急げ
こんばんは
ユグ……ユグ!
もう、羽からこぼれ落ちキラキラと宙に浮くユグの姿も、いつもいつも私なんかに笑顔で向かってくれる姿も無い。
(俺なんか!俺なんか、正しいドレイ首輪の解除も忘れてしまい、力で引きちぎったというお陰で首輪の呪いが解けて、あの姿に戻っただけだというのに!?
ただ、それだけというのに!俺にハグされただけであんなに嬉しそうな顔を向けて、あんなにも助ける為とは言え!俺が勝手気ままに抱いて飛ぶとか……なんにも拒否なんて事は無かった。
なのに!……最後の彼女の言葉ですら、勝手気ままに邪魔をするなんて!)
スゴウは地に膝を付け、強く目を閉じ心の中で、今まであったスーゲーマン常識を全否定している。
スーゲーマンこそ俺の正義!スーゲーマンこそ俺の源!と考え行動してきたのに、立った一度のミスで全てが泡と消えた感じがした。
実際には消えてはいない!だが、心の中でスーゲーマン愛とスーゲーマンの非常識な批判で対立し相殺しようとしていた。
スゴウは全く気付いていなかったが、事態は進んでいた。
「なっ??……あ!!アレを見て!」
ピンクの柱が消えたと思った次の瞬間!空襲か?と思わせる音がする。
その音はゴォォォと鳴り、とてもじゃ無いが地面と地面の摩擦で生じた音だとは誰も思うまい。
なのに、何故“空襲”と思ったのか?そう!元転生者のアキラとアキトが空を見上げ『飛行機?』と言ったからだ。
「アレは?……」
誰もが呆然と見ていた中で、小型無線機は話し出す。
「アキラ殿大変じゃ!今すぐシュバビエ城へ来るのじゃ!
ピンクの光のが今無いこの時がチャンスじゃ!ドラゴンレーザーで、すっ飛んで来て欲しい。」
皆が静まりかえっていた、というのもあって耳に通りやすいかたちとなり、スムーズに行動が出来たのだが
「スゴウ!行くよ!!
スゴウさん!!早く!!」
アキラとアキトに言われるが全く反応を見せない私に対して苛立ち、終いにはアキトが『姉さん先に行こう!』と姉を急がす形となった。
「弟の癖に!命令すんなー!!」
ドラゴン化したアキラが取った行動とは
「姉さん!そんな咥え方したらケガしちゃうよ。
……ごめん。そして、ありがとう。」
つい自分が主役なんだと!自分でなんとかして誘導し、皆を勇気付ける為には!
いち早くシュバビエ城へ戻り、一致団結して未知なるアレに挑まなければと考えるあまり、大切な何かを置き去りにしてしまうが、姉の一喝で『ごめん』という言葉が出た。
「えふに!はんはが、ふなおに謝ってんやぁ…」
「姉さん……大体理解したけど、喋り過ぎてスゴウさん落とさないでね。
じゃあ、姉さんの目の前に巻物・オーバーサイクロンを放つから!」
アキトの言葉を聞いたアキラは一度頷く。
頷いた姉を見ると、ウエストポーチから洋紙と小瓶を取り出した。
『行くぞ!』と掛け声と共に……
「私が瓶を割ります!……助けられてばかりじゃね。」
「じゃ、お願いするよ。
僕は狙撃は下手だから……」
「俺が投擲してやるよ。
これでも、投擲は毎晩嫁に取りに行って貰ってるからな!」
ニヘラと笑うイウヤに、後ろからセロがアキレス腱をゴリゴリと爪を立てられる。
そんな二人を見てアキトは笑みをこぼす。
少し、自分に置かれた重圧から回復したような感じがした。
アキラも、イウヤとセロのやり取りには全く関わらない。
「さあ!イウヤさん。
姉さんの鼻先へ投げて下さい!セロさんお願いします!」
シュバビエ王が言っていたドラゴンレーザーというのは、単にアキラ単身がレーザーの如く早く飛ぶという代物。
だがアキラは姉である!姉は弟を守る者なのだ。更に言えば、今はリーダーシップを取っている身である。
リーダーである者が、王の命令とはいえ他を置いて帰る訳がない!
王はドラゴンレーザーの事を良く知っていた。
それは誰も乗る事が出来ない、ただの赤いドラゴンの閃光なのだと。
だが、姉弟は……弟は発明した“空気抵抗を極力減らし”飛ぶ方法を。
それが、オーバーサイクロンを放ちつつ突き進む。
「……もうすぐオーバーサイクロンが切れるから、僕がイウヤさんに渡したタイミングで、また鼻先狙って!セロさんもよろしくお願いします」
「わかってる・わかったわ」
……
オーバーサイクロンを放ちつつ、アキラがサイクロンの中を突き抜け追い越すという事を五度繰り返すとシュバビエ城へと着いていた。
明日もよろしく




