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国王に報告 2

「えっと……。

城がデカかった。

女に会った。

人間だけど人間じゃなかった。

よし!書けたぞ!」


「お前……。ふざけてるのか?」


あははは、アドレッド様がお怒りでいらっしゃる。

怒りのオーラがとても伝わってきますよ。


「ごめんなさい…。

真面目に書きます!

なので国王にはチクらないでください……」


馬車の椅子の上で土下座し、

俺はアドレッドが目をギラギラとさせて監視している中、

真面目に報告書を書いた。


「なあ、書いてて思ったんだけどさ」


「なんだ?面倒くさくなったか?」


アドレッドに図星を突かれる。

やっぱ、こいつ俺の心が読めるんじゃねぇの?

いや、本人が違うって言ってたしな…。


「まあ、それもあるんだけどー。

けど、気になんだよ。女の子の言葉。」


また、女か。とアドレッドは呆れた声で言った。


「ああ、確かに意味が分からないことを言っていたな」


「それでさ。

言葉もそうなんだけどさ。

姿を見せなかったことも気になるんだよなー」


目の位置ぐらいしか分からなかったから、

子供だろうってことは分かったけどな。


「気にし過ぎじゃないのか?」


「それならそれでいいんだけどさ。

もしかして、姿を見せることが出来なかったんじゃねぇのかなっと…。


たとえば、人に見せられねぇような姿をしていたとか。

んで、考えたんだが。

あの女の子は奴隷何じゃねぇのか?」


気分がいい話じゃないけど、この世界には古くから奴隷制度が根付いている。

貴族などのお偉いさんは奴隷の便利さを捨てられず、

どの国も奴隷制度が続いている。


「奴隷か…。

目ぐらいしかこっちから見えなかったからな。

奴隷の首輪をしていても分からないだろう」


「で、監視するやつがいて、女の子は監視されていた。

だから、騎士が訪れた前で姿を見せれば奴隷の首輪だと一目で分かる。

だから、姿を見せることが出来なかった。

もしくは、体中に傷があって

とても騎士に見せられるようなもんじゃなかった、とか。


だから女の子は考えた。

どうにかしてこの騎士たちにSOSを出せないか。

んで、考えたのが、これだ。


わざと冷たい言葉で俺らを離して、

その言葉の裏にメッセージを隠した!」


どや?と言う風に俺はアドレッドを見た。

アドレッドは俺の顔を見て少しの間放心していたようだ。


「お前、変な所で知恵が働くよな。

何年ぶりだ?お前がそんな風に頭を使うのは」


「いやいや、そんなことよりどう思う?俺の考え」


俺はアドレッドに詰め寄って話した。

それをアドレッドは鬱陶しそうに突き放した。


「ああ、まあ。俺には人間嫌いの女にしか見えなかったが、

国王に話してみてもいいんじゃないか?」


「そっか!ありがとう!

国王に話してみるよ」


と言うことがあり、国王に話している所だ。


「うむ、騎士たちご苦労であった。

少女の件に関しては考えてみるとしよう。

それでも、城の主は分かっていないのだ。

これからもあの城を監視する必要がある」


そこで俺は一歩前に名乗り出た。


「はい!国王陛下!

私は一人の騎士として、一人の人間として。

少女をほっては置けません!

任務の間のほんの少しの時間で構いません。

城を訪ねる許可を私に頂けないでしょうか?」


俺は国王に向かって完璧な90°で頭を下げた。

俺が城に行けるかは、国王の手に掛かっている。


「うむ、それは駄目だ。

監視する必要があると今言った所だったが、

聞いていなかったのか?

今回城を訪れた時には、たまたま城の主がいなかったからよかったものの。

この国の大事な騎士団長が魔族の元に行って、大怪我でもしたらどうする?

任務に支障を来たすだろう。


国の治安を守ることは騎士としての一番の役目であり、騎士としての義務だ。

自分の立場を今一度考えてから物を言え、良いな?」


国王陛下が反論は許さないと言わんばかりに睨んでくる。

やっぱりダメか…。

国王が簡単に許すとは思っていなかったんだけどな。


「はい。身の程を弁えず、国王陛下に発言をしてしまい、申し訳ありませんでした…」


国王の言うことはごもっともだ。

はぁ…。なんで騎士団長になったんだろうな。


「よい、騎士団長は優しい心を持つ良心に満ちた者ということ。

悪いことなどない。

城の監視は別の者に行かせる。


騎士団長並びに副騎士団長。

これからも国のため、民のため務めてくれ」


国王は一言残すと去って行った。


「はぁ…。

お前なんであそこで城に訪ねる許可を取ろうとしたんだよ。

バカか?

まだロクに正体も分かっていない城へノコノコと行くやつがあるか!」


アドレッドはそう言うと俺の頭にゲンコツをかました。

俺はアドレッドに殴られたところを抑えた。

ああ、これぜってぇタンコブ出来てるな。


「いってー!


おいおい、俺団長だぞ?

お前は副で俺は団長!

立場は俺の方が上だろう?

なのに容赦ねぇなー」


「生憎、俺にはお前がとても団長には見えない」


真剣な顔でアドレッドが言った。

こ、これは!もしや俺の立場が危うい…のか?


「えっ、マジで?

俺アドレッドから団長の座を狙われてる!?!?」


「はぁ…。俺が狙ってると思うのか?」


またもや呆れたように言うアドレッド。

だから、そんな風にため息ばかりついてると幸せが逃げるぞ?


「いいや、アドレッドは他人を蹴落としてまで上を目指すような奴じゃない。

団長になるとしたら、実力で俺に勝った時だ!だろ?」


「ああ、そうだな」


俺たちは二人で笑い合ってその場から立ち去った。



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