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多目的少女!  作者: 遊楽
第一章 災厄の王子
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望まれなかった王子様



出戻りです。




 ――サーガの月が満ちるとき、




 「なんと忌まわしき王子」


 「やはりお母君がああだから、」


 「だから言ったのだ。<裏切りの民>を愛妾に迎えるなど、混乱を招くだけだ」


 「陛下は何を考えておられるのか」


 「<災厄の者>と同じ色を持つ王子など災厄の象徴ではないか」


 「これではいくら第二王子とは言え、認めるわけにはいかぬ」


 「これを即位などさせてみろ、国民がなんと言うか。神殿の権威は地に落ちるぞ」


 「そうでなくても<女神>の加護が不安定なのだ。これ以上の混乱は厄介なことになろう」


 「ターグルの我慢もいつまで保つか」


 「しかし災厄の象徴が城にいることが分かれば、それを理由に剣を向けるだろう」


 「ああ、ほんとうに厄介なことになった」




――悪に見初められし王子が生まれる。




 「やはり<予言>は本当だったのか」


 「しっ、あまり大きな声を出すな」


 「この王子、どうする」


 「城にいさせるわけにはいかぬ。ここは神聖な場だ。穢れた血を持ちこむことは許されぬ」


 「しかし、この御子は紛れもない<女神>の神子。殺すわけにはいかぬ」


 「ならば、<魔の森>に捨てるのはいかがか」


 「それしかあるまい」


 「それで喰い殺されれば御の字。どちらにせよ、あの森から逃げることは不可能」


 「王にはなんと?」


 「子を攫う魔物が連れて行ったと報告しよう。魔物が相手では王も罰しはせぬ」


 「ちょうどいいことに騎士団長は不在。警備が手薄であったと言えばよい」


 「なるほど、全ての責任はあの若造に……」





 ――……だれも、あいしてくれない

 とくべつななにかが、ほしかったわけじゃない。

 ただ、あたりまえのようにいきたかっただけなのに。


 ……神などいないのだと悟るまでにさして時間はかからなかった。





 「綺麗な色だと思うけどなあ。ラディの目って宝石みたいだ」



 愛されなかった王子さま。


 望まれなかった王子さま。


 彼の生きる色のない世界に色をつけたのは、まるで魔のモノに愛されたかのような黒尽くめの少女。後に<漆黒の魔女>と呼ばれる異界の娘。




 ――王子は漆黒の魔女を連れて、災厄を引き起こす。




 捨てられた災厄の王子と漆黒の魔女が出会ったとき。

 ……――歴史の歯車は動きだす。




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