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魔法が使えないのでギルド職員をクビになりそうです〜わたしの師匠は魔王様にゃ!〜  作者: 椎名咲良
1章 落ちこぼれ少女が魔王の弟子になる話
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48◆元落ちこぼれ少女とその後の話②





「えっと……これは一体?」


「動かないで下さいサラ様。今いいところですので」


「サラさん、私達にお任せ下さいまし」


「えぇ〜……?」


 ーー二週間後。


 ようやく身体も魔力も回復して今日からまた出勤! のはずだったけど朝、扉を開いたらそこに笑顔で立っていたロッテに拉致されて私達はロッテの家に来ていた。


 来るなり有無を言わさず部屋に通されて、リリーナさんとロッテに髪を整えられたり身嗜みを整えられてるんだけど何で私は何も聞かされずに拉致されてるのか全然説明してくれない。


 ちなみにルーちゃんは近くの机でまた高そうなお菓子食べてる。太るよ本当。


「ねえ、本当なんで私はこんな事になってるの? 今日からお仕事なんだし、行かないとなんだけど……」


「ご心配なく。支部長から許可は貰ってますから。それにどうせもうこれだけ休んだんですから無遅刻無欠勤はおしまいですし、別に問題なくないですか?」


「不真面目ー! ロッテがめちゃくちゃ不真面目な事言ってるんですけど、これでいいんですかリリーナさん!」


「割といつものことですので」


「そうなの!?」


 王国四大貴族のお嬢様なのに、メイドさんに慣れられるくらいいつも不真面目なの!? 衝撃の事実なんだけど! 私の中の真面目で頼れるロッテ像が崩れて行く……


「なんていうか……ロッテを見る目が少し変わりそうだよ……」


「あらあら、それは困っちゃいますわね。ですがまあ、流石に国王陛下にお会いする時はちゃんと真面目なリーゼロッテで行きますからご安心を」


 ……なんて?


「……ロッテ、もう一回言って。誰と会うって?」


「……? ですから国王陛下ですわよ?」


「……それはロッテだけだよね?」


「何を言ってますの。当然、サラさんもですわよ? だからこうして朝から連れて来て、今身嗜みを整えてるんじゃないですか」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 国王陛下!? 私これから国王陛下と会うの!? なんで!? 私ロッテみたいに凄い家柄とかないし、普通の一般家庭の一人娘なんだけど!?


「ロッテ! 私やっぱり体調がまだ戻ってないから帰って休むね!」


「ルーちゃんはそこで美味しそうにお菓子食べてますが」


「これ美味しいにゃあ!」


 ルーちゃぁん! 愛弟子のピンチなんだからお菓子食べてないで助けてよ!


 私が頭を抱えていると、扉がノックされ「どうぞ」とロッテが言うとめちゃ強老執事のセバスチャンさんが頭を下げて入ってきた。


「国王陛下がいらっしゃいました。今一等客間でお待ち頂いています」


「ありがとう。さあサラさん、ルーちゃん行きますわよ」


「うわぁぁぁぁぁぁん! まだ覚悟がー! 心の準備がー!」


 ロッテに引き摺られてルーちゃんとロッテ三人で部屋を出る。


 ロッテに続いて豪華な絨毯の上を歩くと、ロッテの足が扉の前で止まった。……この向こうに国王陛下がいるんだよね……なんでこんな事に……


「そんな緊張しなくていいですわ。ありのままのサラさんでお話して頂けたら大丈夫です」


「い、いざとなったら助けてよロッテ」


「ええ。では、行きますわよ」


 ロッテがそう言ってノックをしてから扉を開けると、中は先程までいた部屋より更に豪華な部屋で、テーブルの奥のソファーには白髪に白ひげの優しそうな好好爺が座っていた。……あれが国王陛下。初めて見た……


 国王陛下は私達の姿を見ると、立ち上がり微笑んでみせた。


「国王陛下。リーゼロッテ・ローゼンハーツ、お呼び出しに応じ馳せ参じましたわ」


「ロッテ、そんな他人行儀な呼び方はしなくていい。今は仕事外だし非公式の場なのだから」


「……わかりました。お爺様、お会い出来て嬉しいですわ」


 そう言ってロッテは笑顔を見せる。というかお爺様? 国王陛下が?


「えっと、ロッテ? お爺様って……「


「ああ、まだ話してませんでしたわね。王国四大貴族は王家の分家に当たりますので、私もヴェインも生まれた頃から交流があるんですの」


 そうだったんだ。やっぱり王国四大貴族って凄いんだなあ……


「さて、君はサラだったかな? 今日は急に呼び出してすまないね。私はヴァン・セイレス・レオンガルド。この国の国王陛下をやっている。君の事はロッテから聞いてるよ」


「サ、サラ・ヴィンセントです! こ、国王陛下におかれましてはーー」


「ああ、そんな堅苦しくしなくていい。私も堅苦しいのは苦手でね。普段通り話してくれて構わないよ」


「は、はい……」


 緊張して喋れない私に国王陛下が気を遣ってくれた。でも、そんな事言われても無理だよぉ……


「それで、君が例の喋る猫かな? 彼女と一緒に街を守る為に尽力していたと噂の」


「喋る猫とは失礼にゃ。私は第十五代魔王、ルシファー・セブンクルス=ヴィスペリアにゃ」


「なんと、魔王と。いやはや、長く生きてきたがまさか魔王に出会えるとはね。長生きも捨てたものではないな」


「……驚かないのかにゃ?」


 感心したように笑う国王陛下にルーちゃんは不思議そうに尋ねる。確かに、私達は全員例外なく驚いたり信じられなかったりしたのに、国王陛下はやけに順応が早いよね。


「もちろん驚いているよ。ただ、人は皆生きていると様々な不思議に遭遇するものだからね。私はそんな不思議に出会うのが好きなんだ。私は、目の前の不思議を否定する時間が惜しい。勿体無い。すぐ受け入れて楽しむ方が有意義だと思わないかな?」


「……なるほど。お前、凄くいい生き方をしてるにゃあ。私は好きにゃ、そういうの」


「ははは。お褒めに預かり光栄だよ」


 そう言って国王陛下は笑うと、「さて、では本題に入ろう」と話を切り出す。


「今回、君達を呼んだのは他でもない。この度の事件の解決に尽力し、街に現れたモンスターから住民を守り更に、街に現れた悪魔とSランクモンスターリヴァイアサンを見事討伐した事の褒美を与える為だ。此方に来たまえ」


「は、はい……」


 手招きされ、恐る恐る国王陛下に近づくと、国王陛下は金の懐中時計を私に差し出して来た。


「これは……?」


「これは、王宮が多大な功績を挙げた者に与える勲章の様なものだ。今後は王宮が君の後ろ盾になろう」


「あ、ありがとうございます」


「そして、もう一つ」


 そう言って国王陛下は机に置かれていた紙を手に取り私に差し出す。それを受け取って読んでみるとそこにはーー


「……王宮魔導研究所推薦状……?」


「そうだ。君の魔法は見た事もない素晴らしいものだとロッテから聞いている。だからもし、君が希望するなら私が紹介してあげよう。あそこは国最高の魔法研究機関だ。待遇は魔導ギルドとは比べ物にならないし、所属しているというだけで貴族位の身分が手に入る。どうかな?」


「凄いじゃないですかサラさん! 王宮魔導研究所と言ったら魔法に関わる人の憧れですわよ! サラさんがいなくなるのは寂しいですけど、サラさんの為に是非受けるべきですわ!」


 そう言って明るくロッテは勧めて来るけど、ロッテは嘘が下手だからバレバレだよ。そんな事言って、行って欲しくないって顔に書いてあるよ。


 確かに、この話を受けたら待遇は格段に良くなるし今後の為には絶対いいんだと思う。だけどーー


「……すいません。そのお話、辞退させて頂きたいです」


「サラさん!?」


「ほう。理由を聞いていいかな?」


 私の答えに驚くロッテと、冷静に尋ねて来る国王陛下。私の心は決まってる。さっきまであんな緊張してたのが嘘みたいに言葉が出て来た。


「私、今が楽しいんです。生まれ育った大好きなこの街で、ロッテと一緒に魔導ギルドでお仕事するのが。確かに凄くいいお話だと思います。受けた方が将来の為だっていうのも分かってます。けど、私は将来より今を大事にしたいです。ルーちゃんやロッテ、ヴェインさん皆と過ごす今が、私は大好きですから!」


「サラさん……」


 そんな今にも泣きそうな顔で見ないでよロッテ。本当、あんなしっかりしてるのに実は泣き虫だよね。


「はっはっは。なるほど、それなら仕方ない。この話はなかった事にしよう。もし、気が変わったらいつでも言うといい。では、私は失礼するよ。サラ、これからもロッテと仲良くしてやってくれ」


「はい。もちろん! ロッテは私の親友ですから!」


 国王陛下は私の返事に満足した様に頷くと、部屋を後にして行った。残ったのは私とロッテとルーちゃんだけ。


「……本当に良かったんですか? こんないい話ですのに」


「いいの。何、ロッテは私とお別れしたかったの? そっかー悲しいなー」


 わざとらしく言うと、ロッテは慌てて首を振ってみせる。


「そ、そんな訳ないです! サラさんとお別れなんて嫌に決まってます!」


「ならそれでいいでしょ。ほら、ロッテ用事は終わったんだから行くよ。お仕事しないと」


「……あ! お菓子! お菓子まだ食べきれてないにゃー! サラ、戻って! 戻ってにゃあ!」


「だーめ。休んでる時も食べてばっかだったんだから太るよ? ほら、歩く歩く」


「そ、そんな殺生にゃあ……」


 がくりと肩を落として落ち込むルーちゃんを無理矢理歩かせてロッテの家を出ると、強い日光に思わず目を細める。


 最近は気温も高くなってきて夏らしくなって来ていよいよ夏真っ盛りって感じだ。早く支部に入って涼みたい。


「暑いにゃあ……暑すぎて溶けルーちゃんにゃ……」


「なんか語呂が可愛いですわね、溶けルーちゃん」


「それは確かに。全く、仕方ないなあ。よっと」


 今にも暑さで死にそうなルーちゃんを定位置の私の頭の上に乗せてロッテと街を歩く。


 思えば、魔法が使えなくてギルド職員をクビになりかけてまだ数週間。本当に色々な事があった。落ちこぼれの私がこうなってるなんて数週間前の私が知ったらなんて思うかな。きっと、信じられないと思う。


 でもあの日、ルーちゃんと出会ったから今の私はここにいる。私の最高の師匠で最強の魔王様が私を変えてくれたんだ。あの出会いは私の一生の宝物。


 だから、恩返ししていこう。とりあえずは早く支部に入って涼む所から。


 ロッテと二人、支部の扉の前に立つと笑顔で頷いて扉を開ける。



「「おはようございます!」」


 落ちこぼれだった私のお話はこれでおしまい。ここからは新しい私のお話が始まる。




 ーーさあ、今日もお仕事を始めよう!

これにて一章完結です!如何だったでしょうか?

文字数にしてライトノベル一冊分です!長かった!

よければ是非一言でも感想教えて頂けると嬉しいです!



お読み頂きありがとうございます!


面白かったり、続きを読みたい!となったら画面下の☆から評価やブックマークして頂けると執筆のモチベーションになります!切に!切にお願いします!


それでは、次回の更新でまたお会いしましょう!

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