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献身的な、ぼくのはなし。

作者: 青木ユイ

 ずっと、待っている。きみがそこを通り過ぎるのを。

 柔らかい繊維を体に絡ませて、じっと待っている。

 そしてついにその時が来る。きらきらしたきみは、ぼくの方をちらりと見て微笑んだ。その輝く鋼の体が行ったり来たりする。


「ねえ」


 きみがそう言った気がした。気が付くとぼくは、ふかふかのクッションで寝ていた。


 毎日、というわけではない。ときどき、一瞬だけど、ぼくはきらきらしたきみのそばにいられる。きみが通り過ぎていくのを、ぼくは心待ちにしている。

 整った体つき。ぼくよりも少しだけ背が低くて、華奢で、かわいらしい。

 だけど、棘を持っている。まるでばらみたいだ、そういうところがぼくは好き。

 ほんとうに、きみはばらのようだ、と思う。ぼくには手の届かない、高嶺の花なのだ。

 ぼくの代わりはいくらでもいるので、ぼくときみがすれ違うのはときどきで。逢えたら、しあわせ。そしてそのしあわせに浸っている間に、ぼくはあっという間にクッションに連れていかれる。


 また次も、待っている。つぎにきみと逢えるのは、いつになるのかな。

 そのときはまた、きみはぼくの方を見て、笑ってくれるかな。


 ぼくは、待ち針。

 きみの笑顔が見たいから、ぼくは今日も、待っています。


お久しぶりです。ここまで読んでいただけてうれしいです、ありがとうございました!


まち針を「待ち針」と書くことを今日知って、献身的か……! と感動したのでつい書いてしまいました。

待ち針、好きです。これからもよろしくね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませていただきましたが、すごく良くて心が暖まりました(^^) 僕も待ち針は好きですね!
2017/11/17 15:17 退会済み
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