温泉だいすき?(1)
本日もお読みいただきありがとうございます。
いいお湯ですなぁ。はぁ~、癒されます~。
ここはユーレリア南の神殿の湯、でございます。
神殿の裏山にある温泉街の客室付露天風呂でまったり中。湖が眺望できてなかなか素晴らしいです。以前、無理言って造ってもらっちゃったんですよね。コレ。
こちらではお風呂はあるけど温泉に入るという習慣がなかったようで、10年程前にここで温泉が出た際も「井戸の水が湯になった!」と大騒ぎでねぇ。地元の人たちが「神竜様のお力でなんとか元に戻してほしい」って神殿にお願いにやってきたんですよ。
そりゃあ、お水は大事ですもんね。わかりますわかります。でもよくよくお話を聞いてみると、どうも温泉が出たのはこの辺りだけだったみたい。
生活するためのお水は他から確保できるようだったので、逆にみなさんに温泉の素晴らしさを伝え「神殿に訪れる人たちのための癒し場と宿を作りましょう!」とお願いをしてここを湯治場にしちゃいました♪
まあ、最初はあーだこーだ言うおっさん連中がごろごろいたんだけど、温泉に入りたい(温泉まんじゅう食べたい!)一心でがんばりました。昔取った杵柄(?)、パワポ資料でプレゼンの要領を思い出しながら根気よーく説明しましたよ。メリット誇張でへったくそな紙芝居もどきを駆使しましたっけ。
あとはほら、お試しデモ。実際に温泉につかってもらったらイチコロでしたけどね!
やっぱいいよね~、温泉。今じゃ日帰りから長期逗留、自炊型まで選べるラインナップ! こちらのみなさんにも気に入っていただけたようでよかったですわ。
しかも当時、魔法が使えるようになったばかりだったリューくんが、あちらこちらで「ちちんぷい」したもんだから癒し効果が増量されたみたい。いまだに神竜様の加護がいただけると評判なんですよ。
おかげ様で言いだしっぺのあたしにも多少の実入りがありましてですね。この先万が一、リューくんに振られてもなんとか食べていけるかな? なんてね。人生備えあれば憂いなし、ですな。おほほほ。
「ケーコ様そろそろお部屋に戻られませんか」
露天風呂でのんびりまったりしていたところに、掛けられた声。リューくんと一緒にお散歩に行った侍女さんだ。戻ってきたんだね。
「リューシオン様も落ち着かれたようですよ」
「ほんと? おまかせしちゃってごめんね。落ち込んでるのはやっぱりあれが原因?」
実はリューくんあと少しで14歳になるんだけど、まだ一度も人型になれてないのよね。普段から物覚えもよく「おりこうさん」なリューくんにとって、初めての「思い通りにならない状況」なんだろうな。
風呂からあがり、旅館備え付けの浴衣もどきに着替える。すると侍女さんがすかさず髪を乾かしてくれる。宿には魔石を使ったドライヤーを完備するようにしてもらったのでとても便利だ。
こちらの子どもたちは15歳になると小学校に通い始める。ただ、それには「人化できることが望ましい」という条件がつくのだそうで。
どうやらそれは10歳を過ぎた頃からドラゴンの身体はどんどん大きくなるので人化できないとちょっと困ったことになってしまうから、ということらしい。
そう、建物(おうちとか学校とか)の中に入れなくなってしまうのだ。とはいっても普通は12-13歳位になると自然と人化できるようになるし、学校も20歳位の体格までは耐えられるような設計にはしているそうな。
リューくんも今ではあたしの背よりも頭ひとつ分位大きくなっていて、一緒に並ぶと結構な威圧感。まあ、あたしがチビなだけともいいますけどね。すみませんね、ジャストメジャーサイズなんですよ(=150cm)。
「どうやら神官の一人が、リューシオン様の成長が遅いのは異世界人を母親としたからだ、などと言っているのを耳にされたようなんです。ご自分のせいでケーコ様が悪く言われているとたいそう気にされて……」
あらら。リューくんも最初はあたしより大きくなれたことが単純に嬉しかったみたいなのに急にしょぼんとしちゃったのは、そうか、そんなことがあったからだったのか。そりゃあたしに話してくれないわけだわ。
「そんなこといってるのはきっとあのハゲちゃびんだわねっ。あたしに対してあれこれ言うのは全然かまわないけどリューくんの前でそんなこと言わないでほしいな。ほんとにもう!」
なにかにつけて言いたがる人ってのはどこにもいるもので、このハゲちゃびんがまさにそれ。ことあるごとにグチグチと嫌味を言ってくるのよね。さすがのあたしも一時は落ち込んでケントさんやユリシアさんにも迷惑をかけたけど、開き直ってからは強いですよ~。
「……成長スピードとか、できること・できないことなんて人それぞれだよ。入学まではあと1年もあるんだし、そんなに気にしなくてもいいじゃない」
着いたら一緒にお風呂入ろうねって約束してたのに、後でいいってマサムネと一緒にお部屋を出て行っちゃったから、何か思うところでもあるんだろうなとは予想してたけど。
あ、マサムネっていうのは、以前リューくんが助けた銀獣くんの名前です。あの時は片目をケガしていたのでそう名付けちゃったんだけど、今ではちゃーんと治ってます。よかったよかった。
「後ほどわたくしから神官長にきちんとお伝えしておきますわ」
部屋へ続く廊下へ出ようとしたところで侍女さんがそう言った。
ほんと、いつも助かります。さて、あたしはどうお返しをしたもんでしょうかねぇ?
非常にたくさんの方にご覧いただきたいへんびっくりしております。
お読みいただいている方、お気に入り登録してくださった方、評価してくださった方、本当にありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
7/18 改行入れました。
7/29 サブタイトルを変更いたしました。また本文中に歌詞の一部が含まれておりましたので変更いたしました。以後、このようなことがないように気を付けます。