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1年に1度のチートスキルで何とか異世界で生きようと思います……。  作者: 夜虎
第1章 異世界転移 『誕生日おめでとう』スキル
5/80

城の主?ーanother sideー

コンコン


ノックをしてしばらく待ってみるが、扉は開かない。

誰もいねぇのか?

不在だったらどうすりゃいいんだ?

この城の主が帰るまで待つのか?


だったら、こんな早起きする必要もなかったじゃねぇか。


コンコン

もう一度ノックしてみても開く様子がない。



「誰もいねぇのか?」


「もしかすると今はどこか別の場所にいるのかもな」


「そっか」



俺が思っていたことをアドレッドも思ったみたいだ。


コンコンコンコンコンコン



「おい、調子に乗るな」


「いや、いねぇんじゃ、いくら叩いても大丈夫だろ」



アドレッドが俺に注意してくるけど、俺は気にしねぇ。

この扉は良く響くからおもしれーんだよな!

こんなに響くなんてどういう構造してんだろう?



「そういうもんでもないだろ。

もしかすると、人間だからと無視しているのかもしれないぞ」


「ああ、そうかもな。

じゃあ! あと一回!」



と俺が最後の一回扉を叩こうとした所で丁度扉が開いた。

俺は叩こうとした姿勢で前に倒れそうになった。



「何?」


「うわあぁ!!」



すると不愉快そうな声が聞こえてきた。

まさか、出てくるとは……。

機嫌損ねたから、俺死ぬかも。

さらば、俺。さらば、世界。



「だから言っただろう」


「いや~、まさか何回叩いても出てこない相手が、

急に出てくるとは思わねぇじゃん?」



アドレッドが呆れたように溜息をつく。

いやー。不覚不覚。



「はぁ……。それよりも話をするんじゃないのか?」


「そうだった!」



そういや、殺されると思ったんだが、

何もしてこねぇな。

扉を開けた本人を見た。

えっ……。扉が少ししか開いていないため、

恰好は分からなかったが、目の位置からして低いな。

この身長だと、子供じゃないのか?



「えっと、こいつ?」



俺は指を指してアドレッドに訊く。



「そうじゃないのか? 出てきたんだ」



確かに。そうだな。

でも、こんな子供が一瞬で城を造ったとは到底思えない。

魔族の中には子供のような容姿をした、

強力な魔力を持つ者がいるのかもしれない。



「えっとー、君がこの城を造ったの?」



なるべく相手を怒らせないように、優しく優しく。

気分は近所の優しいお兄さんだ。



「何?」



目の前の子供は、ものすっごく俺を睨んでいる気がするが、

きっと気のせいだ。

だって、近所のお兄さんのように話しかけたんだぞ?

そこはニッコリ笑顔でお兄ちゃん。と言葉が返される場面だろう!



「えー、そう返してくるか……。

どうすりゃいいんだ、アドレッド」



いやー、"何?"と返されるとは思わなかった。

予想外の返され方をされたから、

この後はアドレッドにバトンタッチだ。


しっかし、今の質問だったらYESかNOで返せるくね?

アドレッドに窺うように顔を見た。



「俺に訊くな。お前は何者だ」



アドレッドは自分に訊くなと言っておきながら、

俺の代わりに訊いてくれる。

まったく、優しい奴だよ。

たまに勘違いされるけどな。

主に顔と話し方で。



「帰って」



女の子(声からして女だと思った)は帰ってと言って答えてくれない。

ほんとにどうすりゃいいんだ?

話が進まない。



「いいや、話さないつもりなら城まで横行して貰う」


「いやいやいやいや!」



アドレッド! そんな話聞いてないんですけど!?

それに強制的は可哀そうじゃないか?



「まあまあ、落ち着けよ。アドレッド。

子供だぜ? ここは優しく対応するのが大人ってもんだろう?」



女の子に聞こえないように、

アドレッドにさり気なく言う俺って紳士っぽくね?

今の俺は絶対カッコいいだろう!

自身を持って言える!



「帰って」



アドレッドが同行させると言っても、帰ってと言い続ける女の子。

参ったな……。


困っていると、無言で扉が閉められた。



「あっ、おい!」



バンバン

来た時よりも強めに扉を叩く。



「どうする? アドレッド。

今日は帰るか?」


「いや、帰った所でどうするんだ?

あいつのことも城のことも、俺たちは何も聞き出せていない」



確かに、城の中に女の子がいたとしか分かっていない。

あ、あと城がデカい!



「そうだよなー。

そうだ! アドレッド協力してくれ」



俺はいい案を思いついた。

それをアドレッドにも伝える。



「これで本当に出てくるのか?」


「やってみようぜ? 案外成功するかもしれねぇだろ?」



この作戦は結構自信がある。

俺は深呼吸した。



「なあ、この壁登れねぇかな?」



少し棒読みっぽいが大丈夫だろう。

気にしない気にしない。



「この壁か?」



それに引き替えアドレッドは、すらすらと話しているように言う。

さすが! 俺よりも演技が上手い。



「おっ! ここ足掛けられそうじゃね?」


「ああ、行けそうだな」



じゃあ、登ってみるか! 

と言う前に城の中から声が聞こえた。



「やめて……。入って来ないで」



よっしゃあ! 見事に成功したぜ!

何か言いたげなアドレッドを手で制した。



「じゃあ、もう一度ここを開けてくれないか?」



焦らない。焦らない。

さっきよりも優しく優しく。

語りかけるように…………。



「いや」


「せめて正体だけでも教えてくれないか?

名前は? 種族は?」


「……」



それでも女の子は何も言わない。

言えないのか?

やっぱり魔族なのか?

でも、声の雰囲気からして、

魔族とは到底思えないんだがな……。


どちらかというと、か弱いイメージがある。



「言ったら帰るの?」


「ああ、大人しく帰るよ。約束する」



言ってくれるのか?

そう思っていたが、

女の子からは予想もしていなかった言葉を聞かされた。



「だから、人間は嫌いなのよ」


「えっ?」



一瞬聞き間違えかと思った。

もしくは空耳。

それぐらい女の子の声は弱弱しかった。



「人間は嫌い。傲慢で驕傲で、平気で嘘をつく。

相手の事なんて考えもしない。


あなただってそう。

私が話すのを嫌がっているというのに、

無視して無理矢理訊き出そうとする。

優しげに言ってるけど、言わなきゃ城に連行。

身勝手で自分勝手。


言うからもう二度と来ないで。

……私に名前なんてない。

正体とか種族とか分からない。

人間だけど人間じゃない」



何を言っているんだ?

人間だけど人間じゃない?

本当に魔族だとでも言うのか?



「人間の枠を外れた者。


言う事は言ったわ。

早く帰って……」



これ以上は話を聞けそうにない。

俺とアドレッドは頷き合い、立ち去ることにした。


歩きながらさっきの会話を思い出す。



「なあ、アドレッド。

あいつのことどう思う?」


「不思議な奴だと思うな。

危険ではないだろう。

強ければ気配で分かる。


お前だって相手が魔族だったら、気配で分かるだろう?

倒れそうになることは有り得ない」



ハハハ、確かにそうだな。

ってことは、ますますあの城の意味が分からない。



「あの子、あんなデカい城で一人で住むのか?」


「そうじゃないのか?

あんなに弱い魔力は初めてだ。

普通の子供でも多少持っている魔力を、

あいつからは全然感じない。


城の中からは他に魔力の気配はない。

いるとしてもさっきの女のような弱い魔力を持っている奴だ」



でも、魔力があんなに弱い奴は稀だろう。

誰でも生まれながらに多少の違いはあっても、

感知できる量の魔力は持っているものだ。



「そうだよな~。

魔力を感知する特訓を受けた俺らでも、

感知出来ねぇほどの少ない魔力、か。

それであんなデカい城なんて住めねぇだろ。


生活に必要な道具は全て魔力がいるからな。

掃除にも洗濯にも料理にも」



歴史の人物たちが開発しまくった結果、

日常生活はほぼ魔道具と魔力に頼りきったものになっている。



「あの子、親とかいねぇのかな」



そう呟いた俺にアドレッドは釘を刺した。



「おい、言っとくがあいつに情を抱くな。

まだ、あいつについて詳しいことは分かってないんだ」


「分かってる。忠告ありがとな」



アドレッドの好意から来た言葉を俺はぼんやりを聞いていた。

なんかあの女の子、気になるんだよな……。

これはきっと俺のお人よしから来るものなんだろうけど。




次回:新キャラ登場!こうご期待!

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