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第39話 王都編 10


ジルとの一時を終え踏ん切りがついたリディは虐げられていたピンク髪の少女サラを再び勧誘するため、ぼったくり夫婦の宿屋に向かい歩いていた。といっても今日中にあの夫婦を王都警備兵が捕らえに行く予定なので、サラは他の所にいる可能性もあるが。

父であるユーリがサラの身の安全を進言してくれたので夫婦と同じく牢屋に直行なんて事は無い筈だが。


(おとうさまを待たせるのも悪いし、早く見つけて王都からおさらばしよう)

リディが歩きながらそう考えていると正面から1人の兵士が走って来た。ここ王都の者ではない我がブランシュ領の私兵だ。


「リディさまぁぁぁ!!」

酷く焦った様子の私兵はリディの前で急停止すると、息が整わない内に喋り始める。


「お、おちおちおち落ち着いてええ聞いてくだくださいねぇ!! ほうこくがあありありありあり」


「うんうんうんうんおちおちおち落ち着くよくよくよぶぶんぶん!! ……どうです? まともな話が出来るように見えます? 私が言いたい事は、もっと冷静になって下さいと言う事です」


「あ! す、すみません。急を要すると言われたのでつい……ス~ハ~、ス~ハ~」

私兵に自分と同じ姿を見せて冷静にさせるリディ。私兵は深呼吸を数回すると落ち着いた表情になる。


「いけます?」

「はい! では……先ほど来た王都警備兵の報告を伝えます! 捕らえるはずだった宿屋の夫婦がサラと言う少女を人質に逃亡したようです!!」

「……は?」


衝撃の事実に目を見開き硬直するリディ。

(え? 人質? さらわれたって事? 何? サラがサラわれたっていうギャグ? えっ? 違うの?)


「あの? リディ様大丈夫ですか?」

私兵の心配そうな顔にリディはハッとし眉間に皺を寄せ深刻そうな表情を見せた後……冷静を装った。


「だ、大丈夫です安心して下さい。と、とと所で報告が良く聞こえなかったのですけど、近所のババアがタワシを食ってどうのこうのって言いましたよね?」


「全然違うじゃないですか!? 先ほどのご自分の言葉を思い出して下さい! 冷静に、冷静になって下さい!!」


「な、なな何言っているんです私は至って冷静ですよ。そう、冷静なの。今やるべき事もちゃんと理解している。1つめ! 人手を増やす! 2つめ! 聞き込み調査で目撃情報を集める! そしてみっちゅめ!! たった今自分が冷静じゃない事に気がついたからかなりパニくる!! うわ! どうすんだコレ!? どうすればいいんだコレ!? マジヤベェ!!」


汗をダラダラと流しながら右往左往するリディに私兵が言う。

「深呼吸! 深呼吸をしましょう!? このままじゃユーリ様の言葉を伝えられません!!」

「え? おとうさまの言葉?」


いきなり出て来た身内の名前にリディは少し冷静さを取り戻し、深呼吸をする余裕が出来る。

「はぁ~……おとうさまは何と?」


リディの落ち着きぶりに顔を引き締め私兵が口を開く。


「ただ1言……『どうする?』だそうです」


ユーリはこの事件に関わるか関わらないかをリディの判断に委ねる意思があるようだ。思えばこの王都に来てからというもの、リディの我が儘でたくさん面倒ごとに巻き込んでしまった。それなのに今回もユーリはリディの意思を尊重してくれると言う。そんな父のやさしさに申し訳ない思いが込み上げてくる。どうせサラは赤の他人だ。そこまでやってやる義理などどこにもない。


(だけど……)


リディは決断する。心である人物に謝罪を述べながら……。



「おとうさまに伝えて下さい」

私兵に背を向け足に力を入れる。そして


「実家に帰るのはもう少し後になると!!」

叫び駆け出す。リディはサラを助ける選択をとった。



サラ誘拐を私兵に聞かされ街中を駆け、探し回るリディ。だがブランシュ家の面々に合わせ王都の警備兵も大人数、捜索に協力させているにも関わらず、現状はサラのサの字も出てこない。

いくら王都が広いからといっても子供を抱えて身を隠せるような場所などそうはない。芳ばしくない現状にリディは高い屋根の上に登り辺りを見渡しながら思考する。


(もう門の外に逃げている? それはないか)


リディは一瞬過った可能性を直ぐに否定する。戦闘訓練を積んでいない一般人が馬車と護衛なしで外に出るなど北極に半袖でピクニックに行くようなものだ。


(でも、こんなに大人数が探し回っているのに見つからない場所なんてあるのか? ……いやそういえば)

リディは王都に来たばかりの時、馬車の中でユーリが言っていた事を思いだす。


『まぁ当然不満の声もあるだろう。“スラムなどは常に犯罪が絶えない程荒れていると聞くからな。王もこの王都のウィンドル領公もそこまで手が回らないのだろうな”』


「スラムって……どこにあるんだ?」

目を細め屋根の上から街を見下ろすリディ。何かを探すようにチートの入った目をキョロキョロさせ、そしてある者達にピントが合う。そこにいたのは裏路地で煙草を吸っている見るからにガラの悪そうな男2人だった。


「……聞いてみるか」

そう呟くと腕をぐるりと2、3度回し、屋根の上から飛び降りる――。



――後ろでピクピクと痙攣している親切な男2人との話し合いを終え、地面を思いっきり蹴りスラムへ駆け出すリディ。


一般街の裏路地に入り迷路のような薄暗い道をしばらく進むと、鼻を突くような臭いが辺りを充満し始める。その雰囲気にスラムの危険性がリディの中で跳ね上がりさらに走るスピードを上げる。どんどん濃く重くなってゆく空気に背筋に冷たいものを感じ始めるがリディは止まらない。悩んでいる1分1秒が惜しいからだ。

そしてリディがある曲がり角を曲がると目に飛び込んできたのは広い路地、そして奥にある大きなトンネル、そこに入って行こうとする10人程の武装した集団だ。


(見つけた!!)

リディがその男達の中央に目を向けるとそこには探し求めていたサラとついでに宿屋の夫婦もいた。

トンネルには身を隠せるような障害物は無いため、後をつける事は出来ない。それに加え奥から漂ってくる嫌な感じ。

リディはサラがスラムに入ってしまう前に決着をつけなければと感じ、トンネルの前で立ち止まると奥に進もうと歩いている集団に大きく叫ぶ。


「ちょっと待ったぁぁ!!」


リディの叫びに歩みを止め振り返る集団。リディにいち早く反応したのは亭主だった。

「お前はブランシュ領公の娘!!」

「はい、説明ありがとね」


リディは汗を拭うと集団の中央で呆然としながら涙を流しているサラと視線を合わせる。

「リディ……さん。来て、くれたんですか?」

「うん……ねぇサラ?」

「は、はい……」

どこか信じられないという表情のサラにリディは満面の笑みを浮かべ言う。


「待っててね?」


その言葉に嬉しそうに返事をするサラ。

「はい! はい!!」


取りあえずサラは五体満足の様なので一安心するリディ。後はこのまま無傷でサラを保護するだけだ。なるべく強引な手段を避けたいリディは交渉を持ちかけるため目の前の奴らを観察する。

(どいつもこいつもヤバそうな顔……一番発言力がある奴はどいつだ?)


その時、手段の中央、サラの隣でパチパチと拍手をしている火傷が目立つ大男が前に出てくる。その余裕そうな表情と、道を空ける他の奴らを見てこいつが頭か、と判断するリディ。


(捨てられた子犬を丸のみにしそうな奴だな……果たして交渉、ていうか言葉が通じればいいけど)


リディとおよそ5メートル程の距離を空けて立ち止まる火傷男はしゃがれた声で笑い始める。

「カカカカカ! この状況で何て言えばいいのかぁ~……取りあえずはこうか? 領家様がこんな所に何の様だ? ひょっとして迷子にでもなったか?」


聞き取りづらいが、言葉は話せる事に少し安心したリディは軽いジャブから入る事に。


「道に迷っているのはどう見てもあなた達でしょ? 犯罪者御一行様」


「良く口が回るな。子供でも領家かよ気に食わねえ……なぁ? 斬ってもいいか? お前じゃなくてさ」


大男が腰の剣を抜くと楽しそうに目線をサラに向ける。サラの価値を良く理解している様だ。


(ちっ! 見た目の割に賢いやつだ。挑発はダメだな)


しかし弱みを見せてはいけない。あくまでもこちらが主導権を握らねば。リディはそう考えなるべく威厳のある声で話す。


「軽い冗談じゃないですか。そんな物騒な獲物はしまってここは文化人らしく話し合い。ギブアンドテイクで決着つけましょうよ?」


「ほう、こっちを納得させる交換条件でもあるのか? 聞いてやるよ」


「はい。そこにいる夫婦……はどうでも良いので少女だけでも引き渡しては貰えませんか? その娘はただ人質に取られただけの健気な一般人なのです。あなた達の中にも子供がいる人はいるでしょう? もし自分達の子供がその娘の立場だったらどう思いますか? このまま連れ去られて良いと思いますか?」


リディの訴えかけに感じるものがあったかは分からないが目の前の火傷男も後ろの集団も少し目を見開いている。それを確認し懐から財布を出すリディ。

こんな交換条件、虫唾が走るほど嫌だが背に腹は代えられない。リディはそう思いながらも金貨と銀貨が大量に入っている財布の中身を見せ叫ぶ。


「その娘を返してくれるならここにある私の全財産を差し上げます。このお金とそこの夫婦2人で満足してスラムに帰るか、それとも懐が満たされないまま、いたいけな少女の人生を狂わせるのか。どっちが良い選択だと思いますか?」


リディはこちらは金を提供するのでサラを返してくれと言う条件をだした。しかしこの時リディは確かに感じていた……余りの手ごたえの無さを。


「カカカカカカカカ!! あ~必死で可愛いねぇ~お嬢ちゃん?」

大笑いする火傷男を睨みながら、リディは嫌な予感がし始める。


「……なら、あなたが納得する条件を聞かせて――」

「――ああ、違う違う! そんなんじゃねぇんだよ」


リディが再び話し合いをしようとするが、大男は首を横に振りそれを遮ると、手に持っている剣をリディに見せつけるように前へと向ける。


「健気にも頑張ってくれたお嬢ちゃんに教えてやるよ。俺達スラム民の流儀ってやつをな」


「流儀、ですか? ……“お手て繋いで1等賞”とかだったらいいんですけど」


「残念ながらそれは先月で終わっちまったよ……今はなぁ」

火傷男の二ヤッとした笑みと言葉に後ろの連中もにやつき、それぞれの武器を抜きはなつ。


「“欲しいものは力づくで奪い取れ”だ。その金もこのガキも、そんでお前自身も全部俺達が頂いていくぜ!」


「リディさん逃げて!! わたしの事はもういいですから――ひっ!」

火傷男の言葉にリディまで巻き込んだと思ったのかサラが悲痛そうに叫ぶが、集団にいる男の1人に剣を向けられ黙る。

火傷男の後ろにいた集団の内1人がリディを捕まえようと詰め寄ってくる。


「なるほど、はなからこちらの条件を聞くつもりはなかったと……全く子供をおちょくるなよな」


向こうは文化より野生の血の方が濃かったようだ。残念ながらリディはこれ以上良い方法は思いついていない。後出来る事といえば奴らと同じく野生の血を爆発させ無理やりにでもサラを救出する事だ。しかしそれには問題がある。


(一か八か突っ込んでみるか? 俺のチート脚力ならサラの頭がどっか行く前に助けられるかも)


リディは目の前に迫る男とその後ろにいる巨躯の火傷男をすり抜け、集団の中心で剣を突きつけられているサラを無事に助けられるのかイメージする。


(ダメだ! いくら考えても俺がサラを掴んだ時には、下がもうなくなって小脇に抱えられる位の大きさになっちゃってるよ!)


強引な手段はとれない、交換条件も聞き入れてもらえない。リディはどうしようもない状況に汗を流す。


(せめて、相手の目が俺以外に向いてくれれば……)


相手はリディの力を知らない。もしここに注意を引き付けてくれる大の大人でもいたのなら、幼いリディより皆はそちらを警戒するだろう。しかし、そんな人物はここにはおらず、皆の目もリディにしか向いていない。動けば即座に反応されてしまう。

サラを見捨てて逃げる様な事は絶対にしたくないリディ。このまま奴らの言いなりになって捕まるしかないのだろうか……。




「……ん?」

そんな絶体絶命な雰囲気の中、焦っているはずのリディが徐に小首をかしげた。何かを思いついたのか視線を上に向け「ん~」と間延びした声を発した後、先ほどとは裏腹に焦りを表に出し叫び始める。


「そんなぁ!! じゃあその娘は助けられないと言う事ですかぁ!!」


リディの驚いた表情に迫っていた男が悪そうにニヤつく。

「へへへ、理解が早くて助かるぜ。まぁガキにしちゃそこそこ聞ける演説だったけど、相手が悪かったな」


そんな男に泣きそうな表情をするリディが自身の胸に手を当て、気高そうに訴えかける。

「ひどい! ひどすぎます!! そんなのあんまりです!! その娘に罪はないのですよ!? それなのに連れていくと言うのであれば、私を代わりに連れていきなさい!!」


「いやだからお前も後ろのガキも連れていくって言ってんだろ? 理解しろよ」


そのやり取りに疑問を感じたのか、男が眉を顰める。しかしもう既にこの男はリディの作り出す意味不明な世界に迷い込んでしまっていた。


「そんなぁ!! じゃあその娘は助けられないと言う事ですかぁ!!」


「へへへ、理解が早くて助かるぜ。まぁガキにしちゃ……さっきもいったぞこれ!」


「ひどい! ひどすぎます!! そんなのあんまりです!! その娘に罪はないのですよ!? それなのに連れていくと言うのであれば、私を代わりに連れていきなさい!!」


「聞いた! それさっき聞いたから!!」


「そんなぁ!! じゃあその娘は助けられないと言う事ですかぁ!!」


「おい!! 俺だけか!? 俺だけが同じ時間をグルグル回ってんのか!? それともこいつがいきなりバカになっただけか!?」


男がループの森を抜け出したとしても、意味不明空間は第2の姿を現す。リディのボケ地獄だ。さて男はツッコミきれるかな?


「バカ!? 今バカって言いましたね!? うええええええん!! そんな最上級な悪口今まで千回くらいしか言われた事ないのにぃ!!」


「そんなに言われてるんだったら、じゃあお前が本当にバカなんだよ!!」


「そんな事ない!! 私が大好きなメイドの1人がよく言ってくれるもん!! 『お嬢様は決してバカではありません。わかったら早くパン買って来い』ってね!!」


「自分で言ってて気がつけよ、そいつが一番バカにしてるだろ!! 何だ!? メイドにいじめられているのか!?」


訳の分からない2人のやり取りに、後ろの集団の1人が叫ぶ。

「おい! そんなのはどうでもいいからさっさと連れて来い! どうせもう家には帰れないんだからよ」


「あ、ああそうだな……おい! 余計な口を叩くな」

仲間に諭され冷静になったのか、再び男がリディに詰め寄る。しかしリディのバグかと思える行動は止まらない。やけくそ気味に両腕を前に出し投降する動作を見せる。


「分かりましたよ、黙っていればいいんでしょ!? こんな状況で抵抗が無意味な事くらい理解してます! ほら! 早く連れていきなさいよ!! さぁ早く!!」


「言われなくてもそうするぜ」


前に出された両腕を男が掴もうとした瞬間……腕を引き全力で自分の体を守るように抱きしめるリディ。


「いや!! 連れて行かないで!!」


「いやどっちだよ、決めてくれよ! も~う!!」


リディの態度にイラついたのか地団駄を踏む男に、もっとイラついているであろう後ろの集団の1人が血管を浮き出しながら叫ぶ。


「“も~う”じゃねぇだろ! なにそいつの意見を聞こうとしてんだよバカ野郎!」


男が再びリディに手を伸ばす。しかし。

「分かりましたよ、黙っていればいいんでしょ!? こんな状況で抵抗が無意味な事くらい理解してます――いや! 触らないで!!」


リディの混沌とした世界に浸食されてしまった男が1人出来上がった。

「おいもうダメだ!! 情緒不安定すぎるぞコイツ! スラムより先に医者の所に連れて行こうぜ!!」


「そんな義理ねぇだろ! もうお前はいいからパンでも何でもいいから買いに行ってこいボケ!!」


後ろの集団の言葉にリディが目の前の男に微笑む。それに対してなぜか男も微笑む。

「私それ得意なんです。一緒に行きましょ?」

「ああ、どんなのがいいかな?」

「ブランシュ肉が挟んである奴がおいしいですよ?」

「わあ、俺も大好きなんだそれ」


まるで親しい友人の様な会話をするリディと男に、後ろの1人が全力で叫ぶ。

「おい患者が2人に増えたぞ! バカは伝染するって医学書に書き加えとけ!」


そんな斬新なスリーコントに惑わされていないのか先ほどから沈黙を貫いていた火傷男がリディの友達になった男の首根っこを掴み後ろに投げ飛ばし疑わしそうにリディを見下す

「……おい、さっきから訳わかんねえ事言いやがって……何を考えてるんだ?」

「何を? ですか。そうですねぇ~」


恐らく目の前にいる火傷男の言葉をこの場で理解できた者はリディ以外にはいないだろう。

先ほどからおかしい態度をとっているリディだが、それにはちゃんと理由があったのだ。

顎に指を当て考える素振りを見せるリディに答えを出さないつもりと判断したのか火傷男がその大きな手をリディに伸ばす。しかしここでリディの答えが出る。


「強いていうなら……時間稼ぎですかね」

「何だと?」


ドドドドドド!! リディの後方、一般街のある方角から地鳴の様な音が響いてくる。しかもその音はどんどん大きくなりこちらに向かってくるではないか。

動揺する集団と冷静そうな火傷男にリディは自分の両耳に手を当て強気に笑う。


「そろそろ聞こえましたか?」


その瞬間、リディの後ろの路地から1人の男を先頭に立派な武装をした10人の兵達が地を踏み鳴らしながらリディの後ろに綺麗な隊列で集結する。火傷男はバックステップでリディと距離を空ける。

そう、リディはその聴力で分かっていたのだ。こちらに向かってくる者達の存在を。


「よくここにいるって分かりましたね、おとうさま?」

横に来たユーリに目を向け問うリディ。


「裏路地で倒れていた男共に聞いたんだよ。顎をハメてからね」

「……ごめんなさい。私の我が儘に付き合わせてしまって」

「我が儘だったのか? 気がつかなかったよ。なぁ」

ユーリが後ろにいる私兵に聞くと、皆笑いながら頷いた。それにニッコリと微笑むとリディは再び前を向く。

数では五分五分になっただけだが、スラムの男達はブランシュ私兵のインパクトある登場に少し威圧されているようだ。


「さて……条件の内容が変わりましたね」


リディは右手でグーを作り、前に出す。

「その娘とお金を交換して、スラムに戻り夫婦を椅子にでもしながらおいしいステーキを食べるのか……」


次にリディは左手でチョキを作り前に出す。

「それともここで私達と争って、檻の中でシャボン玉でも飛ばしながら刑の執行を待つのか……」


出したグーとチョキの手を合わせ、どちらが強いか……つまりどちらが良い判断かを見せつけリディは笑みで目を細くし首を傾げた。


「どっちが良い選択だと思いますか?」



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