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1年に1度のチートスキルで何とか異世界で生きようと思います……。  作者: 夜虎
第1章 異世界転移 『誕生日おめでとう』スキル
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人間の訪問

「来客だ」



何でだろう?

ここは真ん中の塔の最上階。

なのに家のすぐ近くに二人の人間(?)がいることが分かる。

そして、それらが近づいてくるのも分かる。


コンコン


ノックの音がここまで届くはずがないのに、

すぐ近くで鳴っているように聞こえる。

居留守することにしよう。

出るのは面倒だし。

関わるのだって嫌だ。


コンコン


分かった分かった!2回もノックしなくていいわよ!

このまま居留守してたら、どんどんノックしてきそう。


私はのっそり身体を起こして枕を抱えて寝室を出た。

ここから玄関まで遠いんだから、

しばらく待ってよ。


コンコンコンコンコンコン


あーもう! うるさい!!

やっと玄関に着いたときには、

うるさいくらいにドンドン鳴らされていた。


ここの扉を叩く音、良く響くんだから!

まったく、近所迷惑なのを考えなさいよ。

まあ、付近に家とか無いんだけど。


ゆっくりと扉を開けた。



「何?」


「うわあぁ!!」



扉は数センチしか開けてないため、

相手からは片目ぐらいしか見えてないだろう。

こっちからは相手の姿が丸見えだ。


相手は恰好からしてどこかの国の騎士。

腰に剣を携えていることからも明らかだ。


不機嫌なのが伝わるように睨みながら言うと、

何故か盛大に驚かれた。

その騎士様がその拍子に、前に倒れそうになっていた。

情けな。

今のは完璧に私のせいではないわ。



「だから言っただろう」



呆れたようにもう一人の騎士が言う。



「いや~、まさか何回叩いても出てこない相手が、

急に出てくるとは思わねぇじゃん?」



頼むから二人で会話をしないでほしい。

さっさとこの場から立ち去ってくれないかしら。



「はぁ……。それよりも話をするんじゃないのか?」


「そうだった!

えっと、こいつ?」



失礼な。人を指さすなんて。

絶対に私を下に見ているわね。



「そうじゃないのか? 出てきたんだ」


「えっとー、君がこの城を造ったの?」



何か優しげに話しかけてくるけど、ムカつく。

私を完全に子ども扱いしてる。

初めて会った人には敬意を持って接するって、

親に習わなかったのかしら?


バカは嫌いだわ。



「何?」


「えー、そう返してくるか……。

どうすりゃいいんだ、アドレッド」


「俺に訊くな。お前は何者だ」



私はさらに睨んで言ったつもりだったけど、

相手は困り顔をしただけで、特に何も反応されなかった。

ますます、ムカつく。

それにもう一人の騎士が睨んでくる。



「帰って」



このまま話しててもこのおバカさん達には通じないようだし、

これ以上話をするのも面倒だわ。


それに、騎士と関わるといいことなさそう。

騎士って王様に繋がってるだろうし。



「いいや、話さないつもりなら、城まで同行して貰う。

何処の国でも、騎士の業務質問には、

答えなくてはならない決まりなのは知っているだろう」



はぁ……。何が業務質問よ。

こんな所に来る暇があるのなら、

もっと騎士らしい仕事をしていたらいいじゃない。

そしたら、私も寝れるのだし。



「いやいやいやいや!

まあまあ、落ち着けよアドレッド。

子供だぜ? ここは優しく対応するのが大人ってもんだろう?」



そしてこの騎士は、また私を子供扱いした。

いいや、この騎士様方とは仲良くなれそうもないし。



「帰って」



私は扉を閉めて、鍵も掛けた。

そのまま扉に背を向けて騎士たちが帰るのを待つ。



「あっ、おい!」



バンバン


騎士が扉を叩く音が聞こえる。

気にしない、だってどうせ開けられないわ。

きっと、諦めて帰るでしょう。



「なあ、この壁登れねぇかな?」



何を言ってるのかしら? 

そんなこと出来ないに決まってるじゃない。

本当にバカなのね。

ここまでバカと呆れるわ。



「この壁か?」


「おっ! ここ足掛けられそうじゃね?」



えっ、まさか……。



「ああ、行けそうだな」



はあ! 何でそこまでするの!?

私の世界に入って来ないでよ!



「止めて……。入って来ないで」


「じゃあ、もう一度ここを開けてくれないか?」



またそうやって優しげに声を掛けてくる。

似てる。私を騙して裏切ったアイツに似てる。

頭の中に現れるアイツ。



「いや」


「せめて正体だけでも教えてくれないか?

名前は? 種族は?」


「……」



もういいから関わらないでよ。

もう私は一人で生きていくから。

誰とも関わりたくない……。



「言ったら帰るの?」


「ああ、大人しく帰るよ。約束する」



はぁ……。人間の約束なんて信じられない。

けど、答えないと帰ってくれないだろうし。

正直このまま居座られても邪魔でしかない。


別に言った所で不利になるわけじゃない。

言わなければ私の睡眠に支障が出る。

言うしかないみたいね。



「だから、人間は嫌いなのよ」



私の口からは言うはずのなかった言葉が出てきた。

私の中で知らない何かが渦巻いた。



「えっ?」


「人間は嫌い。傲慢で驕傲で、平気で嘘をつく。

相手の事なんて考えもしない」



口が勝手に動く。

私の中の形にならない何かが、イライラした感情が、

さっさと苦しいのを吐き出せと言ってくる。

人に言ったら、困らせる。

それを知りながら、私は思いの丈を言葉にする。



「あなただってそう。

私が話すのを嫌がっているというのに、

無視して無理矢理訊き出そうとする。

優しげに言ってるけど、言わなきゃ城に連行。

身勝手で自分勝手。


言うからもう二度と来ないで。

……私に名前なんてない。

正体とか種族とか分からない。

人間だけど人間じゃない」



神の言葉を借りるなら、



「人間の枠を外れた者。


言う事は言ったわ。

早く帰って……」



ゆっくりと去っていく足音が聞こえてくる。

私は静かに息を吐いて寝室に戻った。

私の何かは静まった。


嫌な記憶を思い出したわ。

早く寝て忘れたい。

冷たいベッドの上で、

私は持っていた枕を抱きしめて眠った。




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