模擬練習
こんばんは
朝食は、鶏ガラのスープに菜っ葉が小さく一惣とわりと大きなバゲットが半分にカットされたもの。一部屋に一本というから、店がカットしてくれたんだと思う。
周りを見れば、スープにバゲットを付けて食べる人もいたり、追加で肉料理なども注文される方々も見受けられる。
「イウヤ!早く食べて一番乗りしよう。」
「あ、ああ……」
私の変化には、イウヤも追い付いて来れない様子たが、イウヤはこれでも私よりかはワンランク上の冒険者であることは間違い無い。
だからか、そんな下のランクの私に対しては、いつまでも出遅れることも無く、朝食を終えたら直ぐに『早く行こうぜ』と言って先輩ぶりを見せつけていた。
早朝はどこでも大忙しのようで、出店の用意等が考えれるが、周りの風景を見るとやはり冒険者が目立って仕方がない。
そう!私達と同じ目的の冒険者だ。これくらいいると、迷うのはあり得ないだろうと言う位に装備を纏いて出勤は実に目立つ。
少し歩くと、もう出店から『手袋!手袋はいらんか!?』と私達に呼び掛けるように商売してきた。これに関してはイウヤが『手袋か必要だな』と言っていた事から、私も購入することになる。
それは、重い荷物等を運ぶ時に大層便利だそうだ。
「ありがとうな。おごってもらって。」
「良いって。……ホラッ見えて来たぜ。
アレが、オーロル城門だ。」
奥に高くそびえるのは、お姫様が最上階に居そうな城。
そんな天高くそびえるのを支えるかのように、重量感を思わせる城門からでも見える屋根部分はとてつもなく広いというのが見えて理解できる。
イウヤが『見えて来た』と言えば、私の旅行感覚で来た感がパァ!と何か華やかとなる。
だが、いかんせん城門の茶色の壁とは裏腹に、ヒューゴのテント幕は茶色とは別物でとても景色を壊している感が半端なく見えている。
(そりゃそうか……旅行では無いもんな。
俺は、仕事で来たんだ!)
着いた途端に、ヒュレイさんが指揮を執ってしたので、その指示に従うこととなった。
大勢の冒険者がいたこともあり、もう建て終わっている。
「おい!次は……森エルフの女で、えーとアイツだ!」
「おう!」
前半の珍獣やライダー系職業が欲しがる猛獣系の段取りは終わり、男女の傭兵が終わり今は性奴隷の順番へと入っている。
私達が受持つのは、最初から性奴隷の分担だった。
先にやっているのを見て、学ぶのも良い勉強になるというもの。
今やっているのは、模擬練習だ。イウヤが商品を言って私が出すという仕事を受け持っている。
何をやっても、スムーズな動きと円滑した商売は御客様にとっては必要不可欠なんだそうだ。
これは、イウヤが性奴隷の管理というのに挙手をして、そう成ったのは言うまでもない。
まあ、元からイウヤの目的がそうだったんだから仕方がない。
そんな中、顔から膝辺りまで麻布の袋を被った人?が連れられ出てきた。
「次!赤竜騎士のアキ!……へ?
……あのシュバビエ城の戦神・赤竜帝から直々に赤竜の子を授かったと言われている!赤竜騎士隊長アキラ・サザナミだと?」
「えーと。この人ですか?」
別の冒険者に連れて来られたのは、殆どが麻布で被されて見えない奴だった。
「イウヤ!この人か!?」
「あー……たぶん。」
(見えない。というか!確認どうやってしろってんだ!?)
「特徴とか無いのか?」
「ここには書いて無い!」
「じゃあ……。戦神だっけ?赤竜のサザナミ アキラって人の特徴は?」
「えっと、たしか……」
ここまで、何も詰まる事なく円滑に動いていたハズなのに、見た目が確認出来ないというのが、こんなにも番狂わせなのか?と思うほど緊急な程に俺は焦っていた。
俺は焦ってはいるし、イウヤも練習とはいえ少しばかり焦りが見えていた。
それもそうだろう!目の前には雇い主のヒューゴさんと妹のヒュレイさんが見守っているから、どうしてもイウヤは特に【奴隷の件】もあって良い所を見せたがっていた。
だが、事態は違う方向へと傾き始めるのだった。
「私をサザナミ アキラと呼ぶのか?そして、その声は……聞いたことがあるぞ?」
麻布を被った奴は直ぐ横で、私にだけにしか聞こえないトーンで話かけて来た時!フラッシュバックの様に甦ると同時に、自身の意識とか関係無く言葉を発せられていた。
「キミは赤髪の……」
「そうだよ。……あの時はどうも。
そうそう、忘れてはいませんよ……スープ!苦しいほどに、美味しく頂き……死が垣間見えましたよ!!フフフ。」
この娘がほくそ笑みの声が聞こえて来たと同時にヒューゴさんから『そいつの確認はしなくて良い!……最後であれば良い!』と言ってからトントン拍子で模擬練習は終わる。
「俺は決めた!あの娘にするぜ!
……って!なんだよ。誰でも失敗は有るだろう?失敗して這い上がって来れば良いだけの事からだろ。」
品定めしたイウヤは楽しいオーラを醸し出すのだが、私だけは彼女の言葉が私の頭の中をグルグルと回り支配していく。
まるで、私に何かイケナイ事を仕出かしたかのようなこのザワめきは一体なんであろうか?
彼は気付いていない。彼が言った彼女の名前の順には、彼と彼女しか理解出来ないモノがあるという事を……未だ彼は知らなかった。
明日もヨロシク




