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産み落とされた宿命の双子  作者: 金烏玉兎
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プロローグ

 2317年、とある公園に一冊の教科書が落ちていた。

 そこにはこう記されていた。

『2097~2289年、新創成戦争、ある双子がきっかけに起きたこの世界を作り替えた戦争。

 戦争の発端は不明であるが、2087~2093年の第三次世界大戦後混乱していた世界中を巻き込んだ。

 この新創成戦争により、英・米・独・露・中・豪・日・伯・埃・非の10ヵ国のみとなった。

 この双子は皇嘉門二条夏喬«なつたか»、皇嘉門二条冬喬«ふゆたか»兄弟のことで、兄夏喬は三次大戦で無敵の第一大隊の隊長であり、弟冬喬は日本軍最高戦略監督と言い、全ての作戦を考えた男である。

 2人の英雄、武将と知将は世界で最も有名な双子である。』

 この内容は世界の一般常識となっているが、物語には続きがある。

 これからの物語は、時を経て戦い続ける双子の話である。


 プロローグ

 

「おはようございます。夏喬様。」

 2317年東京某所、暦が旧式に変わり、4月、つまり卯月の頃。

 内閣が天皇に政を返還し、都が京都に戻って1週間が過ぎた頃。

「あぁ、おはよう謡、調。いい朝だね、2人とも」

 2人の女の子に笑顔で声を掛けたのは、白い短髪の青年。

「恐れながら夏喬様、今は午の刻故、既に昼です。」

「恐れながら夏喬様、夏喬様が望むのであれば私たち従者は、夏喬様が目覚めるまでいつまでも待っております故……」

 謡と調は夏喬の前で膝を地面につけ、夏喬の返答を待つ。

 夏喬は侍女から服を受け取り着替え始める。

「そう易々と寝ていられる身分でもないさ。そんなことしてると"冬"みたいになっちゃうしね」

 盛大に笑い始める夏喬であったが、そこには何かを隠してる様子もあった。

 一方で、顔を伏せたままの謡と調の顔には、"冬"という単語を聞き、顔が暗くなった。

「今日は何かあったっけ? 奏」

 膝をつく謡と調の後ろに立つ1人の女性に問い掛けた。

「夏、今日は集まって貰った同士たちに挨拶をしてもらうと昨日も言いましたよね」

 主であるはずの夏喬に叱責する奏。

「すまんすまん。思い出した、なにも覚えて無いことと、なにも考えてないことを」

 その言葉に奏は呆れ顔になり、謡と調、更に侍女までもが微笑む。

 そんな空気の中、いきなり空気が凍りついた。

 夏喬が突然不適に微笑んだからだ。

 謡、調は驚愕した。侍女は腰を抜かしている。

 夏喬の側に居るようになって、こんなにも悪しき凍てつく感覚を感じたことは無かったからだ。

「さぁ、皆のところに行こうか」

 とたんに緊張が解ける。

「夏、突然怖い顔するの止めてくれない」

「すまない」

 夏喬、奏、謡、調の4人は歩き出した。

 大勢の同士が集まる大広間にへと。

 そして、4人はアジトの大広間に着く。

 京都である男のケースが割れたとき、夏喬を強烈な目眩が襲った。

 立っているのもギリギリの状態を見て彼の同士はざわつき始める。

「すまない。心配は要らないよ。ただの目眩だ。

さぁ、皆の前に来たのは他でもないよ。俺の夢を紡ぎ直す為だ!」

 夏喬は皆に、声高らかに宣言した。

「始めよう。俺たちの物語を! 俺の名は、皇嘉門二条夏喬、新世界を創る男だ」

 夏喬が宣言し終わったとき、男は、皇嘉門二条夏喬は目覚めた。


 同じく、2317年、こちらは京都某所、暦が旧式に変わり、4月、つまり卯月の頃。

 内閣が天皇に政を返還し、都が京都に戻って1週間が過ぎた頃。

「ねえ冬喬、貴方が眠ってる間に、京都が都に変わったのよ」

 暗い部屋の中、黒い長髪の男が入ったケースの前。

 緑の液に全身浸かった男の前で1人の女性が呟いた。

 冬喬と呼ばれた男には、一切の反応はない。

「あぁ実は冬喬、貴方の夢に協力する人が何人も現れたの」

 冬喬に反応は無いものの女性は報告を続ける。

「2097年から始まった、新たなる創成戦争、その時の貴方の物語の続きを」

 女性の声が聞こえ、眠っているはずの冬喬、その瞼が少し動いた。

 ケースに手を触れながら女性は呟き続ける。

「あら、起きそうね、物語の続きを紡ぎたくなったのかしら?」

 女性は冬喬を眺めながら言う。

「どうでもいい話だけど、夏喬君が生きてたんだって」

 今度は冬喬に明確な反応があった。

 体に沿ってぶら下がっている2つの腕と手が軽く動いた。

 軽くだが、確実に何かを握り潰すかの如く。

「あの戦争の後、貴方に殺られた筈なのにどうやって生きていたんだろうね」

 冬喬は反応し続ける。今度は、からだ全身が動き始めた。

 東京である男が不適な笑みをしたとき、冬喬に繋がっている酸素ホースが外れた。

「何かに反応したのかしら。ホースが外れちゃったわ」

 そして、今度は冬喬が入っていたケースが割れ、中の液体が漏れ始めた。

「我らが主が再び目を醒ますわ。やっと、やっと今日目覚めるわ」

 東京である男が声高らかに宣言し終わったとき、ケースの中の液体が全て無くなり、彼の足が地面についた。ゆっくりだがしっかりと目を開き、彼は女性を見てこう言った。

「久しいね、私の妻、加具夜«かぐや»よ」

 艶やかな声で女性の名前を呼んだとき、男は、皇嘉門二条冬喬は目を醒ました。


 これは、時を経てなお戦い続ける双子の物語。

 武芸に秀でた兄である夏喬と、知略に秀でた弟である冬喬。

 その2人が新たな時代を創るための戦争をまた始める物語。

『物語に終わりはない、例え人が死んだとしてもその夢を繋ぐ者さえ居るのならば』

 かつてとある男が、自分の息子に息子たちに言った言葉だ。

 

「俺の夢は終わっていない」

「私の夢は終わっていない」


「新しい世界を創り、戦争の争いの無い世界を創り出す夢は」

「世界を創り、常に争いが起き、狂った世界を創り出す夢は」


「だから手を貸して欲しい。今生きる友を守るために、共に生きるために」

「だから力を貸せ。君の力が今の私に必要だ。世界を掻き回すために」


 2人は正反対だった。

 正義感が強く、人々の前に立ち引っ張って行くカリスマ性を持つ兄。

 不義感が強く、人々の後ろに立ち動かしていくカリスマ性を持つ弟。

 身体は動くが頭が動かない兄。

 頭は動くが身体が動かない弟。

 故に、双子と言えども異なる道を歩むこの者たちは、光と闇を映し出していた。

金烏玉兎ことtartaros&seleneです。

この小説はフィクションです。

恐らく、第三次世界大戦は起きません。

新創成戦争も起きません。

そんなことを願っております。

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