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【簡略化した初まりとハッピーエンド】

 ある村の小さな家に不思議な力を持つ少女は住んでいました。その力とは人を生き返らせることのできるまるで神のみわざみたいなものです。

 ある日、少女は鳥の亡骸を見つけました。心優しい少女は力を使い鳥を生き返らせたのです。

 その場面を見た村の少年たちは言いふらしました。

 信じる大人は少なかったでしょう。けれど、噂を聞いた村一番のお金持ちの人が少女の家を訪れました。用件は「娘を生き返らせてほしい」ということでした。

 少女は断ります。理由はありました。


 話は戻り、鳥を生き返らせた少女は少年たちに見られすぐ家に帰りそれからそこへ行くことはありませんでした。しかし何日か経って気になった少女は行きます。目を疑いました。そこにはあの鳥がいたのです。生き返らせたはずの鳥が。

 少女は心底驚きました。鳥は羽ばたいていったと思っていましたから。

 どうしてと考えました。なぜ、生き返らせたはずの鳥が。

 ……まるでずっとここにいたような。

 考えて思いました。

 鳥は生き返ったあと動かずにいたのではないかと。どうして動かなかったか。動く思考がなかったから。

 つまり、少女は命を蘇らせたと思っていたけれどそうではなかった。

 少女がここへまた来る間、雨は何度も降りました。つまり長い間鳥はここに放置されていたのです。だというのに鳥は朽ちていません、腐ってもいません。体の変化は全くありません。少し汚れている程度。

 少女は掘った土の上に鳥を置きました。ごめんなさいと謝り砂をかぶせます。

 土に埋めても鳥の骨と肉体は分離されないでしょう。なぜかわかりました。

 正式な死を奪ってしまった。鳥の命を侮辱してしまった。汚してしまった、と。


 お金持ちに娘を生き返らせてほしいと言われ、少女は断りました。されどお金持ちは引きません。お金を積んできました。少女はそれでも揺らぐことはしません。ならばとお金持ちはしてはいけないことをしようとしてきました。

 少女と一緒に住んでいる少年に手をかけようとしてきたのです。

 少女にとって少年は唯一大切な存在でした。さすがの少女もそれには腹が立ちました。なので、どうでもいいと吹っ切れ了承しました。

 お金持ちの娘は生き返りました。

 言われていた通り報酬をもらうことになった少女は、お金では盗まれやすいと小さな宝石をたくさんもらうことに。

 噂は広まりました。蘇生少女は本当にいたと。


 そんな時にちょうど病が流行ったのです。

 それは子供にしかならない、かかれば死という病気でした。

 何人もの子供が死に、少女のもとへ何人もの大人たちがやってくるようになりました。その中には、鳥を生き返らせた場面を見て蘇生少女がいると言いふらした少年もいました。

 少女は断ります。されど大人たちはそれを許してはくれません。

 お金持ちの娘は助けただろう、金を渡せばいいのか、報酬がなければ助けてくれないのか。

 残酷なことを言う者ばかりでした。大切な人を失って理性がなくなっていたのでしょう。気が狂っていたのでしょう。そう思わなければ少女は息苦しさで潰されてしまいそうでした。

 何人いても少女を見てくれる人は誰もいません。

 それに気づいた少女は片っ端から生き返らせることにしました。もうどうでもいいと思ったのです。あのときと同じ。お金持ちの娘を生き返らせたときと同じ。


 何日かしてお金持ちの人がまたやって来ました。今度は批判でした。

 ご飯を与えても食べない。何もしようとしない。娘はまるで生ける屍のようになってしまった。どうしてだ。こんなはずじゃなかった。これではまるで死んでいるのと同じ。元に戻してくれ。

 そんなこと言われても少女は知りません。元に戻してと言われても、娘は死んでいたのですからそれが当然なのでしょう、それが本当の姿なのでしょう。そう言えるわけもなく少女はただ首を横にふりました。

 責任をとれ。なんて言われても知らないものは知りません。

 少女に話が通じないことがわかると、頼むんじゃなかったと言い捨てていきました。

 なんと勝手でしょう。頼んできたときに少女は断りました。それなのに無理やりさせたのです。責任をとれなんて、自発的にやったわけではない少女に言うべき言葉ではありません。そのことでどれだけ少女が傷つくかも知らずに……。

 村の他の者たちも少女のもとへやってきました。やはり生ける屍となった子供たちについての疑問や文句です。大人たちが揃いも揃って少女に怒りをぶつけているのです。なんと勝手でしょう。

 流行り病に少女の大切な少年もかかってしまいました。幼いながらに少年と二人暮らしをしていた少女は一人になってしまいます。その寂しさに少女は少年を生き返らせることにしました。

 どんな少年であろうと生ける屍であろうと、自分は大人たちのようにはならない。後悔なんかしたりしない、少年の面倒はちゃんとみる。

 そんな強い気持ちで一年。


 村に子供が一人だけ、唯一の生き残りとなった少女のもとに男は現れました。ハムスターを生き返らせてもらうことができるのか伺ってきたのです。

 少女はできないと旨を伝えました。

 男は理解しました。少女の力は使うべきではないと。

 少女と男は行動を共にすることになりました。

 魂をよべる男性と出会ったのはそれから十年後のことです。


 一度蘇生を行った少年の体はまるで長い間眠っていただけかのように少しも腐ってはいませんでした。そんな体に魂をよんでもらうことにしたのです。

 それは禁忌でした。

 されど少女の懇願に魂のよべる男性は承諾しました。少女の力を二度と使わないことを条件にしたのです。

 少女が生き返らせる力を使い、その体に魂をいれる。成功しました。

 少女の大切な少年が本当の意味で生き返ったのです。

 思わず少女はーーいえあれからもうすでに十年経ち少女は立派な女性でした。彼女は涙を流しました。十年ぶりに泣いたのでしょう。生き返った少年を抱きしめ不慣れに声を詰まらせ泣きました。

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