表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

攻防二.

 外は、漆黒の闇に包まれていた。月明かりは一切なく、アークの基地が位置する山中では、人工的な光がなければ、一寸先も見えないほどだった。精鋭部隊と機動部隊は、この新月の夜を選んで、アーク基地への奇襲を仕掛けたのだ。


 アークの基地から外に出ると三宅副支部長は暗視モードに切り替え、悠然と歩を進めていた。

(レーザー砲で、敵の半数は撃破したはず…)

 彼は、暗視モードで敵の動きを確認しながら、撤退していく精鋭部隊と機動部隊を追い詰める。

(残りの人間は、ここで根絶やしにする。選別は既に終わっている。必要な人間は、アークの基地内に収容済みだ)


 撤退する精鋭部隊と機動部隊は、深い絶望に包まれていた。元々、獣道もない山中を進んできたため、体力が削がれており怪我人も多い。その上、背後から迫り来る敵は、まるで幽霊のように姿が見えず、ただ死の恐怖だけが、彼らを追い詰めていた。


 三宅副支部長にとって、撤退する部隊は、地を這う虫けら同然だった。加速装置を起動させ、圧倒的なスピードとパワーで、一人、また一人と、容赦なく命を奪っていく。


「カサッ…」


 わずかな物音。それが、死の宣告だった。次の瞬間、彼らは鋭い痛みを感じ、意識を手放す。何が起きたのかさえ分からない、一方的な虐殺だった。


 本部に戻ってきたのは、全滅を免れた、わずか一部隊のみだった。


 本部では、西崎本部長と松本副部長が、残された人員を前に、今後の対応を協議していた。会議室には、救護班や管理スタッフ、そして、かろうじて生き残った精鋭部隊の隊員が集まり、重苦しい空気が漂っていた。


「このような結果になり、誠に残念だ…」

 西崎本部長は、沈痛な面持ちで、全員を見回した。

「今後の予定だが、作戦は中止する。夜が明けたら、仲間の遺体を回収する」


「しかし、本部に辿り着いた我々の部隊も、不気味な敵に追われています。ここも、もはや安全ではないのでは…?」

 生き残った精鋭部隊の隊長が、不安げな声で訴えた。


 西崎本部長は、少し考えた後、重い口を開いた。

「…よし、ここも撤退する。各自、身の回りの物だけを持って、速やかに移動を開始しろ」


 本部からアーク基地までは、道なき道を強行しなければならなかったが、本部を境に、アーク基地とは反対側には、車両が通行できる道が通っている。本部からは、車で安全に撤退できるはずだった。


 全員が、急いで身の回りの物をまとめようと会議室から出ようとした、その時だった。


 突然、ドアが開き、見知らぬ男が、無表情な顔で入ってきた。


「…!」


 男は、まるで瞬間移動したかのように、一瞬で姿を消した。次の瞬間、近くにいた精鋭部隊の隊員3人が、悲鳴を上げる間もなく吹き飛ばされ、壁に激突した。


 男――三宅副支部長は、まるで死神のように、容赦なくその場にいた人間たちを襲い始めた。


 会議室は、瞬く間に地獄絵図と化した。悲鳴、怒号、そして断末魔の叫び。数分後、その場に立っているのは、三宅副支部長ただ一人だった。


 こうして、本部も壊滅。松原隊長の部隊を除き、アーク突入作戦に参加した部隊は、全滅した。本部からの定時連絡が途絶えたことで、ようやく事態の異常さに気づいた近藤対策本部長に、作戦失敗の報告が届いたのは、それから間もなくのことだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ