カインとアドレッド
今朝、突如国の外れにあるメイベの森の大半が消え失せ、
大きな城が建ったという。
その知らせを聞いた国王が俺らに命令を出した。
「城の正体を暴け!
もしも、危害を加えるような輩なら斬れ」
俺はこの国の騎士団長カインだ。
それに副団長のアドレッドも共に命令を受けたらしい。
俺らは国の外れのメイベの森を訪れることとなった。
「なあ? アドレッド。メイベの森が一瞬で城になったって本当なのか?」
森に向かう途中の馬車の中、俺が半信半疑に思っていることを訊くと、アドレッドは頷いて答えた。
「ああ、住民が今朝薬草を採っていると、森の木々が消え、
一瞬にして城が建ったという。
証言人が二人いたから、頭が可笑しいわけではないようだ」
「ふ~ん。正体は別にどうでもいいけど、
早朝に命令を出されるのは嫌だよな」
お蔭で早起きして何度もあくびが出る。
そして、朝からアドレッドに支度が遅いと怒られる始末。
「まあ、そう言うな。
これも国の民の為、国王陛下の為」
「へいへい」
しばらく歩いていると、噂の城が見えた。
とんでもないデカさの城で、縦にも横にも大きく、とても一瞬にして出来たとは思えない。
王様の城がちっぽけに感じるぜ。
「こりゃ、スゲー」
「ほう……」
一瞬で城を造り上げる時点で人間業じゃない。
恐らく魔力で造ったんだろう。
それにこの規模となると並みの魔力ではない。
この規模の城を一瞬で造り上げてしまうほどの、
魔力を持った魔族がいるというのか。
「こりゃ、そうとうヤバイやつがいるかもな。
俺らだけで大丈夫か?
最悪、魔王でも出てきそうだ」
石造りの城で、屋根などの配色がほぼ黒のため、
どうしても不気味な雰囲気が漂う城に見える。
「今回は偵察が主だ。
危ないと思ってもこの場は引こう」
「ああ、そうだな。国王陛下も身の安全を第一にと仰ってたし。
はぁ……、何か供え物でも持って来りゃ、平和的話し合いで終わらねぇかな?」
話し合いが一番!
何事もお互いを知ることから、だよな!
まあ、魔族には大抵通じないが。
いや、もしかしたら俺みたいに、平和的話し合いが好きな魔族もいるかも知れねぇ。
「はぁ……それで?
お前は恐らく魔族であろう輩の好物を知ってるのか?」
「いや、知らねぇよ?」
無理だな。
しかも、今は供え物の代わりになりそうな物も持っていない。
俺は剣を振ることしか出来ない、所謂脳筋という種類の人間だ。
魔族の情報なんて知っている筈がない。
そんな風に頭を使うことなんてないからな!
「とりあえず、ノックしてみるか!」
「ああ」
俺は何も考えずに能天気に扉を叩いた。
コンコン