島
その島の平野はわずかにすぎない。海岸線から少し行くとその先は森だ。中心部は二千m級の山が三山連なっている。亜熱帯に属しているが、山頂では亜寒帯である、様々な自然を見せてくれる。
青島孝と関森由紀は森の中を第三の石を求めて、さまよっていた。すべては、関森由紀の特殊な能力にかかっている。わずかに伝わってくる、石からの波動を関森由紀は受信していた。しかし、その波動は弱くて、中々方角が定まらない。離れ過ぎているのだ。
青島孝は起点を決めて、いろんな方角に行くように諭し、目印を残しながら、行くようにした。もちろん、段々波動が強くなる方角が石のある方向だ。
徐々に波動が強くなるのを感じる。関森由紀は鳥肌がたってきた。もうすぐ第三の石と対面できる。期待で胸が弾む。
「シュッ」
乾いた音とともに矢が青島孝の右耳のそばをかすめていった。
若い女性らしき声が響きわたる。
「動くなっ!動いたら、今度は必ず射抜くよ」
青島孝と関森由紀はその場に釘付けとなった。
木立ちの間の先に一人、弓を引き、こちらに矢尻を向け、佇んでいるのが、見える。歳の頃は、十六か十七位であろう。
関森由紀は声の主の心を読み、青島孝に囁いた。
「本気では言ってない。だけど、いつ気持ちが変わるかは、わからない」
「そうか」
そう言うと、青島孝は、一歩前に進んだ。
「動くなと言ったのが、聞こえないのか?今度動いたら、必ず射るぞ」
「今度は、本気みたい。動かないで」
と、関森由紀が止めた。
「どこを狙っているか、分かるか?」
と、青島孝が尋ねる。
「致命傷を与える事がないように考えている。四肢のどれかね」
青島孝は頷くと更に、半歩前進した。
風を切り、矢が飛んで来て、青島孝の右肩に突き刺さった。