移動
第一部、第二部を読まれてない方は、そちらもよろしくお願いします。
ジェットエンジンの音が響く。窓には陽光が差している。シートベルト着用のサインが消えた。関森由紀がベルトを外していると、いきなり隣りに腰掛けている、青島孝の呼ぶ声が聞こえた。横を向くと、青島孝は前を向いたまま黙っている。気のせいだったのかと再び前を向くと、また声が聞こえた。
(脳に直接コンタクトしている。そう驚くな。テレパシーが使えるようになった。人の心までは、読めないが、会話位はできる)
(いつからできるようになったの?)
(たった今だ。時々、試していたけどな)
(やっぱり、石のパワーかしら?)
(智石のパワーに違いない。ところで、実家に行く前は、かなり疲れがとれないで、元気がなかったが、実家に着いたら、急に元気になったが、なぜだ?)
(たぶん、抗石のパワーが影響したんだと思う。苦もなく、人の心が読めるようになったのも、きっと抗石のパワーよ)
(今は、石のパワーは俺が持った。違いはあるか?)
(そばにいたら、いいけど、離れたら駄目。きっと、石のパワーの影響力まで吸収したんだわ)
二人は一言も発せず、テレパシーで会話をし続けた。
やがて、シートベルト着用のサインが出て、しばらくすると、降下し着陸態勢に入った。
鹿児島空港で乗換える予定だったが、行先の空港に季節外れの台風が接近し、フライトできず、欠航となった。
仕方ないので、二人は、一泊し、翌日に移動する事とし、ホテルを予約し、高速バスで、鹿児島市内に移動した。
バスに乗ると、関森由紀は青島孝にテレパシーを使って、コンタクトし始めた。しかし、青島孝は全然気付かない。関森由紀が咳払いをして、ようやく気付き、交信状態に入った。
(受ける側にいる時は、集中していないと、気付かない。集中しなくても、受信できるようになりたいものだ)
(訓練するしかないわね)
(そうだな。時々コンタクトしてくれないか。そして、気付かなかった時は、教えてくれ)
(わかったわ)
バスは順調に走リ、鹿児島市内に入って、目的地に到着した。
青島孝と関森由紀は予約したホテルに着き、チェックインのため、フロントに行ったが、チェックインの時間より、早かったので、少し待つ事になった。