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鬼子母神  作者: 神無 乃愛
24/25

四の十


 それが覆されるのは、翌日だ。

 普段であれば朝早くから動くはずの愛が、出てこなかった。

「愛は如如何(いかが)した?」

「政宗様が無体を働きまして、身動きがとれませぬ」

 さらりと喜多が言うが、それもどうなのだ。


 昼過ぎに起きてきた愛は義に懇願した。「政宗に側室を」と。

「……何故(なにゆえ)

「わたくしの身が保ちませぬ」

 初の女子(おなご)にどこまで盛った。その言葉を義は飲み込んだ。

「そなたの侍女あたりで数名考えておけ」

「お義母様の若い侍女にもお声を」

 そちらが本題だったのだろう。いつまでも跡継ぎがいないというのを、悪しざまに言う家臣どもも抑えられる。

「わたくしも毎日このような状態で人前に出たくありません」

 義と愛。二人の侍女が愛に(あわれ)みの生差しを向けてしまったのは、仕方がないことである。


 そして、二人の側室が政宗にあてがわれた。不服そうな顔をしていたが、喜多と義、そして愛の三人で納得させた。

 その二人こそが新造(しんぞう)の方と飯坂(いいさか)の局である。


 未だ騒動の収まらぬ、天正十四年の出来事だった。



 翌年、太閤(たいこう)となった豊臣秀吉(とよとみひでよし)から惣無事令(そうぶじれい)が発せられた。

 各大名の私闘を禁じたのだ。



 それを意に介する様子もなく、政宗はすべての怒りをぶつけるがごとく、戦へとのめり込んでいく。


 政宗は天下統一を夢見ているわけではない。政宗が目指すものが、義には分からなくなっていた。


新造の方、飯坂の局……二人とも政宗の側室で、新造の方が政宗の長子、秀宗(ひでむね)を産んだと言われている。実は同一人物という説も。今回は二人は別人で、一人は義付きの侍女、もう一人は愛付きの侍女だったが、側室になったことにした。

惣無事令……時の太閤、豊臣秀吉が発令したとされるもの。「俺が天下を取った。だから、あとは戦すんじゃねぇ(意訳)」という名の命令。

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