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1年に1度のチートスキルで何とか異世界で生きようと思います……。  作者: 夜虎
第1章 異世界転移 『誕生日おめでとう』スキル
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誕生日プレゼント(城と食糧)

この小説をお読みいただきありがとうございます!

また、目を開くとそこは森だった。

今までの空間はなんだったのか。

木が鬱蒼と生え、小鳥の囀りが聞こえてくる。



「今のは夢? 今も夢?」



突然の変わりように頭が追い付かず、

さっきまでの出来事について考えていると、

声のようなものが聞こえてきた。



『神から誕生日プレゼントが届きました。』



頭に直接響く声。男性のものとも女性のものとも判断できない。

機械の声じゃないけど、棒読みで文章を読んでいるような声。



「何?」



目の前に広がるウィンドウのようなものに『プレゼント』と書かれてある。

自然とその文字が消え、ボックスのようなものが出てきた。

ボックスの蓋が開いて中から文字が出てくる。



「……?『誕生日おめでとう』(ハッピーバースディ)スキル?」



何? このおめでたい上に意味が分からないスキル。

説明とかないわけ?


そんなことを心の中で思っていると、

私の質問に答えるようにまた頭に声が響いてきた。



『このスキルは1年に1度。

誕生日の日にだけ発動することが出来るスキルです。

このスキルを使えば神が認め得る範囲で、

何でも3つ願いを叶えることが出来ます。』



神が認める範囲。

絶対死にたいって願っても叶えられないんだろうな。

だって、あの|神(女)は私の哀れな人生を見たいらしいし。

いっそ、この世界を丸ごと滅ぼして存在を消したいけど、

滅ぼしてと言っても叶えられない気がする。


神は簡単に死なない身体にすると言った。

あの神だったら、私が死んだ瞬間、蘇生でもさせられそう。

生きなきゃダメなのかな……?


私がグダグダと考えていると、また頭の中にあの声が聞こえた。



『早速、願いを叶えますか?』



そうか、ここが夢じゃなければ、

よりにもよって誕生日の日にこの世界に来てしまったのか。

正直今はいろんなことで頭がいっぱいいっぱいだ。


だから考えもせずにこんな願いを口に出したんだろう。



「死にたい」



死ねば何もかもが楽なのだ。

生きる必要がなく、何も考える必要がなく、

誰かと接する必要もなく、自分の心に惑わされることもなく……。


私がそう言うとしばらくして答えが返ってきた。



『神がその願いを認めませんでした。他の願いをどうぞ。』



やっぱり死なせてはくれないのね。

どんな願いだったらいいのか。



「刃物が欲しい」



もちろん、自害するためのものだ。

直接死ぬような願いが無理なら、刃物なら叶うかもしれない。

そう思ったけれど……。



『神がその願いを認めませんでした。他の願いをどうぞ。』



はぁ……。やっぱりダメみたいね。

私は神から、全然使えないクズスキルを貰ってしまったらしい。

まあ、私の願いが悪いのね。



「とりあえず、大きい家」



ここが夢ではないのなら、この世界で生きるということになる。

森にいるままじゃ嫌だから、家が欲しい。

折角何でも叶うなら、小さい家よりも大きい家がいいわ。

広い部屋でゆったりと過ごしたい。


この願いなら大丈夫よね?

もしこの願いが叶えられなかったら、

本当にクズスキルだわ。



『神がその願いを認めました。願いを叶えます。』



視野に入っている木々は全て消え、

そこには大きい家(?)が出来ていた。

私はその家を見て、その場でしばらく固まっていた。



「これ、家?」



そこには大層立派な西洋風の城が建っていた。

普通に建てようと思えば兆なんて軽々と超える規模だろう。

こんな大きいのは望んでないのに……。



「大きい家とは言ったけど」



城が欲しければ城と言うのに。

最も、欲しいわけじゃないけれど、

寧ろこんなスケールの家なんていらない。



『1つ目の願いを叶えました。2つ目の願いをどうぞ。』



私が少し放心している間にも、

頭の中に響く声は話を進めていく。



「一生分の食糧」



やっぱり次に大事なのは食べる物よね。

いちいち買い物とか面倒だし、一生分って言っておけば大丈夫でしょう。

それに、私は今何も持っていない。

お金も持っていなければ、お金になりそうな物も持っていない。


よく着ている丈の長いワンピース一枚で、この世界に来た。

最悪の異世界スタートだ。


食糧は出来れば好物のみがいい。

願った後に考えても、もう遅いけれど……。



『神がその願いを認めました。願いを叶えます。』


「出てこないけど?」



城は目の前に出てきたけど、食糧は出てこない。

実は一生分の食糧は分割で支払われます、とかないわよね。

それだと、食糧が間に合わない場合は困る。


それとも、2つ目からは対価がいるなんてことないわよね。

私はそんな話聞いてないわ。

これで、何か払え。なんて言われても絶対何も出さない。

まあ、私が差し出せるものなんて、自分の命ぐらいなものだけれど……。



『食糧庫の方に自動的に送られました。』


「そう」



どうやら対価はないらしい。

それにしても、自動とは便利なものだ。

めんどくさがりには嬉しい機能だわ。

城はいらないけれどね!



『2つ目の願いを叶えました。3つ目の願いをどうぞ。』



特に願いたいことはなくなった。

食べる物があるならお金もいらない。

贅沢をするつもりもないし、娯楽もいらない。

食べる時以外は寝るつもりだから。



「今はないわ」


『今日中であればあと1つ願いを叶えることが出来ます。』



頭に響く声が聞こえなくなった。

とりあえず、ここに突っ立ているわけにはいかないから、

大きい家(?)の中に入ってみることにした。


この家は丁度東西南北に4つの塔がある。

その4つの塔の真ん中に一番大きな5つ目の塔が立っている。

4つの塔はそれぞれ隣り合う塔と渡り廊下で繋がっている。

5つ目の塔は、他の4つの塔全てと渡り廊下で繋がっている。

5つ目の塔に行くときは4つの塔のどれかから行く必要があるみたいだ。


まったく、何処の国の王様なのか。

私は命を狙われるような事は、

一度だってしたことがないというのに。


何とも移動が面倒くさそうな家だ。

なんでこんな面倒くさい家を造ったんだか。神というやつは。

寧ろ、ワンルームお風呂トイレ付き、でいいと思う。


早速中を見物してみる。

1つの塔自体がとても大きいので、部屋の数が多すぎる。

恐らく、1つの塔に20ぐらいはあるだろう。

1つの塔の部屋全てを見るだけで、体力のない私は疲れる。

こんな数の部屋があったって、使い道がない上に掃除が面倒だ。



「そうか、掃除しなきゃいけないんだ。

私の家だから……」



面倒くさい。

どうせ、神が勝手にくれた人生だし。

適当に過ごしたんでいいよね?

適当に寝て、適当に食べて。

掃除しない、洗濯しない、料理もしない。

そう考えると、楽だ。


食糧庫はどこだろう?

広すぎてどこに何があるか分からない。


いっか。何も食べなきゃ死ぬんだから。

死んだらそれで。

死ににくい身体がどこまで死ににくいのか分からないから、

餓死で死ねるのか分からないけど……。


真ん中の塔の最上階。

そこにある他の部屋よりも明らかに広い部屋。

おそらく寝室だろう。

飾り気など全くなく、ただのキングサイズのベッドが置いてあるだけだ。


この大きすぎる家を3分の1程見終わったので疲れた。

体力のない私にしては頑張った。

私の身体はベッドに沈んだ。

そのまま瞼を閉じてベッドの感触を楽しむ。


いつの間にか私の意識は落ちていった。




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