国王とお話 3
「そうだな。魔族がいる事。
この城には魔族がいるだろう?
さっき出てきた奴だ。
他国に我が国には魔族が付いていると言えば、
我が国を敵に回そうなんて思う輩はいなくなるだろう。
それに微々たる量だが税の量が増えるな。
我が国は他国に比べると税が少ない方だからな。
後は…戦力が増えるな。
国王の命令は絶対だ。
つまり、いくら魔族とは言え、従わなければならない。我が国の所有地にいる限りはな。
魔族の戦力は素晴らしい。まあ、魔族の力を借りる時など、戦争が起こるときぐらいだ。
それ以外に頼る気はない」
ふ~ん。気に入らないわね。
何でフェリスがあなた達に力を貸さなきゃいけないの?
フェリスは私の執事なのに、私に従っているのに…。
この家を所有地に入れたい理由って、フェリスが大半じゃない。
言い換えれば、自分の身に危険が及んだ時に
助けてくれるような、手ごまが欲しいってことでしょう?
「悪いけど、利用されるなんてまっぴら御免よ。
例え、利用されるのがフェリスだとしてもね。
私はあなたの所有地には入らないわ。
話は終わりよ。フェリス、いるんでしょう?
さっさとこの人たちに、味噌汁を飲ませて追い出してちょうだい」
私は結論を出すと、ソファーから腰を上げた。
「はい」
廊下からフェリスの声が聞こえてくる。
やっぱり…、来るのが遅すぎると思ったら、
廊下でずっと話を聞いていたのね。
まあ、自分の事を話されていたら、入りずらいでしょうね。
「失礼します」
フェリスが部屋に入って来て、
二人の前に味噌汁を出す。
それを横目で見ながら扉に向かう。
「どうぞ」
国王がスプーンで味噌汁を飲んでいる。
お箸が使えないから配慮したんだろうけど、シュールね。
「フェリス、と言ったな。
お前はどう思うんだ?
自分の主が危険に晒されるのと、一時的に我が国に力を貸すのと。
どちらが良いと思う?」
国王のその問いかけを聞いて足を止めた。
「僕は……」
フェリスは悩んでいる。
お嬢様の意思はハッキリしている。
だけど、実際にお嬢様が危険に晒された時、
自分がお嬢様を守りきることが出来るのか。
そう考えれば、出来るだけ味方は多い方がいいに越したことはない。
お嬢様と自分、どちらが大切かと考えたら、もちろんお嬢様だ。
「僕は、お嬢様が大切です。
ですから、お嬢様の意思を尊重したいです。
国王陛下の提案はとても良い物なんだと思います。
ですが、お嬢様は受けない意思を、示しました。
お嬢様の意思が僕の意思です」
フェリスは国王に頭を下げた。
私は、そっと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「だそうよ。残念だったわね。
フェリスは私の意思を大切にするんですって」
「本当に良いのか?
城の主は見るからに弱い。守るための力が必要であろう?」
再度国王はフェリスに尋ねた。
でも、フェリスの答えは同じだった。
「国王陛下、もしも今の僕では力が足りない敵なのだと言うのなら、
僕はお嬢様の為に力を付けます。今以上の力を…。
それに、お嬢様を守る者は僕だけではありません。
ここにいる、僕とレイーヌさんやヒルクさんも、
お嬢様を守る為の盾となり剣となります。
その為に日々鍛えているのですから…」
フェリスはそういうと、扉近くに突っ立っていた
私に向かって歩いてきた。
そして、私の前で止まると片膝を立てて忠誠のポーズをとった。
「お嬢様の意思は僕の意思です。僕はお嬢様の命に従います。
僕の命はお嬢様の物です。
これからもお嬢様の執事でいても、よろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよ」
フェリスに答えると、ソファーに座ったままのレイーヌ、
それに扉近くに待機していたヒルクの二人までも、
私の前に来て、フェリスと同じポーズをとった。
「お嬢様、私もフェリスの意思と同じです」
「俺も、助けて貰った恩がある」
「私たちはお嬢様に命を授けて貰ったと同義なのです」
な、何?この茶番。
まさかレイーヌやヒルクまで、フェリスと同じことをするなんて…。
「レイーヌも俺も、フェリスと同じようにここに居てもいいだろうか?」
「ええ、私は、嘘はつかないわ」
「ありがとうございます、お嬢様」
まるで代表のようにフェリスが、
私の手の甲にそっとキスを落とした。
そして、三人から熱い眼差しで見つめられている。
いいえ、気のせいね。
唯こっちを見ているだけで、決して熱い眼差しとかではないわ。
いきなりパチパチと手を叩く音が聞こえてきた。
音の方へ視線を向けると、国王が拍手をしていた。
今のやり取りをずっと見られていたのかと思うと、
恥ずかしいわね。
「いやはや、見せつけられてしまったな。ネフィル」
「そうですね。陛下」
穏やかな顔で言う国王の顔が、一瞬で険しい顔になった。
「だが、どうするのだ?
我が国は手を引くが、他国は狙うぞ?
領地を掛けての戦争なんてこともあり得る」
「その時は、守ってくれるんでしょう?」
私は、目の前にいまだ片膝を着いている、三人に問いかけた。
「はい」
三人の答えは同じだった。
真剣な目だから、偽りはないんでしょう。
「だったら、何の問題もないわ。存分に暴れて、力を示せばいい」
ね?そうでしょう?
国王に問いかけると、苦笑のような顔をした。
そういう問題でもないんだが、と言いたげだ。




