夢だと言ってほしいのよん
「きゅいいー」タマゴの殻を頭にのせ、もぞもぞよたよたはい出してきたちびトカゲ…。
なぜか「ママー」と聞こえる気がする・・・。なんででそ?
殻が邪魔そうだけど大丈夫か? お、立ち上がった。すごい。二足歩行してるよトカゲくん。
およ? 背中に羽が生えてる! これはいわゆる西洋竜というやつでは? すごいすごい。本物だよー。
わ、こっち向いた!
ぺたぺたっていう音がしそうな歩き方。身体金色だし! ぴかぴかやん! 殻が発光してるんだと思ってたけど、キミも光ってたのかー。びっくり。
きゃー、なんかまるで子供が「抱っこー」っていうみたいなポーズで近づかないでー。
やばい。碧いおめめがうるうるくりくりしてて拒めないー。
思わず素直に抱っこしちゃってからまたもやびっくり。超~軽いー。うろこってぬめぬめしてるのかと思ったら、意外にさらっとしっとりで気持ちいい肌触り。
しかもほのかにあったかい! 人間よりは低めだけど、ひんやりとかじゃないんだー。
頭にのっていた殻を手ではらって落としてやると、なんと。耳と耳の間、頭のてっぺんにもふ毛が生えてるじゃないか。うわー。そこからちっちゃな角が2本のぞいている。やっぱ西洋竜だわー。
うう。首元でうりうりされちゃったりなんかしたら、無碍にできないじゃーん。
「きゅいきゅいきゅいいー(ママ、ママ、ママー)」と聞こえるおちびな竜くんのかわいさを堪能していると、「きゅるるるる~」という音が。
「そーか、そーか、おなかすいたなー。ママがいなくてさみしいねぇ。一緒に唐揚げ食べようかー?」
おちび竜を抱えたまま、置きっぱなしにしていた荷物のところへ向かう。そのまま床に座り、竜くんをひざにのせると、コンビニの袋から食べかけの唐揚げを出す。
串からはずして与えてみるも、胸元にはりついたまま。匂いを嗅いだりしてなかなか食べない。
が、あたしが食べたのを見て、やっとぱくり。
お、大丈夫そうだね。
とりあえず、あたしも腹ごしらえしようっと。さすがにビールを飲む気にはならず、ほんとは朝ごはん用だったサンドイッチも開け、半分こする。すごい、これも食べてる食べてる。ちゃんと手、使ってるよ。
はむはむしているのを見ると、自然と心が和む。
はあ。だけど。夢じゃないんだね、これ。いくら軽いとはいってもひざに感じるリアルな重み。
だれか夢だと言ってくれー。
「なあ、竜くん、ここ、どこかなぁ? どうやったらお外に行けるかなぁ?」
「きゅうい?」
「きみのママもどこにいったのかなぁ? こんなところに閉じ込められたままなんて冗談じゃないよねぇ。食糧はこれしかないし、なんとかしないとっ。これ食べたら一緒に探索しようね」
「きゅい」
仲良く? お話していると、さきほどタマゴのあった台座の辺りが急に明るくなる。うわ、まぶしー!
一瞬、閉じてしまった目を再びあけると、どこから現れたのか、そこには赤髪碧眼の男の人が立っていた。