初めての街 2
「どう言う事か、説明して貰おうか?」
剥ぎ取りカウンターの男がギルマスを呼びに行くと、
男は私たちを奥へ呼んだ。
そして、部屋に入って第一声がこれだった。
「まあまあ、まずは座ってください。
お飲み物をお出ししますね」
部屋には、椅子に座っている男(おそらくギルマス)と、
その隣に立っている、女がいた。
フェリスはソファーに私を寝かせると、私の左に座った。
すると、フェリスは私の頭を自分の膝に乗せた。
今までこんなことしてこなかったのに…。
レイーヌは私の右、ヒルクはそのまた右に座った。
「ギルマス、この人たちだ。
買い取りの方に沢山宝石やらなんやらを持って来たのは…」
「ああ、お前は仕事の方へ戻れ」
「分かった」
ここまで案内した買い取りの男は、さっさと部屋から出て行った。
「で?お前さんらは、何なんだ?
見たことないが、他国の冒険者か?」
「いいえ、僕たちは冒険者ではありません」
フェリスが答えてくれるから、代表として話して貰おう。
「冒険者でもないのに、ダンジョンから取れる魔石や
武器・防具を手に入れたってのか?」
「ええ、まあ…」
まあ、むしゃくしゃしてたから、ダンジョンに行きました
なんて言えないわよね。
「まあ、見せてみろ。
あっちにある以外に、まだあるんだろう?」
「はい」
フェリスは、時空魔法で残りのいくつかをテーブルに出して見せた。
まだまだ、こんなにあったのね。
買い取りのテーブルは結構大きくて、
それに乗せられるだけ乗せたのに、
まだ、残ってるなんて…。
ほんと、フェリスって何者?
「こりゃあ、スゲーな。
全部質がいい。結構危険なダンジョンにでも行ってたのか?
はぁ…問題はギルドには払えるほどの金がない事だが…」
出てくる様子をジッと見ていたギルマスも、
どんどん出てくる様子を見て、目を見開いている。
「なら、今払える分だけ頂きます。
また日を改めてきますので、その時にでもお願いします」
「おいおい!この量は何なんだ?
カウンターの方にもあるんだよな!?」
「?…はい」
ありえねぇ…たった四人で?、そんな呟きがギルマスから聞こえてくる。
やっぱり、フェリスは変人だ。
規格外の強さなんだろうってことが、ギルマスの顔から伺える。
「おい、悪いことは言わねぇ。お前ら冒険者になれ」
「お断りします」
ギルマスの勧誘に、フェリスは即断った。
しかも笑顔で…。
そこで飲み物を持って来た女が、コップの置き場に困っていた。
そんな様子も気にせず、ギルマスとフェリスの会話は続いた。
「何故だ?」
「冒険者になどなりたくないからです」
フェリスの冒険者に成りたくない理由って何だろう?
冒険者ランクの上を目指せるほどの腕があるのに…。
「だから、何故だ!?」
「僕の一番は、お嬢様ですので…。
冒険者などする時間は、僕にはありません。
朝から晩まで24時間毎日、お嬢様と共にいますので…」
いや、サラッとストーカーじみた事言わないでよ…。
レイーヌとヒルクだって、呆れた顔してるわ。
「お嬢様…?」
ギルマスが視線をフェリスから私へ、私からレイーヌへ
レイーヌからヒルクへと向け、私に帰って来た。
疑わしい視線を向けてくる。
「お嬢様、ねえ…」
フェリスは私の顔を両手で包んで、隠した。
まるで渡さないと言わんばかりだ。
「もういいですよね。
僕たちはもう行きますから」
「せめて、これ見て行け」
ギルマスに手渡されたのは、『冒険者の手引き』と書かれた
一冊の分厚くもない本だった。
フェリスに冒険者を知って貰おうって魂胆が見え見えね。
どんだけ、フェリスを冒険者にしたいのよ…。
「いいえ、どれだけ冒険者を良いように言っても、
僕は冒険者になりませんから…」
ギルマスは、私をチラリと見てからフェリスに問いかけた。
「んじゃ、もしそこにいるお嬢様が、
お前に冒険者になってほしいって言ったら、
お前はどうするんだ?」
「答えは決まっているも同然です。
もちろん、冒険者になりますよ?
なんなら、冒険者と言わず、城を落とせと言われれば、
僕はお嬢様の為に、城の一つや二つ…落として見せますよ」
後半は、私の目を見つめながら言われた。
最後何て、そこら辺にいる女性なら一発で落としそうな程の
さわやかスマイルだった。
いやいや、城って…。
そんなことやらせるわけないじゃない。
反逆者になんて私、なるつもりないし…。
「はぁ…。分かった。
だが、いつでもギルドはお前たちを歓迎するぞ?
おい、こいつらに出してやれる分の金を、ギンスに渡せ。
で、何とか交換できる分だけ交換しろと伝えてくれ」
「はい」
女の人が倉庫らしき所からがっぽりと金袋を取り出した。
へぇー、意外と貰えそうね。
フェリスがテーブルに置いていたままのドロップ品を
仕舞って、私を抱えた。
女の人に連れられるままカウンターまで戻って来ると、
さっきの男が駆け寄ってきた。
「ギンス、このお金と交換できる分だけ
交換するようにってギルマスから…」
「分かった。それにしても、
これってどこのダンジョンから取って来たんだ?
この買い取り務めてから結構経つが、初めて見る物が多い。
もしかして、結構レベルの高いダンジョンから取って来たのか?」
レベルの高いダンジョン?
まあ、あの時のフェリスは
ステータスに500が掛けられていたわけだから、
強いとは思ってたけど。
「いいえ、そんなに大した強さではありませんでしたよ?
中ボスだって、あまり手こずりませんでしたし…」
「そうか…」
そんな会話をしつつ、交換して貰った。
予想通り、金袋の中身は多くて、結構貰う事が出来た。
一気にお金持ちになったわね。
でも、残りの物も交換するためにまた来なきゃいけなくなったから、
良かったのか良くなかったのか、いまいち分からないわね。




