希望の明かりのその先に
ええーっ。何これ、タマゴじゃない??
恐る恐る部屋の中央辺りに置かれた台座に近づいてみる。
1m×1.5mほどの台座の上に厚めのおざぶ(座布団)のようなものが敷かれており、その上に大きな光るタマゴが載っていた。
タマゴの高さはおおよそ30cmから40cm。A4サイズが入るマイ通勤バッグの縦横を逆にした位か?いや、それよりも一回りほど大きいんじゃないだろうか。
さきほどから聞こえてくる音が示すとおり、殻にはヒビが入り一部が欠けていて、今にも「何か」が孵ろうとしているようだ。
しかもこの明るさ!ホタルのでっかい版でも生まれるのかいね?まさかの火の鳥とか??あり得ないよね。
…っていうか、あたし、こんな近くにいたらマズイんじゃない?逃げないと!
慌てて出口を探すが、今来たところの他に通路らしきものは見当たらない。しかも柱と柱の間がなぜに壁?
なにここ。完璧、密室じゃん! あたしってこいつのエサ? まさかね。あはは。
一気に血の気が引くのを感じた。
気をとりなおしてもう一度辺りをぐるっと見回すと、視線を戻した先でタマゴがひときわ輝いた。
かと思ったら、なにやらタマゴのてっぺんから手(腕?)らしきものが生えている。しかもにぎにぎしてるし。な、なんすかこれ? ちょっとかわいいんですけど。
一生懸命殻から出ようとしているのか、ソレはもぞもぞ動いているが、思いのほか殻が固いらしく、なかなか出てこない。おざぶの上とはいえ、かなりぐらぐらしていて台座から転がり落ちそうだ。
「危ないっっ」思わずタマゴを手でおさえてしまった。
すると中から「きゅいー」という鳴き声が。それがなんだか(うえーん。出してー)に聞こえ、殻を割るお手伝いを始めてしまった。最初はゲンコでたたいてみたが、痛いばかりでさっぱり割れない。
かなり固いなコノヤロー。
「ちょっと待っててね~」と声を掛けると、あたしが殻割りを手伝ってくれると認識したのか、「きゅー」という返事と共におとなしくなったタマゴの中身。輝き具合もさきほどよりほんわかしたものになってきたようだ。
殻から手を離し、通勤バッグを探る。
おお、これ、良いんじゃない?マイボトルちゃん。
毎朝、コーヒーを淹れて持ち歩いているが、今は空になっているそれの角で殻をコンコンたたいてみる。あ、なんかいいカンジ~。
「きゅいいいー(わーい、はやくはやく~)」と聞こえる(気がする)鳴き声に急かされつつ、中身を叩きのめさないように加減しながらタマゴの上部、腕の生えている辺りからヒビを入れていった。
……そしてコンコンすることしばし。最後のひとたたき。側面が割れた。
すると、殻のカケラを被った、なにやらトカゲちっくな生き物がもぞもぞとはい出してくるところだった。