表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼子母神  作者: 神無 乃愛
15/25

四の一

 梵天丸から名を改め、政宗は翌年、祝言をあげることになる。

 名を(めご)。政宗の一つ下の少女だ。この縁談を取り付けてきたのは、もちろん輝宗で、あろうことか「政宗と愛の間に産まれた二人目以降の子供に田村の家を継がせる」という約束までして。

 頭が痛くなる、というのはこのことだ。

 救いなのは、愛の父親である清顕(きよあき)が政宗をたいそう気に入っているということだろうか。そして、何故か輝宗と清顕は馬が合うのだ。


 問題は、政宗と愛の間だ。この時政宗は十三、愛は十二だ。子を成すには早すぎるし、どう見ても険悪なのだ。

「東の方様、田村御前(たむらごぜん)がいらっしゃいました」

「左様か」

 すぐに入るよう、促した。


「失礼いたします、お義母様」

 嫁いですぐに、義は愛に「義母」と呼ぶよう言った。愛はあっさりとそれを守ったのだ。

「そなたに聞きたいことがあった故な」

「わたくしに、でございますか?」

「左様。其方、もしも伊達と田村の間で戦が起きたら、如何する?」

 愛とその乳母が凍りついた。


「……わ……分かりませぬ」

「左様か。それを聞くに、不肖の子は未だ其方が認められる(おのこ)ではないということじゃな」

 あれほど話し合えと言ったのに。それを無視して竺丸や家臣たちと稽古三昧。頭が痛くなるというものだ。

「その口ぶりから察するに、お義母様は選ばれたのですか?」

 怯えながらも、愛は義の目を見据えた。「鬼姫」と呼ばれた義を見据える女は少ない。その心意気を義は称賛に値すると思った。

「そうじゃの。わたくしの場合は、婚儀の日に決めた。伊達のために死力を尽くすと。そのうえで兄にも協力すると」

 何度伊達と最上の間で戦が起きようとも、この身を挺して戦を止める。それが義の決意だ。

「わたくしも、そこまで強く……」

「ならずともよい。其方のやり方で政宗と田村を支えればよいのじゃ。

 同じようなことを愛がやったら、政宗は嘆くはずだ。

政宗のつけた縁談の条件は「気が強すぎないこと。それでいてしっかりした女子」だったはずである。どんな理想を持っているのかと、義と喜多で説教したものだ。

「これより其方の侍女になる喜多じゃ。政宗の乳母を務め上げた女子じゃ」

「喜多と申します。田村御前様、よろしゅうお願いいたします」

「……え?」

 伊達のしきたりである、乳母を侍女にするという話を愛にすれば、ついてきた乳母が怒り出した。人質ではないのか、と。

「そこまで言わぬ。喜多の弟二人はいずれも我が君と政宗の側近。戦の話もあっさり拾うぞ」

「お義母様に必要ないのですか?」

「喜多ほど気の利く侍女もおらぬ。しきたり故、仕方あるまい」

 仕方あるまい。三春から嫁いできたばかりの愛へつけるにはもってこいだ。

「左様でございましたか。愛姫様、ここは喜多殿に侍女になっていただきましょう」

「え?」

「代わりに、殿たちと同じように、東の方様と愛姫様ご両人につく侍女ということでよろしいかと」

 乳母は何かを悟ったらしい。部屋に戻れば愛にも説明するはずだ。

「わたくしは構わぬ」

「わかり、ました」

「其方も知っておろうが、あの子の右目は天然痘でやられた。それを気味悪がる女子(おなご)もおる。それゆえ、頑ななのかもしれぬな」

 まずは二人の間にあるわだかまりを解くことだ。子供はそれからでいい。


 そう申し付けると、二人は喜多を連れて部屋を出た。


 次は政宗への説教だ。


話の都合上、説教は書きません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ