとツンデレっぽい台詞が出て来たが、これはただの世辞だ。

 勘違いしたマナミが「ツンデレ来ました!」と糠喜びをしている。

 サラァ、とハニーブロンドを棚引かす様は傾国の美少女シャーリィに匹敵する魅力を放ち、不覚にも俺の心をときめかす。

 やはりミウも抜群に可愛い美少女と再確認させられる。


「話は戻るけれど……ジャン、えっと、その…」

「うん? どうしたミウ」


 話を戻すというが、何の話だったか。

 俺の顔を見ると、何故か目を反らす。

 また顔をほんのり紅く染め上げて言葉を喉奥に詰まらす。


「あのね、魔力をね、その……」

「魔力がどうした」

「えっとね……ん…」


 もじもじと腕を揉み、なかなか煮詰まらない。

 いったいどうしたのか。


「ん……うーん……えっと…」

「……何だよ…」


 埒が明かない。

 このままじゃ時間ばかりが過ぎていく。


「やっぱり駄目っ! これ飲んで!」

「これって、マナポーションって奴だったか」


 マナポーションを乱暴に突き出して来た。

 これは結構高価な物であった筈。


「んー……ミウさん案外へたれなんですねぇ」

「うっさいちくわ大明神」

「ちくわ大明神!? ミウさんひどいですっ」


 元ネタを知らないであろうに、侮蔑の意味を込めてちくわ大明神とマナミを罵る。

 とりあえず硝子瓶の蓋を開ける。恐らく飲む物なのであろうが、妙な光芒を放つ液体だからか、これを飲むというのはちょっと躊躇う。


「これを……飲めば良いのか?」

「そうよ。一気に飲みなさい」

「そ、そうか……」


 暫く蜂蜜色に光を放って揺らめく液体を見詰め、心の準備を整える。

 毒々しいとかそんな心配はいらないのであろうが、やはりケミカルライトみたいなこれは、体に悪そうで飲むのに覚悟が要る。


「どうしたのよ……飲まないの? 蓋を開けちゃったらもう戻せないのよそれ」

「うっ、そうなのか……」


 つまり、後には引けない。飲むしかない。

 少しづつ、瓶に口を近付ける。


「ああー、飲むのですか?」

「……何だよ」

「いえ、良いんですよ。害の有る物でもないですし」


 マナミが意味深な言葉を吐いて阻害する。

 再び瓶に口を近付けていく。


「ああー……」

「だから何だよ」

「いえ、気にしないで下さい。飲んじゃうんですね」


 再度硝子瓶に口を付けて呷ろうと瓶を傾ける。


「ああああ」

「なんだよさっきから! 世界一多い勇者の名前のつもりか!」

「いえいえ、滅相もありません。どうぞどうぞ気にせず頂いちゃって下さい」


 気にせずというが、途轍も無く鬱陶しいので気に障り過ぎだ。どうせまたちょっかいを掛けて来るに違いない。

 今度こそ飲み込む為に瓶を傾けていく。

 にやにやとにやけ面を向けるが、目を瞑りながらケミカルライトみたいな液体を口に含む。


「んっ!? んんんんッ!?」

「んぷぷ、プくすっ」


 熱い。液はほんのり冷たいというのに何故だか熱い。焼け付くみたいに口の中が焦がされていく。


「んんーーーーッ!!」

「ぷヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 堪らずにゲホゲホと噎せ返る。

 この熱い刺激はいったい何なのか。

 ひーひー大笑いするマナミが非常に鬱陶しい。


「ジャン大丈夫? 濃いエーテルに慣れていないのね。ププッ」

「けっほ……くっ、お前ら…」


 つまり、この刺激がエーテルの味だという事か。何となくアルコールに似ている気もする。

 ミウも俺を嘲笑い、俺の腹の奥がむかむかと苛立つ。

 しかし、咀嚼したエーテルが体内を駆け巡り始めて胸中が熱く、何かが心臓部で形成されて行く。


「なっ、何だこれ!? 何かが、俺の胸の奥で!?」

「大丈夫ですよー。無事に魔結晶がマテリアライズされている証拠ですから」

「マテリアライズ……? うぐっ」


 この状況は、かなりきつい。

 味もきついし、体内もきつい。二重苦で責め立てられる。

 ターミナル通路脇のソファで端無くも悶え苦しむ。


「マナポーションを飲むと急速に魔結晶を作り上げるからね。マテリアライズ器官を刺激して活性化させるのよ。エレクシオンの魔法を応用した感じかしら」


 魔結晶を作り上げる、つまり俺の体内で魔結晶が生成される苦しみなのか。


「簡易的なエレクシオンの魔術という事ですよ。でも劣化し過ぎでゲロまずだから私は嫌いです」

「そうね。余程の緊急時しか使いたくないし」

「しかも無駄に高いですもんね」


 胸を押さえて蹲る事2分間、次第に熱さが収まっていく。


「くっ、はあ……はあ……」

「ジャン、大丈夫?」

「あ、あぁ。もう収まって来た。本当、きついなこれ……」


 胸の奥が熱く締め付けられるような感じが続いてどうにかなってしまいそうであったが、どうにか収まってくれて良かった。


「そうね。でも、魔力量は随分回復した筈よ」

「そうなのか?」

「正常にマテリアライズした筈だから」


 マテリアライズというのが、魔力に自分の魔紋を刻んで魔結晶を作り上げる工程なのだそうだ。

 魔法とは、自分の魔紋が刻まれた魔力からしか行使出来ない。魔術ならどんな魔力からでも行使可能だが難易度も高く変換効率も悪い。

 魔法を使う方がずっと簡単且つ効率が良い為に、魔術は軽視されがちらしい。


「つまりこれで俺も魔法が使えるんだな」

「そうね。使える筈よ」


 ようやく俺も魔法が使える。童貞30歳という訳ではないが、魔法使いには成れたようだ。


「早速だけれど、収納魔法ハコを覚えて頂戴」

「収納魔法ハコ?」

「うん。つまりこういうの」


 自分の胸元を開いてピンク色のブラジャーをちらつかす。谷間に右手を入れるとマナミが「おほぉーーっ」なんて奇声を発するのでハリセンでしばき倒すと「あべし」とまた奇声を発する。

 推定Hカップの谷間から取り出したのはピンク色の革財布、長財布と小銭入れのセットだ。

 どうもミウは下着や財布からしてピンク色が好きなようだ。


「実体で持っているのは盗んで下さいって言っているようなものだからね。現金は収納魔法ハコに仕舞っておくものよ」

「なるほどそういう事だったのか」


 しかし何故わざわざそんな胸の谷間から取り出したのかって、魔結晶が近い場所が心臓部だから、そこに収納魔法ハコを意識しやすいようだ。


「初めてでいきなり大金で試すのは酷だから、先ずはこの懐中時計で試してみて」

「これってミウの懐中時計じゃ」


 また谷間から取り出したのは懐中時計だ。これにはモビルスーツの8mmスフィアが装着されていて色々と便利な機能を展開させられる代物だ。


「予備よ。結構壊れやすいから予備を用意しているの。モビルスーツもハコには入れられるけれども、入れたら通信が途絶えるからアクセサリーに付けて身に飾るのよね」


 今現在使っている物ではなく、予備であったか。

 モビルスーツはハコの中だと機能しない為に仕舞っておけず、アクセサリーに装着させて携帯する。


「なるほどな。収納魔法ハコか……どんな感じで使う」

「どんな感じね……ハコっていう物はどんな感じの物だと思う?」

「そりゃ、ダンボール箱みたいに……うん? こんな感じか?」


 脳裏にダンボール箱のような物を思い浮かべると、その中に物を仕舞い込むようにイメージをシミュレートすれば懐中時計時計が消えた。


「あら、飲み込みが早いわね。同様にさっきの懐中時計を取り出せるかしら」


 同じようにダンボール箱を思い浮かべ、そこから収納させてある懐中時計を右手で「こうか?」と掴み取る。

 傍目には物が消えて突然現れたように見える。


「上出来よ。やるじゃない。それじゃ、財布みたいな貴重品はそのハコの中に仕舞い込むと良いわ」

「凄いなこの魔法。幾らでも物が入るのか」

「無限って訳じゃないわよ。魔力濃度で収納可能量も決まるから」

「へえ……」


 魔法の才能の優劣が分かりやすく証明された。

 おおよそ魔力濃度分の重量をハコの中に仕舞い込める。その入れた分だけ消耗量も増えるのだが、下位の魔法ハコならばそこまで消耗はしないらしい。上位のソウコだと消耗量を考慮しなければいけなくなる。

 収納魔法の更に上の名前が頭おかしい。ナカダシって何だ。ハラマセルとか絶対におかしい。そういえば、神様がアレであったか。マナミ、こいつだ。こいつの思考だとすると納得が行く。

 そんなマナミは今、モビルスーツを開いて何かのゲームをしている。可愛らしい女の子の顔アイコンがずらりと並んでいる美少女系のゲームだ。気持ち悪く「デュフフ、ええどすなぁ」と涎を流している。

 本当にここがマナミが管理する世界だとすると、頭のおかしいマナミだから色々狂っている事が腑に落ちる。まぁ、発展している科学技術や便利な魔法の数々は非常に魅力的だが。


 早速覚えた魔法の収納魔法ハコにて、実用第一歩として現金財布を収納する。財布は現実世界で俺が元々使っていた物で、とりあえず中身を入れ替えて使う事にする。今の所、中身は紙幣50万ビスが入っている。


「じゃあ早速お買い物ねっ」

「宜しく頼む」


 買い物の準備が完了したのでいよいよ買い物開始だ。

 ここのターミナルは大きなデパート状の建物で正式には名前を「ビスクシャンダルキア港」という。しかし皆はターミナルと呼んでいるようだ。

 伝説の魔法シャンダルキアを魔術に昇華させる事に成功し、惑星の正反対に位置するテウストとボルガノートを瞬間移動で繋ぐ事に成功した最初の港だ。実際には魔法シャンダルキアの亜種であり、重さの制限は特に無いが場所は限定され、互いに設定した場所でのみ行き来が可能となっている。本来のシャンダルキアは宇宙の彼方まで距離の制限無く、重量も制限無く自由に移動が可能な、正しく奇跡の魔法らしい。

【魔法は人の力で奇跡を起こし、魔術は理論で奇跡を構築する】(エルフィスタ王国 魔術研究者 シュメティエール・メッコ・ニソヌスール 105年4月~337年9月)

 つまりアナログが魔法でデジタルが魔術といった感じなのか。しかしまた下品な名前の偉人だ。

 眠くなりそうな魔術の話は早々に切り上げて、最初の買い物として個人用通信端末のモビルスーツを扱う店に移動する。


「いらっしゃいませ」


 獣耳が可愛らしい女性店員だ。種族は人狼、ワーウルフらしい。

 モビルスーツ店はテーブルと椅子、ショーケースが並んでいてスマホショップというより宝石店みたいな印象を受けた。

 二つ並ぶ赤い珠と白い珠の前でミウが商品を勧める。


「赤い彗星と白い英雄、どっちにする?」

「は? なにそのアム■とシャ●」

「また異世界の話?」


 また●゛ンダムの話かと思ったら違うようだ。モビルスーツの大まかなモデルであった。

 赤と白で性質が異なるようで、カスタマイズの効く赤と、専用的にあらゆるシステムが取り揃った白、このどちらかをまず選ぶようだ。

 どちらもサンプル端末で色々試せるようになっている。

 これもHATA社が作り上げ、シャーリィが大きく係わっているらしい。


「そ、そうか……まぁ、異世界人が作ったならそういう事になる訳…いや、冷静に考えておかしくね? 現代の技術じゃプレート型のスマホだし」

「今度は何の話よ」

「俺の世界の通信端末だよ。こんな感じの板なんだ」


 ポケットに入れていたスマートフォンを取り出し、ミウに見せる。

 異世界だからやはり圏外で使えない。通信機器は有れど、通信規格が違うのだから繋がらないのは当然だ。


「この板がジャンの居た異世界のモビルスーツみたいなものなのね。 随分とこてこてな機械だわ」

「こっちの科学技術が異常なんだよ。俺の居た世界じゃこれでも最先端で凄い技術だった筈だっていうのに」

「んー、HATA社の社長、機冥全さんも異世界人ですがジャン=グラスさんの居た場所とは違うっていう事なんですかね」

「……また異世界人が居るのか」

「やっぱりレイちゃん達もシャーリィちゃん達みたいに異世界から来た人なのねHATA社の社長さんて」


 どれだけ異世界人が居るんだか。マナミは誰も知らない筈の情報を色々と知っているらしい。自称女神の厨二病の筈だのに。

 しかしHATA社も俺SUGEEEE系ななろうチート産という奴であったようだ。

 俺の世界じゃナノマシンという物が一応現実には有れど役に立たないのでSFでしかない産物だが、こっちシャンダルキアではナノより更に小さなピコサイズの機械、ピコマシン為るものが実現している。

 つまりHATA社の社長である機冥全は俺の居た世界とはまた別世界から来た人物だ。更に進歩したSFみたいな世界、きっとそんな世界に違いない。


「赤モデルはいわゆるアンドロイド風で、白モデルはやっぱりリンゴ風か」

「その例えは良く分からないけれど、白は初心者向けで赤は一般的かしら」

「シェア率は?」

「9対1で赤が上よ」

「そっか……まぁ、そりゃそうだよな」


 リンゴが売れるのは日本だけのようなもので、世界シェアではアンドロイドが9割である。やはり自由度が高い方が扱いやすくカスタマイズできて良い。

 だとしてもリンゴもまぁ悪くはないし、最近はカスタマイズ性も増している。性能が良いと言う人も居るが、実際はそこまで秀でている訳でもない。


「だったら赤にしておこう」

「そうね。そうした方が良いわ」


 俺の持っているアンドロイドのスマートフォン端末と同じく、モビルスーツも赤を選ぶ事にした。


「ありがとうございました!」


 手続きを済まして会計2万5000ビスを支払い、俺専用モビルスーツを入手した。

 魔紋が身分証明になるというのは本当にありがたい。

 日本と違ってかなりスムーズに契約ができた。


「そんな安い奴で大丈夫?」

「良く分からんが、余計な機能が沢山有っても結局使わないものばかりだろうからな」


 良く分からないし、使うかどうかも分からない機能に余計なお金を注ぎ込みたくはない。

 最初はシンプルに最小限の機能だけ備わっていれば良い。


「それもそうよね」

「……えっ、そんなものですか!?」


 この反応は、つまり欲張りさんの反応だ。


「マナミ、お前……」

「ちょっとマナミちゃんの契約状況を見せてみなさい」

「あ、駄目ですそんなっ!? 勝手に見ないでっ」


 ミウがマナミの襟バッジに触れるとモビルスーツが起動する。魔紋認証が通わなければ使えない筈だがしかし、マナミの手を力尽くで掴み無理矢理に魔紋認証を通して操作をする。

 そして財布機能の支払状況のページを開き、その出費額と出費先に目を剥く。


「おい、借金女神……」

「この課金額は、引くわ……」

「なんで私のモビルスーツを勝手に見るんですかっ」


 こいつの行く末が本当に心配になった。


「マナミ、悪い事は言わん。そのモビルスーツは解約しろ」

「そうね。馬鹿みたいに注ぎ込んでいるし」

「そんな事したらソシャゲを続けられないじゃないですかっ」

「それが借金の一番の原因だろうが!」


 こっちにも悪質なソシャゲがあったようだ。

 課金コンテンツに納金しまくっていてやばい事になっている。どんなソシャゲかって、あの美少女ばかりな奴だ。


「もうF銀行にも愛想尽かされたんでしょう。良い加減に目を覚ましなさい」

「やっ、やだ!」

「やだじゃなくて……」

「絶対に止めないっ! 止めたくない! だってこれまで無欠にコレクションして来たんですよっ」

「諦めろ。ソシャゲはもう引退だ」

「きもい男が私に指図をするなぁ!!」


 簡単に諦められない事は理解しているが、だから1000万フィルも借金をしている状況で出費額が異常な事になっている。

 快適に資金調達が可能且つ射幸心を煽るソシャゲの魅力に抗えず、ずるずるとここまで借金を増やしてしまった。


「ミウ、説得してくれ」

「マナミちゃん……もう、諦めましょう」

「やだ……これだけは絶対に嫌ですっ」


 説得に失敗してやれやれと首を振る。「どうしましょう」と言われても俺にもどうすればこいつを救えるのか分からない。

 プレイしているソシャゲは日本や大陸部でよくあるHENTAI的な美少女作品、本当にマナミらしいゲームをプレイしている。


「うーん……」

「なぁ、シャーリィなら、何とかしてくれるんじゃないのか」

「……あー…そうね。あの子なら、何でも解決してくれるわ」


 全知全能の女神様シャーリィ様だ。

 なろうチートで全てを解決してくれる主人公様だから、絶対に何でもできる。

 え、俺は、モブだろ。20エーテルで一般人ど真ん中だし。

 早速ミウはてきぱきと自分のモビルスーツを操作してシャーリィに繋ぐ。

 ターミナルの休憩所、広々とした空間に丸いテーブルと椅子が在り一般客が雑談に花を咲かしている場所に移動し、早速と借りたお金で飲み物を購入できるかどうか自分でも試す。


「もしもしシャーリィちゃん」

{ミウさんまたどうしました?}

「またごめんなさいね。用事はもう済んだのかしら」

{それは簡単な用事でしたから問題有りません。さっきは突然に切り上げてすみませんでした}


 先程突然切り上げた事に謝罪を入れる。気にしなくても良い事に気遣いを入れるだなんて、教育の行き届いた礼儀正しいお嬢さんだ。

 凄く好感が持てる。

 休憩所脇にあった野球ボールサイズのモビルスーツに手を触れればラインナップが表示される。ジュースや茶やコーヒー等は一応分かるのだが、流石異世界と分からない物も結構有る。

 エーテルウォーターとかオレンジエーテル等、ちょっとお高い飲み物も有る。


「謝る事は無いわ。あたしが押し掛けたのが悪いのだし」

{いえいえ、話している最中に別の用事を入れるあたしの方が悪いですよ}

「そんな事を気にする程あたしは落ちぶれていないわ」

{そう言って頂けると助かります}


 日本でよく見掛ける謝罪の応酬、恐らくシャーリィの前世も日本育ちに思う。

 どの飲み物を買えば良いのか悩んだが、無難に先程も飲んだコーラと、ついでにミウのレモンティー、何で居るのか分からないがマナミにも一応ピーチティーを買っておく。


「それで、用事なんだけれどね、佐藤愛美さんを知っているわよね」

{えぇ、ちゃんとキヲクしていますから}

「借金を増やしている理由、知ってる?」

{大方の予測は付いています。えっちなソシャゲに夢中なんですよね}


 HENTAIなソシャゲなんてこのシャーリィちゃんには縁遠い。

 本人が純粋な美少女なのだから。

 商品を買って戻り、ミウの頬に紙パックを貼り付けると「ひゃうっ!?」と可愛い悲鳴が漏れた。膨れっ面で「悪戯しないでっ」と言われるが画面向こうのシャーリィがクスクスとこれまた可愛い笑顔で笑う。


「ソシャゲの納金を止めさせるアイデアは無いかしら」

{えぇ、知っています。確実な方法が在ります}


 確実な方法と来た。相談して良かった。

 いったいどんな方法を教えてくれるのか。

 マナミにもピーチティーを渡すと「あら気が効きますね」と上から目線な台詞を吐かれた。生意気な女だ。


「そうなの! 是非教えて頂戴」

{マナミさんを、見捨てて下さい}

「えっ……どういう、事?」


 確かにそれは確実な方法だが、些か乱暴なやり方だ。

 当の本人はソシャゲに夢中で会話を聞いていないのが幸いか。


{手を差し伸べないで下さい。下手に助けたら駄目です。甘えさせたら、依存しますから}

「……残酷な方法だわ」

{自覚と、身の程を知る必要がありますから。ちゃんと自分の実力に合わせて自分を管理をして、自分自身の欲求を制御させるんです}

「……うん、そうね…」


 乱暴なやり方ではあるのだけれども、確かに現実的に最も確実に効果が見込める方法だ。

 だけれども、残酷で心の痛むやり方だ。

 ミウも俺から貰ったレモンティーにストローを通して咥え、飲み込んで行く。


{下手に餌を与えては、それに期待をします。自制心が必要ならば、極限まで追い詰めて欲求を断ち切らすのです}


 下手に干渉すれば縋り付かれる。手を差し伸べれば、差し伸べた方にも責任が生まれてしまう。

 コーラのボトルキャップを回してプシュりと炭酸が溢れ出す。黒い液体を口に含めば、元の世界で知るコーラよりも甘く刺激的な味わいが喉を潤す。


{まぁこれは手段の一つに過ぎません}

「一つの……つまり違う方法も?」

{そう。また別の方向性も在りますよ}


 また違う知恵がある、この美少女は流石転生者だけあって色々な知識を持っている。

 伊達な前世を歩んで来ていないらしい。


{餌を極限まで与える方法です。美味しい思いを目一杯させて、それを続けます}

「え、餌を……」

{ずっと美味しい状態が続けばどうなるのか、答えは――

――飽きます}


 豊富な資源を用意して可能な限りゲームを続けさせ、飽きさせる。確かにそんな方法もあるか。


{刺激に慣れさせて楽しみを消し、こんなの続けなくていいやって思わせれば勝ちです}


 喜びを得るには、相応の苦労が居る。対局面が小さければ刺激も小さくなる。

 ガチャのシステムは限りが在るというリスクを負う中で当てるからこそ簡単に喜びと得られる。もしも限りが無い、無限にガチャを回せれば刺激も減り、レアを当てる喜びもつまらないものに変貌する。

 これも確かな効果が見込める方法ではある。


{この二つの方向性でソシャゲ依存の、課金依存は無くせます}

「えっと、課金に限定しているの?」

{ソシャゲはコミュニティツールの側面もありますからね。そのコミュニケーションが好きって人も多いですが、それだけなら平和的な使い方ですので無害でしょうか}


 ソシャゲは対人で会話を楽しむという側面も存在する。

 そんなコミュニケーションを行う中で色々なトラブルは発生するものの、金銭トラブルが発生しないならばそこまで大きなトラブルにはならない。


{それでもやっぱり、課金コンテンツの有るソシャゲを続けていたらつい納金したくなるので続けては駄目ですね}

「そうよね……お金が掛かり過ぎるソシャゲは駄目だわ」


 要件を一通り聞き終えた後は雑談を楽しみ、10分以上も長々会話し続ける。

 どうしてこうも会話が長いのか、女同士だと会話が長くなりやすい法則でも有りそうだ。

 長々と待っている間にコーラのペットボトルが空になり、リング状のくずかごに投げ入れる。マナミが「あ、ついでに捨てといて」と空の紙パックを渡されて苛立ちが増す。

 ようやく通信を切ったミウが改めて俺に向き直る。


「シャーリィちゃんから二つの方法を提示されたわ」


 一つは、見捨てる事。

 残酷な方法だが、破滅するのは自業自得だと諦めて貰う。自然とソシャゲも止めざるを得ない状況に持ち込めれる。

 一つは、飽きるまで続けさせる事。

 明確な方法は無いものの、沢山のお金を用意でもしてガチャを回させれば喜びを麻痺させて飽きさせる事が可能だ。問題となるのはそのお金をどう用意するのかって、F銀行から借りるとかすれば、シャーリィにまた相談すればそれも提示してくれるのであろうが、甘え過ぎるのも良くない。


「でもあたし達に取れる手段は、実際の所、一つだけね」

「まぁ、そりゃそうだ」


 答えは明白、見捨てる事。


「それじゃマナミ、お別れだ」

「……えっ? あ、はい。男の顔は見たくありませんから有り難い申し出ですね」

「あとは頑張ってねマナミちゃん。ちゃんと借金返すのよ」

「……あ、あれ? え、ミウちゃんどういう事…あ、待って、待って!」


 そもそもだ、何故こんな厨二病患者が俺達に付いて来ているのか。

 マナミ自身は俺がダンジョンに入って冒険をする事に胸騒ぎを感じていると言っていたが、具体的にどんな事が起こるかは分かっていない。

 自称える、えるく、なんとかの女神で、シャーリィやHATA社の社長の正体を知っていたのも不思議だがしかし、全くもって神様らしくないので信じるのは無理だ。

 マナミの事はもう無視して次の店へと向かう。


――――――


「……知ってはいたけれど、ボルガノートではガチャゲーが出回っているのね」


 再度ミウさんから通信が来たら、今度はマナミさんがソシャゲーに夢中になっている事を相談された。

 HATA社がインターネット技術を凄い勢いで大陸全土に広げ、同時に高性能なモビルスーツを開発。そして更にゲーム開発もこの僅か10年足らずの間に飛躍的な進歩を遂げた。


「やっぱり悪いコンテンツだわ。ガチャなんて」


 技術が広まるという事は、同時にお金も相応に掛かる。

 あたし達の居るテウスト大陸ではガチャシステムは淘汰されて一切無いがしかし、別の場所では例外だ。

 ボルガノート大陸には、ガチャシステムでランダムに景品を提供する事が許されている。


「でも、流石に別大陸には手は出せないから……あたしの手は、まだまだ短いわね…」


 未だ150cmしかないあたしの体格から伸ばす手は、白く細い華奢な少女の手だ。

 もっと大勢の人々が幸せに暮らす為には、まだまだやるべき事が沢山有る。

 されどこの小さく短い手で出来る事は、まだまだ少ない。

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