第三の石
関森由紀は次々と心の中を読んでいった。関森誠達はもう止めて欲しいと頼む。誰しも、心の中を覗かれたくないものだ。
そして、関森由紀は再三危険が迫っている事を訴えた。
「どうですか。由紀さんの能力は素晴らしいでしょう」
と、青島孝は言い、それぞれの顔を見ていった。
「確かに見知らぬ連中が、動き回っているようだ。知人が教えてくれた」
と、関森誠の表情が険しくなった。
「当然、石を狙って来るでしょう」
青島孝は語気を強めた。
「この山小屋は、必ず見つかるでしょう。相手は手ごわい。しかも相手は銃を所持していると由紀さんは言ってます。勝ち目はありません。一刻を争います。相手の狙いは、四石と僕達二人で、それさえ手に入れれば、いい事です。どうかすぐに、床下に隠している覚石を渡して下さい。すぐに、ここを去ります。もしも、ここを見つけられ、僕達がどこに行ったか問い質されたら、東京に行ったと答えて下さい」
「東京に?」
と、関森誠が聞き直す。
「はい。父の家に行きます」
「それでどうする気なのかね?」
「どうにかします。心配いりません」
「…」
しばしの沈黙が流れた。関森誠は深く考え込むように目を閉じ、やがてゆっくりと立ち上がり、青島孝と関森由紀に覚石を渡すと告げた。
覚石を渡された後、青島孝はすぐにそのパワー得て、関森由紀とともに出て行った。
一方、山の中では、林田未結が苛立ちを募らせていた。
「くそっ、雨のせいで匂いが全然残ってない…!」
この島は降水量が多く、雨が降るとすぐに地面の匂いが洗い流されてしまう。彼女の人間離れした嗅覚も、ここではほとんど役に立たなかった。
それでも、彼女は諦めなかった。時折立ち止まり、耳を澄ませ、風に乗ってくるわずかな音を拾おうとする。視覚、聴覚、嗅覚。彼女の五感は、極限まで研ぎ澄まされていた。
「必ず、見つけ出す…!」
彼女は自分自身に言い聞かせるように呟き、再び走り出した。
そして、陽が傾きかけた頃、ついに彼女の耳が微かな話し声を捉えた。
「間違いない…! こっちの方向にいる!」
林田未結は足を止め、慎重に方角を定める。声が聞こえるのは、関森誠たちがいる山小屋の方向だった。