表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼子母神  作者: 神無 乃愛
19/25

四の五


 相馬に痛手を。それだけを主軸に置いた戦は、華々しさなどなくあっさりと終わった。


 和睦には愛の父親がたったという。もしかしたら、それも織り込み済みなのかもしれない。勝ちで終わらせるための戦。そう思えた。

 この戦を機に、政宗と輝宗には側室の話が方々から聞こえてきた。輝宗は「要らぬ」と答えたらしいが、政宗はそう、言えなかったという。


 理由は、愛との不仲説だ。


 そんな兄を不憫に思ったのか、竺丸が嫁取りをすると言い出した。

「其方元服すらしておらぬのに」

 珍しく皆が揃い、腹芸の一つもなく過ごそうと思っていたのだが。

「だって、父上もそろそろだと」

「……うむ」

 早くて翌年を想定していた輝宗と義は慌てた。

「私だって皆の役に立ちたいのです!」

 その一言が決め手となり、竺丸は元服して名を改めた。名前は伊達小次郎政道と名乗ることになる。そして小次郎とともに、時宗丸も名を改める。藤五郎成実(とうごろうしねさげ)へと。


 そんな折、義光から二人へ鷹狩の誘いが来た。小次郎は嫁取りのことがあるからと辞退し、政宗だけが行くことになった。


 この時嬉しい話を、政宗は持ち帰ってきた。義光の嫡男の話――こちらは夫人に似て穏やかな性格だという――それから、正室である大崎夫人がもう一人女児を出産したと。

「従弟も大変喜んでいたのでおりました」

「左様か。めでたきことじゃ」


 後日、義光から届いた文には、喜びが記されていた。

――鷹狩の最中だというのに、政宗が歌を詠み、祝福を

「恋しさは秋ぞまされる千とせ山の あこやの末に木隠(こがく)れの月」

 そしてその歌への返歌には

「恋しくば尋ね来よかし千年山 あこやの松に木隠るる月」

 これを義光の正室、大崎夫人がいたく喜び、姫の名前を「千年」へと――

 読んでいるだけで、笑みが増す。政宗にとっても、幼い従妹の誕生は嬉しかったに違いない。政宗の妹は産まれて間もなく他界したのだ。

――「千年」という名は不吉ゆえ、同じ山でも出羽の名山「御駒山」から名を採り、「お駒」とした――

「ふふっ。兄上もげんを担ぐのですね」

「お義母様?」

 その文を共にいた愛に見せた。

「お義母様は祝いの連歌会へ行かれるのですか?」

 愛が気になったのはそこらしい。

「わたくしが行く頃には終わっておりますわよ。祝いの品を送るに留めましょう」

「はい。この姫はわたくしにとっても義従妹になりますし」


 この連歌会は人が集まらず中止となったというのを、これもまた義光からの便りで知ることとなった。


 不吉な。そう思ったが、それこそげんを担ぐ兄たちを笑えない。

 その考えを頭から追いやった。


これでおおよその主要人物が出揃いました。

あ、祝いの歌に関しては実話のようです。そして連歌会の話も。

参考は最上義光歴史館HP http://mogamiyoshiaki.jp/?p=log&l=103062

の駒姫の回です。

これ見る限り、義光と政宗ってそこまで不仲じゃないよね? ということから政宗と小次郎を行き来させてみました。


一か所、「義光」の名前が「輝宗」になっていました。やば(-_-;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ