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奪取二.

 神山一輝が、中原の元へ近づいてきた。

「解放してやれ」


「はい」

 中原が短く返事をすると、途端に、運転席の男の意識がはっきりとした。


「俺は、一体…?」

 彼は、自分がなぜ手錠をかけられているのか、助手席の男も同様の状態であることに気づき、激しく混乱した。車の周りに立つ三人の男女を見回し、助手席の男に詰め寄る。

「おい、一体何があったんだ? あんたも手錠をかけられてるじゃないか! こいつらは何者なんだ? 警察のようだが、一体何をしやがる…? 確か、そこの男が、俺を操っていたとか言ってたな…? 奇妙な連中だ…! それに、拳銃まで奪いやがって…!」


 助手席の男も、状況を把握しきれていない様子で、混乱と恐怖が入り混じった表情をしていた。


 神山一輝は、そんな二人の様子を冷静に見つめると、神山明衣と中原に、次の指示を出した。

「もう一台のトラックも、まだ確保できるはずだ。すぐに向かえ。後から行く」


 神山明衣と中原は、無言で頷くと、車の右後方に回り、互いに手を取った。そして、次の瞬間、二人の姿は、その場から消え去った。


「…え…? 消えた…? まさか、冗談だろ…?」

 サイドミラー越しにその光景を目撃した運転席の男は、自分の目を疑った。何度も目をこすり、首を激しく横に振るが、信じられない光景が現実だったと認めざるを得なかった。

「ありえない… ありえない… ありえない…!」

彼は、何度も同じ言葉を繰り返し呟き、頭を抱えた。


 その時、突然、運転席側の窓が、ひとりでに閉まり始めた。


「うわっ…! なんだ、これは…!?」

 運転席の男は、悲鳴にも似た声を上げ、体を震わせた。今は十二月初旬の真冬だ。窓が開いていたため、先ほどまでは凍えるような寒さだったが、今は、その寒さがようやく和らいだ。


 神山一輝は、窓が完全に閉まる直前に、薄く笑みを浮かべ、車内の二人に声をかけた。

「おとなしくしていろ。もうすぐ、お迎えが来る。寒かっただろうから、窓は閉めてやったぞ」


 言い終わると同時に、窓が完全に閉まり、車内は静寂に包まれた。


 助手席の男が、ドアを開けようとしたが、ドアはびくともしない。ロックを解除しようと試みるが、ロックボタンすら、彼の意思とは無関係に固定されている。

「おい、ロックが外れないぞ…! ドアも開かない…!」


「ああ、俺も試してるが、どうにもならん…! 一体、何なんだ…? 変なことばかり起きやがる…!」


 二人の男は、自分たちの身に起きている超常的な現象に、完全に翻弄されていた。


 やがて、けたたましいサイレンの音を響かせながら、六台のパトカーが現場に到着した。


 神山一輝は、車内の二人を警察官に引き渡し、トラックも証拠品として保管するように指示した。そして、自身は一台のパトカーに乗り込み、神山明衣と中原がいるはずの地点へ、他の二台のパトカーと共に急行した




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