嘘は得意です
セルヴァさんの役柄はなんと聖騎士さまだったらしい。シュウさんがわたしの安否を確かめるふりをしながら大まかなことを小声で教えてくれた。
<祝福の子>の他に唯一金を纏うことを許された国にただ一人の聖なる騎士。ちなみに他の騎士との違いは聖剣に選ばれたか選ばれないか、らしい。聖剣がなんなのかは気になるところだけど後回しだ。もしかしてゲームでありがちな誰にも抜けない剣ってヤツだろうか。やばい、ワクワクするね。
ともかく、八年前に百年ぶりとなる聖剣に選ばれし聖騎士さまになったというセルヴァさんはなんていうか、とても取っ付きにくい人だった。
「<死神>、異国の娘を連れて買い物とはずいぶん洒落たものだなあ? 城では男色じゃないかとまで噂されるおまえが」
ニヤニヤと唇の端に嫌な笑みを浮かべながら、毒を吐く。皮肉屋というより、典型的ないじめっこなかおりがぷんぷんする。
この際シュウさんホモ疑惑とか死神とか厨二心くすぐる呼び方とかは無視しようと思う。ちょっとわたしもツッコミが追いつかないんだ。
シュウさんはその言葉に露骨に嫌そうに顔を顰めた。なにがそんなに嫌だったかなんて考えるまでもない。男色疑惑の果てにたどり着いたのが、わたしが相手ってことに違いない。わたしが相手だと勘違いされるのが嫌だっていうのはよく分かるけどさ、本人を前にそんなに露骨に嫌がることはないよね? 仮にそう思ってても「そんなことありませんよ」くらいに留めておくのが礼儀ってものだよね?
「保護者だと言っています。こんな年端のいかない娘に手を出すほど女に困ってはいません」
「いえ、もう十六ですけど」
まだまだ子どもだという自覚はあるけど、年端もいかないってほど幼くはない。こちらでの成人がいくつなのかは知らないけど、十六ってそんなに幼くもないだろう。
「は?」
「え?」
シュウさんがぐりんとあたしを見下ろす。フードの下から見えるその目はいっぱいに見開かれ、不気味と言えば不気味だ。ていうか、やっぱりこの格好って怪しすぎない? ものすごく今更だけど。
「じゅう、ろく?」
「そうですよ。まあ一か月前になったばかりですけど」
両親ともに家には帰って来れなかったけど電話をくれたし、棗は駅前のお高いケーキ屋さんでチーズケーキを、穂高は可愛いネックレスをくれたし、皐月はお皿洗い券と肩たたき券をくれた。幼馴染(女)はいかがわしい本をわざわざ郵便で送りつけ、穂高に見つかって一週間ほど柏木家侵入(隣家に住む彼女はなぜか毎回玄関ではなく家の窓から侵入してくる)禁止令が出ていた。幼馴染(男)は実用的なシャーペンをくれた。別に手抜きと言いたいわけではないが、ここ何年か奴のプレゼントはシャーペンである。
そうか、まだ一ヶ月しか経っていないのか。こちらに来てからいろいろあったせいでもう一年くらい経っている気がしてた。そうだよね、こっちにきてまだ一週間とちょっとだもん…………え、短期間にわたし馴染みすぎじゃない?
自分の適応能力の高さ……といえば聞こえはいいけど、言ってみれば図太さに戦くわたしにシュウさんが追い打ちをかける。
「……冗談でしょう」
「失礼ですね! 正真正銘十六歳ですよ!」
むっとして言い返すと、シュウさんは何故か頭を抱えてしまった。ぶつぶつとあーでもないこーでもないと呻いている。
ほんとに失礼だな。そんなに幼く見えたか。言っとくけどわたしがチビなわけじゃないからね! こっちの人たちが大きいんだからね! だいたいこちらの世界はみんな彫の深い顔立ちだから、日本人顔ののっぺりしたわたしの年齢は掴みづらいんだ。東洋人の年齢は分かりづらいって言われるくらいだし。ちなみにわたしから見た感じではラディは同い年か少し上くらい、シュウさんは二十代、セルヴァさんも二十代に見える。やっぱり顔立ちが違うと正確な年齢は掴みづらいから誤差三、四歳くらいあるかもしれない。
「おい、異国の娘」
「へ?」
異国の娘? わたしのこと? 異国といえば異国だけど、世界を超えても異国とか範囲広すぎやしませんかね。
少しおどおどして振り返る。これでわたしのことじゃなかったら自意識過剰すぎて、恥ずかしいんですけど。
「おまえ、出身は?」
わたしのことだったらしい。ちらりとシュウさんを見上げればまだ唸っている。……そろそろ立ち直ってよ。わたしどうすればいいのさ。たしかに言葉が通じないんじゃ異国の娘だと思われても仕方ないけどさ。この国の事情も知らないのに異国事情について深く突っ込まれたら対応できないよ?
すぐに答えないわたしに少し訝しげに眉を寄せながら答えを促してくるから、慌てて頭を働かせた。
この手のタイプははぐらかすと躍起になって真相を知ろうとするタイプだ。間違いない。小学校のときのクラスメイトにこういうヤツいたもん。いじめっ子だけど寂しがり屋。それを人はギャップという、らしい。こんなギャップちっとも萌えないが。
それはともかく、こういうタイプにははぐらかすより、真実を織り交ぜつつ嘘を言うのが一番いい。ここでラディの存在を知られちゃったらマズイことくらい分かる。肩書きが(捨てられた)第二王子さまなラディの事情は政治的陰謀が渦巻いてそうだもん。
わたしのことを異国の娘だと思ってるならちょうどいい。適当に話を捏造しよう、そうしよう。異国事情も捏造しよう、そうしよう。どうやらマオセリンは閉ざされた国っぽいし細かい異国の事情は知らないだろう。たぶん嘘ついてもバレない。貿易はしてるけど、必要以上の情報は国の中に入らないし国の外に出ないみたいだから。現在のマオセリン王国の外交状況はちょっとした鎖国状態みたいなのだ。
「東の海にある小さな島国です、聖騎士さま」
演劇部部長、千草先輩直伝の健気属性モードである。ポイントは人の目を真っ直ぐ見て、好き好きオーラを醸し出すこと。感情表現は豊かに、でも鬱陶しくならない程度に。ひたすら純真そうな顔をして爽やかに笑顔を振りまいておけばどうにかなる。これで少なくとも棗は騙される。あの鉄仮面がおろおろしてご機嫌取りをするくらいだから効果はあるはずだ。演劇バカの称号を持つ千草先輩も大絶賛の健気少女を見事演じたわたしに不可能はない! ……はず。演技というのは表情まで含めて演技なわけで、フードを深くかぶったわたしの表情はきっと見えないだろうからあまり意味がない。つまり雰囲気と身ぶりだけで健気属性を伝えなければならないという難易度の高さ。その上さっきだいぶ騒いでしまったからちょっと真実味にかけるかもしれないけど、そこは根性でカバーだ。大丈夫、わたしはやればできる子。
「東、というとシグリアか。どこの所属だ?」
この前見せてもらった世界地図を思い出す。たしかマオセリン王国が位置する大陸の海を隔てた向こうは、大陸と呼ぶには小さいくらいの大陸があって島国も含めてシグリア大陸と呼ぶと言っていたはずだ。ええっと、その辺りで記憶に残ってる国は……、
「なっそ公国です」
シュウさんがまじまじとわたしを見ているのを感じたけどスルー。わたしがスラスラ嘘を言うから驚いているのが分かる。
いいから、黙ってみてなさいって。完璧な「異国の聖騎士さまに憧れる女の子(健気属性)」を演じてみせるから! 我が部の部長千草先輩をなめちゃあかんぜよ! あの人演劇バカだから! 演劇以外なにも考えてない人だから! それ故にあの人の演技指導は完璧だから!
「ナッソ? ああ、あそこは今内紛で荒れてるんだったか。難民か?」
「はい、聖騎士さま」
ナッソ公国。一番覚えやす名前だったから覚えていただけなんだけど、ありがたいことにより怪しくない肩書きまで手に入れた。なるほど、内紛ね。難民認定されたってことはマオセリンに流れ着いちゃった哀れな女の子になりきらなくちゃいけないのか。マオセリンは内陸国だったはずだから商人にまぎれてやってきた、とか都合よく思いこんでくれないかな。細かい設定考えるの面倒なんだよ。
「なるほど、それでフィートか」
「ふぃーと?」
「ナッソではそう言わないのか? 一年以内に近親者の死んだ者のことだ。フィートは死に触れた穢れを周囲にうつさないよう、死色を身につける」
「しいろ?」
「おまえの着ているローブの色のことだ。この国ではフィートはみなその色を身につける。顔を隠す布でも、服でもいいがおまえの着ているローブが一般的だな」
フィートっていうのは喪に服すってことで、死色っていうのは黒と同じ扱いっていうことでいいのかな。ラディの忌色といい、日本よりずっと色の区別が厳しいみたいだ。
「たしかにわたし、身寄りはありません。でも聖騎士さまにお会いできてよかった。わたし、まおせりん王国の聖騎士さまに憧れていたんです」
「シグリアにまで聖騎士の噂が?」
片眉を上げるセルヴァさん。慌てちゃいけない。目を逸らしちゃいけない。嘘だと悟らせないためには、自分がそのことを信じ込むのが一番だ。単純と称されることの多いわたしには結構簡単なことだ。わたしは内紛の末、マオセリンに流れ着いた女の子。聖騎士に憧れる純粋な女の子だ。
「だって百年ぶりの聖騎士さまでしょう? どんな方なのかなあって」
ぱちんと手を合わせて頬を染める。フードの影になって見えていないだろうけど、念には念をだ。フードが取れない程度に顔も上げて熱烈な視線も送る。気分はおとぎ話に出てくるお姫さまに憧れる女の子だ。わたし大きくなったらお姫さまになるの! ……と夢を語った時期がわたしにもありました、ええ。
「想像通り、お優しい方で感激しました。見ず知らずのわたしを助けてくださいましたし」
「いや、別に……」
気まずげにセルヴァさんが視線を泳がせる。
そりゃそうだろう。この人、わたしを〈裏切りの民〉だと思ってたんだから。素直にお礼を言われたら気まずいよね。
「もっとお話できればよかったんですけど、わたしこれから用事があるんです。ね、シュウさん」
「え? ……あーはいそうですね」
突然話を振られてうろたえるシュウさんににっこり笑う。
ちゃんと話合わせてねー? とっとと聖騎士さまと別れて買い物して帰るんだから。まだラディに聞きたいことはたくさんあるのだ。シュウさん以上に性格の曲がっていそうな聖騎士さまにかまっている暇はない。
「ごめんなさい、わたしが迷子になったせいで遅れてしまって。時間がないのでしょう? 早く行きましょう?」
あまり嘘はつかない方がいいよね。万が一再会したときに話が食い違うと困るし。記憶力に自信はないから同じ嘘をつけるとは思えない。三歩歩いたら忘れる鳥頭だという自覚はある。
ということで、早く早くとシュウさんの腕を引けばひきつった笑みを浮かべながらもシュウさんは頷いた。
何考えてるか手に取るように分かるよ。わたしだってこんなのキャラじゃないことくらい分かってるから、黙ってついてきてくれるかな。それからじっくりわたしに対する認識について話し合おうじゃないか。これでも一応女の子なんだからね! 純粋な心だって持ってるんだからね!
「それでは急ぎますので、失礼します」
そのひきつり笑顔のまま軽く頭を下げたシュウさん。顔を上げたときにくい、とフードを深くかぶり直すことも忘れない。……そういえば、深緑は死色だと言っていた。わたしの格好は色を隠すために仕方ないにしてもシュウさんが身につけているってことは最近シュウさんの近親者がお亡くなりになったんだろうか。
「<死神>、」
ふむ、と考え込みながらも腕を放さないわたしをそのままに踵を返したシュウさんの背にセルヴァさんが声をかけた。
「銀の災厄が生きているという噂は聞いたか」
その言葉にシュウさんぴくりと肩を上げ、ゆっくりと後ろを振り返った。表情は窺えないけど焦ったような雰囲気が伝わってくる。
銀の災厄、ってもしかしてもしかしなくてもラディのことだよね?
ええっと、どういうことだ?
さっきからフル回転の頭をまた働かせる。頑張れ、わたしの脳細胞。
ラディは魔の森に捨てられたんだよね。そこにまだ幼い子どもを捨てるってことは何を意味するか。簡単だ、自分たちの手を汚さずに魔に喰い殺してもらおうってことだろう。つまりラディを魔の森に捨てるってことはそのままラディの死に直結する。まあ、曲がりなりにも王族のラディが魔物に殺されるかどうかは別として、王族だって人間なんだから放置すれば餓死なりなんなりするだろう。祝福って言っても不死身なわけじゃないみたいだし。
でもラディは生きている。偉い騎士さまっぽいシュウさんが食べ物を届けて、尚且つラディを敬い王城の情報を教えているのだからたぶんラディが死なないように手をまわしたのはシュウさんだ。その裏に誰がいるのかまでは分からないけど、とにかくシュウさんはラディを死なせないために動いている。しかもラディが生きているとは知らせないで。この前の口ぶりじゃ国王陛下も知らないみたいだった。ラディは王子様なわけだから国王陛下はラディの父親だ。父親が知らないってことはつまりラディの死を偽れと命令したのは国王じゃなく別の誰か。それも偉い騎士さまを動かせるだけの発言権を持った人だ。わたしに思い浮かぶのは第一王子か王妃さま、つまりラディのお兄さんとお母さんくらいだ。でも第一王子がわざわざ自分の王位を脅かす危険のあるラディを生かしておくように命令する理由はないし、ラディのお母さんはラディが一歳のときに亡くなっているはずだ。つまり第一王子でも故王妃さまでもなく、けれど国王程度の権力をもつ人がバックにいるってことだ。
それだけの人がバックにいるなら情報の隠蔽は完璧のはず。でも今セルヴァさんはラディが生きていると言った。聖騎士というくらいだし、たぶんセルヴァさんの所属は神殿のはずだ。忌色を嫌う神殿に属する聖騎士さまにラディが生きているなんて話を伝えるはずがない。だって神殿としては忌色の王子が生きていては困るんだから。そのためにラディを捨てたわけだし。つまりセルヴァさんにラディが生きていると知られるのはマズイ。
「…………銀の災厄は魔物に攫われました」
答えるシュウさんの声が動揺を隠しきれていない。セルヴァさんにラディの存在を知られちゃいけないっていう推測に間違いはないらしい。
ダメだよそんな分かりやすい演技じゃ。もっとさりげなさを装わなきゃ。
「そうだ、魔物に攫われ食い殺された。おまえの報告はそうだったな?」
おまえの報告、ですと?
うー、複雑になってきたな。
えーとつまり、ラディを魔の森に捨てる役割がシュウさんだったってこと? その辺はたぶんバックの人が手を回したんだろう。で、シュウさんはラディは死んだと上司に報告した、と。聖騎士さまはラディが捨てられたってことを知らないんだろうか。それともカマをかけてるだけ? どちらにせよ、マオセリン王国においてラディの存在はすでに故人、もしくは元から生まれていなかったことにされている可能性が高い。
そこまでしてどうしてラディを生かしておきたかったのかとかそういう難しいことは後回しにして、問題はどうしてそんな噂が出回ったのかだ。推測するには情報が少なすぎるけど、考えるにラディの弟君の逝去が原因じゃなかろうか。この前の話じゃラディに他に兄弟はいない。妹はいるって言ってたけど、男尊女卑の風潮があるこの国では姫は王になれないらしいから今は除外だ。カディアさまに子どもがいるらしいけどその子もまだ赤ちゃんみたいだし。さすがに喋ることもままならないような子を玉座に据えることはできないだろう。国民の不信感を煽る。そこで白羽の矢が立ったのがえぇっと、あれいうすさま? だ。立ち位置は不明だけどラディの兄弟じゃないとなれば王弟殿下とかそんな感じだろう。でも、その人に継がせるのは心配だと。政治的な陰謀からもたぶん王弟殿下(仮)が国王になるのは困る人がいるのだ。派閥とか、そんな理由で。つまりアンチ王弟殿下(仮)派の人たちの中にラディの死が嘘だと知っている人がいて、その人がラディを連れ帰る準備を進めているのがバレているってことだ。仮にも第二王子殿下のご帰還なわけだし、そりゃ少しくらい騒がしくなるだろう。そこでバレた、と。
……ふむ、複雑だ。
「……そうです。銀の災厄は子を攫う魔物に食い殺されました」
「ならば何故生きているなどという噂が出回っている?」
「さあ……、わたしには分かりかねます」
とりあえず、シュウさんもう少し心をこめて演技できないかな? 嘘ですって全力で表現してるようにしか聞こえないんだけど。棒読みなんだけど。
「おまえの報告が虚偽であった可能性はないな?」
「ありません。銀の災厄は死にました。疑うのならトュトスさまに伺ってはいかがですか」
シュウさんの言葉にセルヴァさんは目を細めた。信じてないだろうなー。そりゃ信じられないよなー。シュウさん挙動不審だもん。もう全身で嘘ついてます! って宣言してるもん。
「まあ、いい。仮に生きていたとしても災厄が王位につくことはない。アレイウスさまがテーダから呼び戻された。このままいけばアレイウスさまが王位につくことは間違いない。カディアさま派の者たちは反対を叫んでいるが一時的にでもアレイウスさまが王になるしかないことくらいは理解しているはずだ。アレクさまが即位できる歳になられたら、そのときアレクさまを王位に据えればいいだけの話だ」
「そうでしょうね。王家直系の血をひき王位を継げるのは、今はアレイウスさまだけですから」
にこり、と笑ったシュウさんにセルヴァさんはふんと鼻を鳴らし足高に去っていった。それを姿が見えなくなるまでにこやかに見送り、見えなくなったところで笑みを消した。
「シュウさん、演技下手ですね。あれじゃバレバレですよ」
「……あなたはずいぶん演技がお上手なようで。聖騎士に憧れる異国の少女を見事に演じきっていましたよ」
嫌味を言ったら嫌味で返された。
なんて嫌な奴!
でも大人なわたしはその嫌味をスルーして状況を掴むべく問いを口にする。
「ラディは王さまになるんですか」
「……ラディッシュさまは王城からの使いが来れば戻るとおっしゃっておられました」
苦々しげな口調だった。若干睨まれているような気もする。シュウさんはラディを王位につけたくないらしい。そりゃねー、王城なんて陰謀渦巻く腹黒集団の巣窟っぽいもんねー。人を疑うことを知らないラディを王位につけるのは気が進まないよね。不審人物だったわたしも最初少し警戒したくらいでころりと信じちゃうし。あまつさえ知識を与えちゃうし。
でもその不機嫌には気付かないふりで問いを重ねた。
「アレイウスさまが王さまになると困る人たちはラディの存在を知ってるんですね?」
「…………」
しばらく無言でシュウさんが驚いたようにわたしを見下ろしていたけれど、すぐに諦めたように息を吐いた。
「なかなか頭が回るようで安心しました。ただの馬鹿ではほんとうに手の施しようがありませんからね」
……この人嫌味を交えなきゃ話せないんだろうか。
「いいです。どうせあなたもいずれ知ることです。買い物の道すがら話しましょう。昼食と、それからあなたの服も新調する必要がありますね。さすがに二着では困るでしょう。ラディッシュさまのかけた術より聖騎士のかけた術の方が効果は強い。聖騎士がこの町にいる限りは言葉も通じるでしょうから、早く買い物をすませてしまいましょう」
シュウさんの言葉に頷いた。




