神に強制転生させられる
誕生日、それは私にとって忘れられない日となった。
このとき、私の人生で同時に2度も転機が訪れた。
「いらっしゃ~い!
哀れな人間」
私は目を開けると、真っ白な何もない空間にいた。
そこにはニコリと顔に笑みを浮かばせながらも、蔑むように見てくる女がいた。
足を組み上から目線で見てくる姿はまさに女王様だ。
「ふふっ、あなたの人生。
見ていてとっても愉快だったわ!」
女は女王様らしく口に手を当て笑った。
私は女に鼻で笑われたようだ。
少しこの女の言葉が癪に触らないわけではないけど、
今この女を怒鳴る気力がない。
「……」
「あら、だんまり? 可愛くないわねぇ。
まあ、いいわ。私があなたに新しい人生をあげる」
「いらない」
新しい人生?
これは夢じゃないの?
「あなたの意思なんて関係ないわ~。
私ね、あなたの人生を見て暇潰ししてたのよ。
でもー、そろそろ飽きてきちゃったのよね~。
だからー、もっと面白おかしい人生にしてあげようと思ったわけよ~。
私頑張っちゃうわ!」
まるでアニメに出てくるギャルのようなハイトーンで話す女。
話している内容だってデタラメだ。
私の人生を見ていたとか、もっと面白おかしい人生にするとか。
神でもなければそんなこと出来るわけがない。
それに、私はもう……。
「いらない。
私はもう、生きたくない……」
そうだ。もう生きなくていい。
死んじゃってもいいわよね。
もう、十分に生きた……。
「私は神よ。
あなたが死ぬと言うのなら、不死に出来る。
そうね。あなたに人間を滅ぼすほどの力だってあげられる。
どう? 面白そうじゃない?」
「別に……」
そんなのいらない。
不死なんていらない、力なんていらない。
私が望むのは、"死"ただ一つだけ。
「そう、欲のない子だこと。
そういう子、私嫌いよ」
女神は組んでいる足を組み換え、鋭い眼差しで私を見ている。
「別に好かれなくていい」
この人何なんだろう。
私の前に勝手に現れて嫌いだと言うこの人は。
人じゃないのか……。
「そうだわ! 確か、今日はあなたの誕生日だったわね。
良いこと思いついちゃった!
あなたに特別なものをプレゼントしてあげるわ。
だって今日はあなたの誕生日だものね!」
楽しい企画でも考えているように言う女に、
私は一言即答した。
「いらない」
誕生日、そっか。
今日は私の誕生日……。
「転生して、直ぐに死なれたら嫌だから、なかなか死なない身体にしてあげる!
それにどうせだもの。
美人に生まれ変わりたいわよね~?
力を与えて世界を滅ぼされたんじゃ面白くないから、
人間らしく、無力にすればいいわ!
だからって、無知って言うのも可哀そうだし~
すこ~しだけ知識をあげるわ!」
「……」
もう、私は女の話なんてロクに聞いていなかった。
いや、聞けなかったという方が正しい。
何だか意識がハッキリしない。
耳が何かに塞がれているみたいに聞き辛くなってきた。
「でも人間よりも死ににくい身体だもの。
人間じゃないわね。
人間の枠から外れた者になるわね。
ふふふっ、面白くなりそう!」
そこで私の意識が途切れた。