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レイーヌの条件

目に涙を貯めたままのレイーヌに

私は嘘臭い笑みを浮かべて問いかけた。


「そう、レイーヌ。

あなた、何もかも私に捧げることが出来る?」


「!!それで彼を助けることが出来るのですか!?」


驚き、見上げてこちらを見るレイーヌ。

目に涙を浮かべたまま、

縋るように見つめてくるレイーヌ


「簡単に言うけど、何もかもと言うことは

その命だって私のために差し出せるか訊いてるのよ?


そうね。条件を飲み、あなた達二人が私に忠誠を誓うと言うなら

彼の傷を治すし、あなた達に住む所もあげる。

食べる物にも困らないような生活を二人にあげる。

まあ、その代り自由はないのだけど……。


どう?私にあなた達の全てを捧げて

忠誠を誓える?」


レイーヌは黙って頷いて答えた。

あら?そんなに簡単に決めてしまっていいのかしら?


「それで彼の命が助かるのなら…」


私の心の問いかけに答えるようにレイーヌは言った。


「分かった。フェリス、傷を治す魔法とか出来ないの?」


レイーヌ自身が決めたのなら、

構わないわよね?


「あるにはありますが、

僕の治癒魔法でどこまで治せるか……」


「まあ、しないよりマシでしょ。

彼にやってあげて」


さて、フェリスの魔法でどこまで治るのかしらね。

私に仕えてるわけだし。

私は知っておかなきゃいけないわよね?


フェリスは彼の前に膝を着き

魔法をかけ始めた。

それをジッと見つめるレイーヌ。


「ねぇ、あなたエルフの姫よね」


「何故それが!?」


顔を勢いよくあげて見てくるレイーヌ。


「あなたの中に大きい力を感じる。

そんな力があるのにどうして彼に使わないの?


確か、エルフは妖精と並ぶくらいに

魔力の扱いに長けていたはずよ。

フェリスよりも治癒魔法だって質はいいはず」


確かに、魔族は魔力の扱いに優れているというけど、

それは魔の中で言えばの話。

魔族よりエルフや妖精の方がよっぽど魔力を扱うことができる。


「それは…」


言い渋る女。

何か訳ありだねこれは。

でもここで遠慮して訊かない私じゃない。


「私に忠誠を誓うのよね?

主の質問に答えないつもり?

今ここでフェリスに止めさせることも出来るのよ?」


って言ってもまだ条件も何も言っていないんだけどね…。

そんなことにも気づかず、レイーヌは慌てて答えた。


「い、言います!

私は確かにエルフの王家の血筋です。

でも、20歳頃には自然と王家の力が使えるはずですが

私はこの年になっても力が使えませんでした。

それに魔法も。

なので王位継承は弟が。


ですから姫と言っても正当な後継者と言うわけではありません」


エルフの寿命は人間より長い。

20歳でもエルフでは子供だ。


へぇ~、面倒くさそう。

王家の力ねー。

王族も大変ってことね。


「理由は分からないの?」


「確かな理由は分かりません。

魔力が足りない、呪われた、エルフの神に認められなかった、

など色々言われましたが……」


ふ~ん。

王家の力には興味があるなー。

どうにかして使えるようにならないのかな。


「お嬢様、出来るだけのことはしました。

軽い傷なら治っています。

ですが、深い傷は完全には治っていません」


彼の前で治癒魔法を使っていたフェリスが

立ち上がった。

赤の他人なのに治療しきれなかった事が悔しいらしい。

苦虫を噛み潰したような表情をしている。


「そう」


「ありがとうございます!フェリス様!」


彼女が頭を下げて感謝し、フェリスが

いいえ、と微笑んでいる横で

私は意地悪気に笑い、彼女に条件を出した。


「さあ、傷は治した。

こちらは全てとは言っていないから、

約束は成立しているわよね?」


「はい……。確かにあなたは全ての傷を治すとは

仰いませんでした」


今気付いたのか、ハッと思い出したように言うレイーヌ。

まあ、正直フェリスが魔法使えるんなら

何とかなるかなって思ってたから

ちょっと予想外だったんだけど…。


「それに、まだ治らないと決まったわけじゃない」


「えっ、それはどういう……?」


彼女は意味が分からないと言うように

私の顔を伺うように訊いてくる。


「私は条件を飲めって言ったわね」


「はい、確かに」


私は予め考えていた条件をレイーヌに出す。


「その条件は

私に忠誠を誓うと共に私に一切攻撃しないし、私の命令に従う事。

まあ、忠誠を誓うなら主人に攻撃しないとか命令に従うなんて

当たり前なんだけど……。


そして、あなたたち二人にスキルを掛ける。

そのスキルの結果次第で決める」


レイーヌの顔が暗く沈んだ。


「では、結果次第では彼の傷を治して貰えず

住む場所も食糧もない、と?」


「ええ、そういうこと」


う~ん。この結果どうなるかは

私も予想できないからな~。


「分かりました。そのスキルを掛けてください!」


決心したようにレイーヌが言った。

何が起きるかもどんなものなのかも分かっていない癖に……。


「いいのね?何が起きるか分からないわよ?」


もう一度訊いてみる。

ラストチャンスだと言わんばかりに。


「はい…。彼が治る可能性があるのなら…」


「『主の加護』発動」


さてさて、まずはレイーヌから。

『99』

ああ、惜しいな。


100まであと一歩及ばず…。

でも、ここまで数値が上がるのも凄いものよね。

魔獣を倒したことと彼の傷を治したこと、

自分の身の上話をした事で上がったのね。

1ぐらいは誤差ってことで許すとして……。


もう一人。この人はダメね。

『30』

まあ、最初から突っかかって来てたし。

当然と言えば当然ね。


「そうね。レイーヌ、あなたはギリギリ合格」


「本当ですか!?彼は……?」


「残念ね、不合格。


あなただけならいいよ。

住む所も食べる物もあげる」


まあ、結構予想してた。

彼は100超えないであろう事は。


「そ、そんな!

お願いします!彼も何とか……」


私だけが頼りだと言うように

縋ってくるレイーヌ。

レイーヌのコロコロと変わる表情が面白い。


「言ったはずよ?

条件を飲み、忠誠を誓うなら、と。


まずは条件をクリアしないとダメなのよ。

傷は命に係わるから先にしてあげただけ」


レイーヌは黙り込んでしまった。

なんとも不服そうな顔。


「さあ、その男はさっさとそこら辺にでも捨ててしまいなさい。

あなたの新しい家に行きましょう?」


信用できない者を近くには置けない。

さあ、レイーヌはどう答えるのかしら?


「いいえ、私はあなたとは行きません!」


レイーヌは私の目を見つめ、

キッパリと断った。


「あら?何故?

私とくれば温かい食事やベッドがあるのよ?

とっても大きいお風呂だってある。

断る理由がどこにあると言うの?」


まさに今の私の言葉は悪魔の囁き。

私の言葉にレイーヌはハッキリとした口調で答えた。


「住居も食事も用意していただけると

言って下さった事にはとても感謝しております。

ですが、彼をここでおいて行くぐらいなら…。

私もここで彼と一生を終えます」


最後は力なく答えるレイーヌ。


へぇー。そこまで彼の事を思えるのね。

気に入った。


お姫様なら大切に育てられたはず、

裕福な暮らしをしていた者ほど、

失った後にどれだけその暮らしが良かったのか知る。


レイーヌはどれだけ私の言う暮らしが良い物か分かる。

でも、裕福な暮らしより彼を選んだ。

どんな誘惑よりも慕っている彼を選ぶ。

そんなレイーヌが気に入った。


「いいよ、レイーヌ。

彼もあなたと一緒に来ればいい」


「えっ、どういう心境の変化なの?

変わりに私に何か求めるの?」


あーあ、疑われてる。

まあ、それも当然よね。


「そういうこと」


レイーヌの顔が困惑した。

ほんと、レイーヌって面白いのね。


「あなたの条件に足すの。

私に忠誠を誓う、そして彼を監視する。


彼が私に近づかないように

ずっと監視するの。

その代り、彼は忠誠を誓う必要はない。

彼の分の食事はないし、彼の分の部屋もない。


そうね。あなたの部屋は自由に使ってもらって構わない。

だって、あなたの部屋だもの。

あなたに出された分の食事もあなたの物よ」


レイーヌの顔が驚きに目を見開いている。

どうやらレイーヌは私の言葉の意味を理解したようだ。

頭の回転が早くてよかった。


「分かったら、行くわよ。

フェリス、運んで。

もう少し散歩したいから、ゆっくり歩いてね」


「はい、お嬢様」


フェリスに抱き上げられる。


「は、はい!」


レイーヌはヒルクの肩を担ぎ、

ヒルクの足を引きずった状態で

もたつきながらついてきた。


湖は魔獣の襲来で荒れ、

魔獣の死体がその場に残された。


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