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魔法が使えないのでギルド職員をクビになりそうです〜わたしの師匠は魔王様にゃ!〜  作者: 椎名咲良
1章 落ちこぼれ少女が魔王の弟子になる話
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3◆落ちこぼれ少女と喋る猫





「はぁ〜……良かった……っと。お湯沸かして身体拭いてあげなきゃ。あ、洗濯物も間違いなく全滅だけど取り込まなきゃ……」


 ほっと一息ついてからもやる事はまだまだある。もうひと…いやもう三つくらいふんばりだよ私! ……つらい。


 部屋を見渡すと、先日両親が家に来た時に「見て見てサラ〜! じゃん! フルーツ詰め合わせ! 一度買ってみたかったのよこれ〜!」とテンション高めに母親がお土産に持ってきて残った籠だけがキッチンに放置されていたのを見つけた。


 それを持って来て籠にお気に入りの猫クッションを詰めて、その上に白猫を寝かせてあげて更に学生時代冬に足が寒くて使ってた小さなブランケットをかけてあげた。


 よし、とりあえず終わり。次はお湯!


 タンスからハンドタオルを取り出すと浴室に向かい、備え付けられたお湯を出す魔道具に魔力を込める。


 魔法を使う事は出来なくても魔法を込めるなら出来るから、こういう生活に便利な魔道具をただで使えるのはありがたい。


 使えない人は商店で魔力が込められた魔石が安価で売られてるからそれを使って魔道具を使うけど、例え安価でも塵も積もればなんとやらって言うしね。


 よし、次は死亡確定の洗濯物……


 魔道具が動き出し、お湯が出始めたのを見て洗濯物を取り込みに出たら予想通り、豪雨に晒され続けた洗濯物は全滅していた。


「水も滴るいい洗濯物……な訳あるかー!」


 ……謎テンションで自分で自分にツッコミを入れる私、きっと側から見ても相当やばいんじゃなかろうか。


 とりあえずびしょ濡れの洗濯物を箱型の洗濯用魔道具に入れると、魔力を込めて再度洗濯を開始してから浴室に戻る。


 すっかりお湯は溜まっており、湯船にはお湯が張り詰められていたので置いておいたハンドタオルをお湯に浸けて絞るとそれを持ってリビングへ。


 泥で汚れた手足や身体を起こさない様に拭く。細かいとこは明日お風呂入ればいいしね。


「お、終わったぁ……」


 全ての作業を終えた私はベッドに倒れ込む。疲れた! もうめっちゃ疲れた! なんなの今日は厄日かなんかなの!?


 流石に今からご飯作るのもなんかなあ……


「……明日にしよ」


 買ってきた魚は冷蔵用魔道具に入れて、お風呂入ってもう寝よう。


 今日は色々疲れた……でもーー


「……助けられて、良かった」


 今日は厄日。朝からクビ通告されるし、夕立には降られるし最悪の日だった。


 けど、床に置いた籠の中で安らかな寝息を立てる猫を見てこの子を救えたのは唯一今日良かった事かなと思った。







「ん……んん〜……」


 翌日。

 窓から差し込む朝日で目が覚めた私は、お気に入りのクリーム色のカーテンを開く。


 昨日の雨が嘘の様な晴天。青い空から差し込む太陽の光に目を細めながら体を伸ばしてベッド傍の時計を見ると朝六時。


「早っ! 私の惰眠どこいったの……」


 今日休日なのにね。休日の早起きには身長と胸囲の成長ボーナスくらいつけて欲しい。


 早寝早起きで成長しやすいとか嘘でしょ。それで成長しやすくなるなら私はなんなの本当。


「あ、そうだ猫!」


 思い出した様に床に置いた籠を見ると、籠の中ではお気に入りの猫クッションとブランケットに包まって昨日の白猫がすやすやと寝息を立てていた。


 薬の影響とかで特に容体が悪くなったりもしてないし一安心かな。


「よ、良かったぁ。これで一安心だね。でもこの子がどこかの家の子なら飼い主さん探さないとなあ……」


 ほっと胸を撫で下ろしてこれからの事を考える。


 この辺はペット禁止の家ばっかだしこの辺の子では無さそう。となると野良なのかな?


 【セイレス王国】南部に位置するここ、港町【ルフユマーレ】は国の貿易の港である為かなり広い。


 その中で飼い主を探すとなるとかなり骨が折れるのは間違いなさそうだけど、ギルド職員としての立場を使えばなんとかなるかもしれない。


 ……クビ寸前だけど。


 朝からまたこれを思い出してしまい溜め息を吐いていると、陽の光に当てられて眩しそうに白猫の目蓋が開いた。


 瞳はサファイアの様な綺麗な瑠璃色で、見てると吸い込まれそう。なんていうか美人さんって感じ。


 学生時代、友達のうちの猫自慢で「アンタんちの猫美人さんだよね〜」とか言ってて猫が美人……? とか思っててごめんなさい。確かにこれは美人さんだね……


「目が覚めた? 具合はどうかな?」


 ベッドから降りてしゃがみ込むとなるべく優しく声をかける。


 白猫は辺りをきょろきょろと見回してから私に視線を合わせてーー


「娘が私を助けてくれたのかにゃ?」


 ーー幼さの残るソプラノでそう言った。


 え? ちょ、は? 私まだ寝ぼけてるの? というかまだ夢の中なの? 試しにほっぺを抓ってみる。い、痛い……


 という事はこれ、現実……?


「ね、猫が喋ったぁぁぁぁぁぁ!?」


 拾った白猫は喋る白猫でした。どうなってるのこれ……

お読み頂きありがとうございます!


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それでは、次回の更新でまたお会いしましょう!

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