9◆落ちこぼれ少女と黒歴史
「(ん~! 絶品にゃあ!)」
「(でしょ? あそこのメンチカツは本当に美味しいからねー)
無事お目当てのお高いお肉を買ってお店を出ると、中央区の噴水広場の隅の方に丁度空いていたベンチに座ってメンチカツを食べる。
ちなみに買ったお肉はルーちゃんの【次元収納】の中。
今日は初夏に差し掛かっている今にしては涼しい日だけど、流石に何の対策もなしに優雅にメンチカツなんて食べてたらせっかくの高いお肉が悪くなっちゃうしね。
流石に食べる時は私の頭から降りたルーちゃんは、一口食べる毎に幸せそうに念話で感想を伝えて来ている。お口にあったみたいで何よりだよ。
「(にしても……にゃふふ。サラってばモテるのにゃあ~?)」
「(もールーちゃんまだ言うの? そもそも、私みたいなちんちくりんにはヴェインさんも興味ないと思うよ)」
お店出てからもルーちゃんはずっとさっきの事をからかって来るからこのやり取りももう数回目だ。こういう話が好きな辺りルーちゃんも女の子だよね。
大体、どう考えてもヴェインさんみたいな長身イケメンは私みたいな童顔でちんちくりんな上胸も小さいのなんかより出るとこ出ててスラっとしてて大人っぽい美人が絶対お似合いでしょ。
……自分で言ってて悲しくなってきた。
「(そうかにゃ~? サラって可愛いし髪綺麗だし、男の子は好きだと思うけどにゃあ)」
「(自分で言うのも悲しいけど、私を好きになる人はロリコンかなんかだと思うよ。お父さんは小さくて可愛いお母さんに性癖歪まされたって言ってたし……はぁ。これが血筋か……)」
「(なんかごめんにゃ……思ったより闇が深い話題だったにゃ……)」
バツが悪そうに詫びてくるルーちゃんの態度が余計に辛い。
私だって大人っぽくて長身で美人でスタイルいい女性に憧れるよ! 悪いか!? そう、まさにあんな感じの――
「(……あれ、あの人どこかで見た様な)」
「(……? どこかにゃ?)」
「(あそこ。ほら、噴水の近くに立ってる)」
「(あ、もしかしてさっき帽子屋さんのとこで見かけた魔女のお姉さんじゃないかにゃ?)」
私の視線の先にいた女性に合点がいった様に言うルーちゃんに私も合点がいく。
そうだ。私があのコスプレとしか思えないとんがり帽子を買うきっかけになった美人な魔女コスの人だ。
それにしてもさっきちょっと見た時も美人だと思ったけど、改めて見るととんでもない美人だ。
ちょっとウェーブかかった私とは違って完全にストレートなサラサラの金髪は腰まである黒のマントよりも長く伸びてて、真紅色の瞳と非常にマッチしてる。
出るとこ出てて引っ込む所は引っ込んでる理想の体型に大人っぽくて綺麗な顔立ち。ちょっと物憂げな表情がまた魅力的で、男女問わず周りの人の視線を集めていた。
あそこまで美人だとなんていうか、もう芸術だよね。
「よぉ! そこの美人なネーちゃん、一人なら俺達と遊ばねーか?」
少し見入っていると、柄の悪そうな三人組の男が女性に絡みに行った。
容貌的に多分冒険者だと思う。冒険者はああいう柄の悪い人が多いし、大体ああいう軽鎧を着て剣を携えてる人が多い。
「お生憎。人を待っている所ですのでごめんなさいですわ。大体、一人でも貴方達みたいなチャラチャラしてる男となんて御免ですわね。私の一番嫌いなタイプですし」
「んだとテメェ!」
怒鳴り声を上げるとリーダー格っぽい男が一歩前に踏み出す。周りも険悪な空気に触発されてどんどん散っていった。
ど、どうしよ。これ良くない空気だよね?
「(ルーちゃんどうしよ。まずいよねこれ?)」
「(私がゆっくりしてる時になんて輩にゃ。本当なら魔法を使うのはなるべく避けたいけど仕方ない。この魔王様が成敗してやるにゃ。という訳でサラ、協力するにゃ)」
「(協力って、え? ちょっと何この帽子?)」
いきなり目の前に【次元収納】から取り出されたさっき買ったとんがり帽子を出されたけど、理解が追い付かない。
え、なんで協力でこの帽子が出てくるの? というかこんなとこで【次元収納】使わないでよ!
「(今使ってる【隠密】は攻撃をしたり、そこに何かいるとか疑われると自動で解除されちゃうにゃ。だから、バレない為に私はどこかに隠れて魔法を使う必要があるにゃ)」
「(……ねえ。もしかしてだけど……私にその帽子被らせてその中に隠れる気?)」
「(正解にゃ!)」
嫌だー! そんな満面の笑顔で期待されても私被りたくないんだけど!
「(ほら早くするにゃ。サラが迷ってる間にもあのお姉さんは危険に晒されるにゃ)」
「(うぅ~! わかった! 被る! 被ります!!)」
ルーちゃんずるい! そんな事言われたら被るしかなくなるじゃん! あーもう! 女は度胸! さらば羞恥心!
「(おおー! やっぱりサラすっごい似合ってるにゃー! じゃあ、失礼するにゃー)」
「(嬉しくない……)」
こんなコスプレとしか思えない帽子が似合ってるって褒められても全く嬉しくない……もっと別の事を褒めて欲しいよ。
ルーちゃんが帽子の中に入ったのを確認して、私は一触即発の空気の爆心地へ向かう。うぅ……帰りたい。
「ああ? んだテメェは。ヘンテコな帽子被りやがって」
それは貴方達がナンパしてるそこのお姉さんもでしょ。なんで私だけ。
「(よーしサラ、ここは一発決めてやるといいにゃ! ここで一発決めとけば有利になるにゃ!)」
「(絶対楽しんでるよねルーちゃん!?)」
もーやだー! でも、ここで一発決めとけば意表を付いてお姉さん連れて逃げれるかもしれない。よし、やるよ私! 勢いで!
「わ、私は通りすがりの魔女っ娘職員ですっ! わ、悪い事は許しません!」
噛み噛みの台詞と共にしゅびっ! となんか決めポーズっぽいのを決める。頑張った。私頑張ったよルーちゃん!
「……馬鹿にしてんのかテメェあぁん?」
「ひぃっ! ごめんなさい!」
ルーちゃんの馬鹿ぁ! 全然ダメじゃん! 私が恥かいただけじゃん!! もうやだおうち帰るぅううううううう!!
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