フェリスのいない城
コンコン
「お嬢様?入ってもよろしいですか?」
この声はレイーヌ…?
何でレイーヌが?
「いいわ、入って」
「失礼します…」
気怠げに身体を起こして扉の方を見てみると
レイーヌはどこか心配そうな顔をしている。
「何?」
「実はどこにもフェリスが見当たらなくて…。
お嬢様の部屋にもいないとなると、
何処に行ったんでしょう?」
フェリス…?
そっか、出て行ったんだ…私が言ったから。
「ああ、フェリスなら出て行ったわよ。
この家から」
「えっ!何故ですか?」
途端に驚き、不安そうな顔をするレイーヌ。
「私が出て行くように言ったからよ」
「何があったんですか?」
「私、お腹が減ったわ。
何か食糧庫から持って来て」
あからさまに話を逸らすと、レイーヌはそれ以上何も言わなくなった。
「分かりました…。何か食べれそうなものを持って来ますね」
そう言ってレイーヌは私の部屋から去って行った。
私はレイーヌが戻ってくるまで
ずっと、窓の外を見ていた。
コンコン
「お嬢様、食べられそうな物を持って来ました」
「入って」
レイーヌが持って来たカートの上には沢山の皿と
その皿に乗った沢山の料理(?)だった。
「何を持って来たの?」
「えっと…お嬢様の故郷の食材ばかりで
どれが食べられる物なのか分からなかったので、
とりあえず近くにあるものを…」
そっか、レイーヌとおやつを食べながら話をしていた時に聞いたんだった。
どうやら、私の家の食糧庫に入っている食糧は全て前の世界の物らしい。
自分たちの食べていた物よりも美味しいとレイーヌが語っていたのを思い出した。
レイーヌが持って来た食べ物はパンや豆腐、リンゴなどの果実などだった。
まあ、食べれるけど少し物足りない感はあるわね。
「レイーヌ、ヒルクを呼んで来て」
「はい」
レイーヌが出て行ったあと、レイーヌの持って来た食べ物の中で
食べれるものを選んだ。
ブドウ5粒、ミカン半分程を食べた。
リンゴやメロンは切られていなかったから食べられなかった。
レイーヌがヒルクを呼び寝室に3人が揃った。
いつも控える時のように二人は入り口の扉近くに立っていた。
「ヒルク、フェリスはこの城から出て行ったわ」
「!何故ですか!?」
「私が出て行けと言ったからよ」
さっきレイーヌとしたやり取りをヒルクとした。
言葉を続けようとするヒルクをレイーヌが手で制した。
「いつまでフェリスは帰ってこないのでしょうか?」
「知らないわ。
けど、フェリスがいないことで色々あなた達に仕事が周って来るわ。
二人とも、私は3食のうちの1食でも抜くと、
魔力切れを起こすかもしれないの」
「えっ!普段お嬢様は魔力を使うことをしていないはずでは?」
よほど不思議なのか、ヒルクが訊いてきた。
「私は元々魔力が普通の人よりも少ないの。
だから、3食食べなきゃいけないのよ。
でも、料理を作るフェリスがいないから
さっきみたいに食べれそうな物を持って来て」
「分かりました」
レイーヌが頷いて答える。
「それから、ヒルクは私がどこかへ行くとき。
フェリスがやっていたように私の足になって」
「お嬢様、俺はフェリスみたいに身体強化が出来るわけではないので
遠い距離は無理ですよ?」
「私の行動範囲で一番遠いのはお風呂場ね。
そこまで行ける?」
「何とか頑張ります」
こちらも何とかなりそう。
他に問題は…なさそうね。
「じゃあ、これからは生活リズムを変えるから。
朝はレイーヌが起こしに来て。
その時に朝食も一緒に持って来て。
朝の散歩はなし。
その後、私は寝るから自由にしていて。
お昼の時間になったら、
レイーヌが昼食を持って私を起こしに来て。
その後も、寝るから。
夕飯の時間になったら昼食の時と同じように。
お風呂の用意は二人で相談して。
あ、夕食の後すぐ入りたいから、昼食の後にさっさと準備してね。
お風呂まではヒルクが連れて行って。
いつものように髪はレイーヌが洗って。
寝室まではまたヒルクが運んで。
その後私は寝る。何か質問は?」
「本当にそんな生活を送るつもりですか?」
レイーヌが私に問いかけてきた。
レイーヌの表情には怒りが見える。
「ええ、文句があるなら出て行く?」
レイーヌが出て行くとなったら、ヒルクもレイーヌについて行くだろう。
そして私はこの家で一人。
レイーヌに私一人をここに残すほどの冷酷さはない。
私はレイーヌの優しさにつけこんだ。
「…いいえ」
そして、それはヒルクも同じ。
二人は顔を見合わせると困ったような顔をしながらも
何も言わない。
「分かったなら、もう部屋から出て行っていいわよ」
レイーヌは持って来たカートを持ってヒルクと共に部屋から出て行った。
今日はお風呂入らなくていいや。
もう、寝よう。
今は眠ってしまいたい。




