国王とお話
「さあ!行きましょう!お嬢様」
レイーヌに言われて、腕を引っ張られている。
私が頑なにベッドの上から動こうとしないからだ。
「早く出発しないと、今日中に全部周れません!」
レイーヌが痛いぐらいに私の腕を引っ張って来るけど、
負けじと私も腕を引っ張るので、
何とかベッドの上に止まることが出来ている。
「お嬢様、一緒に街へ行く約束を守っては下さらないの?」
レイーヌが涙目で私を見てくる。
確かにそう言った。それは認めるけど……。
「まさか、こんな派手な服だとは思わなかったから」
と、言い訳にもなっていないことを言うと、
レイーヌはもう我慢ならないのか、
強行突破に出た。
「分かりました。そんなにベッドから出たくないと仰るなら、
お嬢様のベッドを破壊してでも一緒に街まで行って頂きます!
さすがのお嬢様でも、大切なベッドが危なければ、行くでしょう?
それに破壊して困るのはお嬢様ですからね」
ううっ……。
まさか、ベッドを人質(物質?)にされるとは思わなかったわ。
行きたくはないけど…。このままベッドをみすみすレイーヌに壊されるなんて…。
こんなことなら『主の加護』をレイーヌに使うんじゃなかったわ。
「さあ、どうしますか?」
レイーヌが勝ち誇ったような顔で見てくる。
フェリスやヒルクに目線を送っても、
二人はレイーヌ側につくみたいで、
私と目線を合わせようとしない。
どうするべきか悩んでいると、
城に近づく気配を感じた。
「残念だけどレイーヌ。
どうやら、お客が来たらしいわよ。
それも大人数の」
十人以上の来客が来る予定はない。
騎士が来た時以上に嫌な予感がする。
「フェリス、誰か分かる?」
「はい、どうやら騎士お二人とネフィル様がご一緒のようです。
もしかすれば、国王でも来たかもしれませんね」
はあ?国王?何でそんな迷惑の塊でしかない人を連れてくるのよ…。
「フェリス、追い返してくれる?」
「いいえ、お嬢様。
ここは国王に会うべきだと思います。
不敬罪にでもなって牢屋行きなど、
お嬢様もお嫌でしょう?」
全く…。仕方ないから、さっさと相手をして
早急に帰って貰うことにしましょう。
「分かったわ。国王と宮廷魔法使いだけ、
この城に入れるようにしましょう。
その他は、きっと騎士とかでしょうから。
ついてくる必要はないはずよ」
さて、宮廷魔法使いの時と同じ、客間にしましょうか。
「ヒルク、客を客間に案内して、
そしたら、私を迎えに来て、
それ以降は客間で待機ね。
レイーヌは私と一緒に客の相手をするわよ。
フェリスは紅茶を用意したら、
私が呼んだらすぐ来れるように待機しといて。
でも、待機場所は隣の部屋ね」
「「「はい!」」」
三人は息を合わせたように返事をすると、
ヒルクは玄関へ、レイーヌは一端自分の部屋へ、
フェリスは紅茶の用意に向かった。
「あ、ゴスロリのままだった……。
まあ、いいか。どうせ街に行くんだから」
しばらくして、レイーヌが私の部屋にやってきて、
ヒルクも部屋にやってくる。
どうやら、客間に国王と宮廷魔法使いだけを
呼ぶことが出来たらしい。
客間までフェリスに抱えて貰う。
客間の前まではフェリスに抱えて貰ったけど、
客間の中まではヒルクに抱えて貰う。
「そんな悲しそうな顔をしないでよ、フェリス。
国王には奥の手を隠しておきたいの。
出来るだけね」
そう告げて、ヒルクに部屋の中へ連れて行って貰う。
客間に入ると、既に部屋にいた二人の人物から視線を向けられる。
一人はもちろん宮廷魔法使い。
そして、その隣に座るもう一人の男。おそらくこの男が国王でしょう。
視線も気にせず、ソファーに降ろして貰う。
レイーヌは私の隣に座り、ヒルクは客間の扉の近くに立つ。
「お久しぶりです、お嬢様。
また、お話しできてうれしいです」
宮廷魔法使いが、笑顔でこちらを見てくるのを
チラリと見て国王へ視線を向ける。
すると、国王は私を穴が空くほどジッと見ていた。
「陛下、陛下」
宮廷魔法使いが国王を突く。
国王はハッとしたように目をパチパチとさせた。
「余はドレン王国4代目国王、ベルドラスという。
正式な名前は長いのだが、皆にはこう名乗っている。
貴女には、愛称のベルと呼んでほしい」
やっぱり国王だったのね。
何が目的でやって来たのか…。
「失礼します」
そこでフェリスが紅茶を持って入ってきた。
紅茶を四人分机に置くとさっさと部屋から出て行った。
「あっそ、それで?何の用なの。国王」
「お嬢様!」
レイーヌが私の物言いに驚いている。
フェリスが不敬罪がどうのこうのと言っていたけど、
国王に捕まる気はない。
だからと言って、畏まるようなこともしない。
「余は貴女と話をする為に来た。
つもりだったが……」
目の前に置かれた紅茶を一口口にすると、美味いと一言いった。
国王がそんな不用心に出された飲み物を飲んでもいいの?
私を品定めするかのように上から下まで眺め見ている。
国王の視線が気持ち悪い。
「まさか、城の主がこのような可愛らしい、
幼女だとは思っていなかったぞ」
よ、幼女……?私が?幼女?
「陛下!それは失礼です!
確かにお嬢様は可愛らしい顔立ちをしておいでですし、
御召し物によっていつも以上に
可愛らしさが引き立っておりますが…。」
宮廷魔法使いも私を可愛らしい可愛らしいと言う。
この人たちの目はいったいどうなっているの!?
身の危険を感じるわ。
「どうだ?余の娘になる気はないか?」
国王は真剣な顔で言ってきた。
どうやら、国王の頭は可笑しいらしい。
「はあ?嫌よ。
娘がほしいなら、そこら辺にいる魔物の雌でも
娘にすればいいわ。
それより、本題へ移りましょう」
私が話を本題へ移らそうとしているのを
気にした様子もなく国王は言った。
「まあ、考えておいてくれ。余はいたって真剣だからな」
いつの間にか、国王の私に向けてくる視線が、
竜王の物と似た様な視線に感じるのはきっと気のせいね。




