国王に報告
自国に帰った二人の騎士は国王に報告していた。
「今回、我々はメイベの森に突如現れた城を偵察して来ました。
まず、城の規模ですが、とても大きい物でした。
この城よりも大きいと思われます」
「何と!そんな規模の城を建てたのか!」
ざわざわと国王の言葉に続き大臣たちも驚きの声をあげている。
そりゃそうだ。この城だって近隣の国の城に負けないぐらいの結構なデカさがある。
「報告を続けます。
その城を建てた者に会うため我々は城を訪ねました。
そして、そこで一人の少女に出会いました。
ですが、魔力を感知する特訓を受けた我々二人が気付かない程の弱い魔力でした。
城には他に気配がしませんでしたので、
城にはおそらく少女以外にはいないものと思われます。
もしかすれば、城の主は別の場所にいて
彼女がいない主の代わりに出たのかもしれないと、我々は予想しました」
「うむ、確かに我が国の優秀な騎士二人が、
気付かない程の弱い魔力を持つ者が、
その規模の城を建てるとは思えんな」
「少女は、我々を怖がっているようで、
あまり話が出来る状態ではありませんでした。
少女は扉を開けることに躊躇っている様子でしたが、
少しだけ扉を開け、少女は我々に自分の事を語ってくれました。
少女に名を聞くと、名はないと。
自分が何者か分からないと。
そして少女は最後にこう言いました。
人間だけど人間じゃない。
人間の枠から外れた者だと」
「何だ?その言葉は」
「我々も初めはどう言うことか。
理解できませんでした。
ですが、城の主が別にいる事、
少女が姿を見せなかった事から考えれば、
城の主に拾われたが、名を与えられず。
薬を盛られ、自分が何者が分からなくなり。
人間だったはずが、城の主によって
人間ではなくなってしまった。
つまり、人間の枠から外れた者。
ということだと我々は考えました。
いわば、これは少女からのメッセージなのです!
国王陛下!どうか、あの城に捕らわれている少女をお助け下さい!
その陛下の優しいお心で」
これは城から国に帰るまでの馬車の中で考えた事だった。
「なあ?アドレッド。
あの女の子、なんであんな城にいるんだろうな」
「またあの女か?
お人好しを発動させるのも大概にしろよ。
お前はすぐそうやって困っていたら助けようとする。
可愛そうなやつをほっとけない。
それはお前の良いところだが、時には切り捨てろ。
あの女だって、まだ何者か分かっていない」
アドレッドはキツイ言葉を言っているようで、
でもアドレッドの言うことは当たっている。
そう言うのは当然だ。
騎士団長という立場上、他の騎士や衛兵をまとめることもある。
国の一大事に子供を助けていたんじゃ、
騎士や衛兵は行動出来ない、国が終わる。
確か、そんな話を誰かから聞いたことがある。
「分かってる。分かってるけど、さ。
あの女の子、何か寂しそうだった。
何か凄い弱ってる声をしてた。
なあ?助けたいと思わね?
あんな弱弱しいやつ見てられねぇ……」
「はぁ……。
もう、あの女の事は考えるな。
大人しく報告書でも書いてろ」
そういって手渡してくるが、ここは馬車の中。
揺れるから文字を書くことが出来ない。
「どうやって書くんだよ」
「固いもんでも敷け。
それぐらい考えろ」
いやー、固くて敷けそうなもん何てねぇ、よな?
この馬車異様にふっかふかしてるから、
置いて書けない。
となると窓か扉だな。
「おい、まさかとは思うが窓や扉の上で書こうとか、
思ってないよな?」
「いやー、だってさ。他にねぇじゃん?
ってか、何で分かるんだよ。
お前、いつの間にそんな特技持ってたんだよ。
俺知らなかった」
一緒に騎士の任務をすることが度々あったが、
そんな特技があることをアドレッドが教えてくれたことがあっただろうか。
「はぁ…。目は口ほどにものを言う
って言葉があってな。
お前の目はキョロキョロと椅子を見てから
窓や扉を見てた。
誰だって分かるんだよ」
「へぇー、アドレッド。お前物知りだったんだな」
結構俺よりも頭がいいんだろうことは分かっていたが、
実際物知りだったようだ。
いやー、頼りがいがある。
「お前が知らなさすぎるんだ……」
はぁ………。
とアドレッドが重いため息をついた。
ため息をつくと幸せが逃げるのにな。
「ほら、これ使え」
アドレッドが渡してきたのは木の板だった。
「何でこんなもん持ってんだ?」
「備えあれば憂い無し、だ」
「なんだそりゃ」
備えあればって、板持ってても役に立つことなんて
馬車で報告書を書くときにしかないだろう。
まさか、アドレッド。
このことを予想していたのか!?
なんて恐ろしい男だ。
味方でいてくれてよかったよ…。