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第18話 パルム編 3

屋敷に戻ったリディは丁度タイミングよく王都から帰ってきたユーリに、ブランシュ改革の為の家族会議を開こうと提案する。それを了承したユーリは先に私の仕事場で待機していてくれと言い、メイド達に人数分の椅子と机を運び込むように指示する。


ユーリの仕事部屋に椅子と丸い机が置かれ、雑談をしながら待つリディとアリアンヌとジル。それから直ぐにユーリが青髪のメイドを連れて入ってくる。


「待たせて済まない。クララ、人数分の紅茶を用意してくれ」

「かしこまりました」


綺麗な動作で頭を下げ、カートに置いてある紅茶を入れ始める青髪メイド、クララ。

ブランシュ家のメイドの一人でクールな目が特徴だ。ちなみにリディはよくクララと話す、と言うかちょっかいをかける。なぜなら――。


「クララが紅茶を入れて、机に置いた! クーララーがおーいた! クーララーがおーいた! クーララーがおーいた!」

「……」


まるで蔑むような目線をリディに向けるクララ。それに対してリディはカメラマンのように両手で四角を作り満足そうに言う。

「いいねいいね~! 相変わらず冷たいね~。もっと目線頂戴」

リディがちょっかいを出すと見せるクララの蔑みの目線が意外にも好きになってしまったのだ。クララも毎回やってくれる辺り、まんざらでもないのかもしれないが。


さてそんな事もあったが第一回、ブランシュ家族会議が開始され、自分の机に腰掛けたユーリが話し始める。


「まずは野盗の身柄と武器の取引だが、割と良い値がついたよ」

それは吉報であると笑う一同。話を聞くとあの野盗集団の頭領と他何人かに賞金が賭けられていたらしく、その分料金が上乗せされたらしい。武器や防具の方はユーリが粘りに粘って商業領家に買い取って貰ったみたいだ。


「あんなに真剣に人に頼み込んだのは初めてだが、意外と私には商いの才能があるのかもしれないな」

その冷たい顔でニヤッと笑うユーリ。やはり善人には見えないユーリを見て、リディは恐らく他の皆も思っただろう。

あなたの顔で頼まれたら、そりゃ断れませんって……と。


(名も知らない領家様よ、怖かっただろうね)

そんな事を思い、祈りのポーズをするリディ。


ユーリからはそれ以上の話はなく、順番はリディになる。

リディは街で見つけたポコ肉について話し始める。ジル以外はその見た目を聞いて嫌な顔をしたが、味は既に実食して保証済み。

リディはその肉を大々的に売り出そうと提案する。しかしユーリはそれに指摘を入れた。


「ブランシュ領内ではいいが、他の領地に輸出する際、保存方法はどうするのだ?」


この世界には冷蔵庫がない。生肉などは直ぐに腐ってしまうので、肉の輸入出などはほとんど干した状態の肉となるのだ。

では牛をそのまま運んで取引先で捌くのは? そんなアリアンヌの質問もユーリに却下される。運ぶ際の護衛の人数とまんまの牛を連れて行くのにコストがかかりすぎるらしい。

どうにも現実味のない方向に進みそうなポコ肉に頭を抱えるリディ。


「う~ん、何か保存できる方法はないのかな~? 例えばおかあさまの使う魔法とかで」

「そんな便利な魔法はないわよ~」


しかしアリアンヌは何かを思いついた様に指を立てる。

「あっ! でも、パルムだったら、そういう物があるかも」


パルム領、アリアンヌの生まれた場所で魔術、魔法の研究が盛んな都市。

アリアンヌ曰く、パルムには魔法を応用した道具がたくさん売られているらしく、もしかしたらリディの言う、保存の出来る道具もあるのでは? と言う事である。


「う~む、しかし私はこのブランシュで仕事があるからパルムには行けないぞ」

腕を組み、難しそうな顔をするユーリにアリアンヌが言う。

「大丈夫よ! 私が行ってくるから!」

それにパルム領にはアリアンヌの実家もある。選別的にはアリアンヌは行って当然なのだがユーリには不安がある様だ。


「しかし、護衛もそう多くは就けられない」

ユーリの心配している所は、パルムに行くまでの道中らしい。ただでさえ他の領地から離れていて体力的にキツイものがあるのに加え、野盗の数も多い。少ない護衛でもしもの事があったらとそう言う事らしい。


「大丈夫よ! これでも灼炎の姫と言われてたくらいの大魔術師なんだから!」

自信気に言うアリアンヌに考えるユーリ。

「そ、そうだな……アリアンヌなら大丈夫……なのか?」


そんなユーリを見るリディ。

(お!? これはあともうひと押しすれば落ちるのでは?)


バッと立ち上がり、高らかに宣言するリディ。

「おとうさま! 心配いりません! この私もおかあさまと共にまいります故」

「ダメだ、とても心配になる」

「あっれ~!?」


どうやらユーリにとってリディは不安の種であるらしい。

甚だ遺憾だ! と反発するが、ユーリとジルはリディが行くのには断固反対の意を示す。しかしこのまま引き下がれるかと、必殺上目で頼み込むを決行するリディ。


「さ! おかあさまも一緒に!」

「ええ、分かったわ!」

「「お願い~」」


親子の懇願ダブルパンチ。しかしユーリは落ちない。さらに詰め寄る二人。

「お願いしますおとうさま! もう二度と、おとうさまのモノマネして笑いをとったりしませんから~」

「そんな事をしてたのか、リディ」


「お願いユーリ! 私もそれで笑ったりしないから」

「相手は君か」


どんどん詰め寄るリディとアリアンヌ。「お願い」「ダメだ」が数回繰り返される。

そして最終的に……。


「「お・ね・が・い!!」」

「そう……か、わたしは、し、死ぬのか?」

「ああ! 二人とも首締まってるから! 父様が死ぬから! ほんとに!!」


結局、ユーリの首をアリアンヌと一緒に絞めるという説得と言う名の脅迫で無事了解を得られる事になる。



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