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短編集 冬花火

バス停に咲いた花

作者: 春風 月葉

「どうして雨に濡れた花はあんなにも美しいのだろうね…」

 ふと私は隣にいる誰かに話しかけてみた。

 隣からは澄んだ鈴の音のような美しい声で、

「それはきっと花の全てが視えるからではないでしょうか。」と返事があった。

 次のバスを待つまでの暇で仕方のない雨宿り、そこに会話が生まれたことで持て余す程の長い待ち時間に色を得て嬉しくなった私は隣の者に聞き返した。

「詳しく聞いても?」すると隣からはえぇと言う声が聞こえたので、私は耳から雨風の音を切り出す。

「濡れた花弁は薄く透けて、葉の上に留まった雨粒は葉の表面を大きく近く見せ、雨の重さに耐えかねた花は身体を倒し無防備に休むのです。いつもは凛として姿勢良く美しく咲いている花々、だからこそ雨の日に見せる少し疲れてくたびれた弱い姿に私達は惹かれるのではないでしょうか。」その声は艶やかで、そして少し弱々しくある声で、私はふふふと小さく笑って、

「それは…とても素敵な解釈だね。」と隣を向いて言った。

 その視線の先には、雨に濡れた葡萄色の髪の奥に弱々しい笑みをこちらに向ける美しい一輪の花がちょこんと座っていた。

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