散歩の誘い、綺麗な湖
まったく、あの騎士たちにも困ったものだ。
あ、もう二度と来ないように念押ししておくの忘れてた。
まあいっか。
また来たら問答無用でフェリスに追い払って貰おう。
「はぁ…。部屋まで歩くのしんどいのに…」
まったく、私を寝させないつもりなの?
ヘトヘトになって私は寝室まで辿り着いた。
もう、この城ではフェリスの横抱きが必須になりそう。
私はベッドにダイブして布団を被って寝た。
コンコン
「お嬢様、昼食のお時間です。
起きておられますか?」
フェリスの声で目が覚めた。
けど、起きる気になれなくて掛け布団を深く被る。
「お嬢様?失礼しますね」
扉の開く音がして、フェリスの近づいてくる足音が聞こえる。
「お嬢様、起きてください。
昼食は食べて頂かないと、
また、あのように苦しむお嬢様を見たくはありません」
フェリスがそっと起きるように催促する。
私も苦しいのは懲り懲りだから
起きることにした。
「おはようございます!お嬢様」
「……おはよう、昼食は何?」
フェリスの側にあったカートを見てみる。
すると、フェリスが昼食の蓋を開けて
説明をした。
「はい、和食がお好きと聞いておりましたので、
今日はお蕎麦を用意してみました。
お嬢様は、お蕎麦はお好きですか?」
「嫌いじゃない」
フェリスは、良かった。と言って微笑んだ。
私はベッドの上で体を起こして、
蕎麦を一口食べてみた。
「美味しい」
「本当ですか!?良かったです!」
何言ってるの。
作ったのフェリスでしょ。
美味しいと言っただけでこの喜びよう。
何なの?そんなに頑張って作ったもんでもないでしょうに。
「お嬢様、午後は何かされますか?」
「寝る」
食事の時以外は元々寝る予定だったし、
特にしなければいけないこともない。
「そうですか……」
「何?何かあるの?」
「いえ、気にしないでください…」
明らかにフェリスはガッカリしている。
私の目の前で暗い顔されると気になる。
「言いなさい、聞くだけなら聞いてあげる」
「いえ……」
何でこんな所で渋るのよ。
こっちはもっと気になるじゃない。
「ねぇ、フェリスは私の何?」
「えっ、僕はお嬢様の……?」
何で考える必要があるの?
答えは一つしかないじゃない。
「執事でしょ。
だったら、主が訊くことに答えなさい」
「はい…。
その、もし午後、お嬢様にご予定がなければ、
僕と、その……」
俯いて遠慮気味に言うフェリスにイライラする。
「何?ハッキリ物を言いなさい」
ウジウジして男らしくない。
女の前で泣くわ、ウジウジしてハッキリしないわ。
フェリスは女なの?
「僕と一緒に、お散歩にでも行きませんか?」
何?散歩?
ウジウジしてた理由が散歩?
何でそんな面倒くさいことしなきゃいけないの?
散歩するぐらいなら寝た方とっても有意義よ。
「お嬢様は、室内に居てばかりですから、
少しは外に出て日光を浴びた方が良いかと…。
ですが、お嬢様がお休みになると言うのでしたら、
僕は他の事をします」
はぁ…。
まあ、日光を浴びないと健康に悪いって言うし、
適度に浴びる日光はお肌にいいって言うし。
フェリスが悲しそうな顔するし。
「仕方ないわね。
少し歩けば寝やすいだろうし、いいよ」
「本当ですか!!ありがとうございます!」
フェリスの暗い顔が一遍し、
パァァっと明るくなった。
「ただし、数分だけよ。
帰るって言ったら帰るから」
「はい!」
私は半分程蕎麦を食べて昼食が終わった。
「お嬢様、早速行きましょう!」
フェリスは、私の食べた蕎麦を片付けて戻ってきた。
いつになくニコニコとしているフェリス。
そんなに外が好きなのね。
私は室内の方が好きだけど。
「フェリス運んで」
「はい!お嬢様!」
フェリスは軽々と私を抱き上げ
部屋を出て廊下を進む。
しばらく歩いていると
玄関についた。
そしてフェリスが私を抱いたまま
器用に扉を開けた。
暗い雰囲気の城に明るい光が差し込む。
「眩しい…」
「はい、良いお天気です!」
今日は雲一つない快晴。
曇りの時に散歩するって言えばよかったかも。
私がスキルで家を出したせいで
大半が消えてしまった森。
そこをゆっくりと歩くフェリス。
「お嬢様、この近くに小さな湖があるんですよ?
見に行きませんか?」
「へぇー、そう。
フェリスが行きたいなら行ってもいいよ」
?何でフェリスは湖があることを知ってるんだろう。
私はいつもフェリスを見ていたわけじゃないから分からないけど…。
「何で湖があるって知ってるの?」
「実はお嬢様がお眠りになられている間に
城の周りを少し徘徊しました。
城の周りにお嬢様の脅威になる者がいないか、
散歩する前に見ておこうと思いまして…。
湖はその時に見つけました」
何気ないように言うフェリスだけど、
そこまでするなんて、よっぽど暇なのか、
それとも心配性なのか。
ただの変人なのか。
「そう」
しばらく歩いていると森の開けた所に
太陽の光が反射してキラキラと輝いている湖があった。
「ふ~ん、結構綺麗なのね」
「はい、実はこの湖をお嬢様に
見せたい思いもありました。
お嬢様が気に入れば良いと」
ふ~ん、まあまあ綺麗なんじゃない?
「こういうの嫌いじゃない」
「それは良かったです」
フェリスの肩を叩いて降ろして貰うと、
湖の周りを少し歩いてみる。
フェリスは私の後ろをついて歩いている。
水は底が見えるぐらい、澄んでいて綺麗だ。
魚も住んでいるし、ここは空気もいい。
「フェリス」
「はい」
「またここに来てもいいよ」
「はい!」
水面に浮かぶフェリスの顔はどこか満足げだった。
フェリスに横抱きをしてもらいその場を後にしようとした時、
湖に悲鳴が木霊した。




