四の四
前回切るところを間違えました。
取り急ぎUPします。
戦前、政宗が義のところへ立ち寄った。
「此度の戦、田村が出てくる前に終わらせます」
相馬の家は愛の母親の実家だ。だからこそ、敢えて口にしたのだろう。義から愛に伝えることを前提に。
「今の時期でなくとも、とは思うたがの」
「背後は未だ分かりませぬが、あの一件の裏に田村がいてもおかしくはないのです」
その後の調べで、愛の乳母は相馬の家とも繋がりがあったことが分かったらしい。
愛が田村に戻れば、相馬から婿を取らせればいい。そう考えてもおかしくはないと。それが、今回戦を仕掛けるもう一つの要因になっているということだ。
「そこまで言うならば、わたくしは何も言わぬ。華々しい戦果など要らぬ。無事の挨拶がよい」
「はい。留守の間、愛と竺丸をよろしくお願いします」
「本人に言えばよかろう」
そうからかえば、政宗の顔が真っ赤になった。
「い……言えるのでしたら、とっくに言っております! では!」
来た時と打って変わって、どしどしと音をたてて戻っていった。
「聞いておったか、愛」
「……はい」
こちらも消え入りそうな声で答えてきた。己たちにはなかった初々しい夫婦ぶりである。
「わたくしは、我が君の無事でも祈るか」
二人にあてつけられた義は、そのまま輝宗のところへ向かった。
「此度の戦は、父の代より続く動乱の流れ」
既に軍議が始まっていたようだ。おそらくは政宗が戻り次第始まったのだろう。
夫と我が子の無事を。そして、伊達家家臣の無事を。
それだけを祈りつつ、義は部屋で雲を見つめていた。