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147.最初の踏み出し

「私、アーチェさんと一緒に旅に出るから!」


「え……」


 アリアがそう言ったとき、村の人、両親、アーチェを含め皆が驚いたのとは言うまでもない。唯一、何も驚いた表情を見せなかったのは弟のファオだった。ファオはどこか賢いところがあるから、アリアの考えなどとっくに見抜いていたのだろう。


「そ、そんなの駄目に決まってるだろ!」


 父はアリアを引き留めようとしたが、アリアは首を横に振った。これだけは、何日説得されようと変えることはない意見だ。どんなに駄目だと言われようが、アリアの決意はもう昨日の時点で決まっていた。


「外の世界は危ないこともあるんだ。だから、君はこの村にいた方がいいよ」 


 アーチェも言葉を尽くして、アリアの同行を止めようとする。アーチェがそうするのはアリアは分かっていた。アーチェには申し訳ないが、一度決めた以上どうしてもついていくつもりだ。


「いや! 私は絶対にアーチェさんと旅に出るの」


「そ、そりゃアーチェさんと一緒なら安全だとは思うが、何も今じゃなくてもいいだろ」


 父はなんとか言葉を尽くして、アリアをこの村にとどめようとしている。


「私はもう十歳だもん」


 アリアは一月前にちょうど十歳になっていた。大人まであと八年だ。もう半分もないというのに、否定される意味が分からなかった。曾祖父だって、同じ歳の頃に旅立ちに出たのだ。だとすれば、アリアが特別早いというわけでもない。


「いーや、まだ十歳だ!」


「もう十歳!」


 その後、父との言い争いは気付けば夕方まで続いた。



「アーチェさん! 準備できたよ!」


「うん……。やっと終わったんだね」


 父との苛烈な争いを数時間に渡って見せられたアーチェは、やれやれというように立ち上がった。村の人たちも傍聴にはすっかり飽きたようで、それぞれの仕事をこなしていた。


 言うまでもないが、最終的には父親が折れる形となった。アリアがそうと決めた時点で、もうこの結末は決まっていたも当然だった。アリアは家から持ってきたバッグに必要最低限のものだけを詰めると、そのままそれを持って家を出た。

 バッグに入れるかどうか悩んだぬいぐるみがあったが、かなり場所を取ってしまうため、ファオに譲ることになった。ファオはぬいぐるみで遊ぶことはしないが、きっと大事にしてくれるだろう。


「じゃあね! 村のみんな!」


 アリアが旅立つことになると、村の人たちは全員見送りに来てくれた。アリアより歳下の子たちが寂しそうな目線を送っていたが、最後には手を振って送り出してくれた。この村はいい村だ。旅立つ理由など、理解できない人もいるだろう。けれど、アリアの旅に出たいという気持ちは止められない。


「じゃあ、行こう! アーチェさん!」


 アリアがアーチェの手を握ると、父が深々と頭を下げた。


「アーチェさん。うちの娘をよろしくお願いしますね。ちょっと、頑固なところはありますが、とても優しい子ですので」


「ねぇーちゃん、先に行くなんてずるいなぁ」


 ファオが口をとがらせた。ファオにとっては先抜けをされて悔しいのだろうが、こればっかりはアリアが歳上なので仕方がないことだ。最初からアリアが先に旅立つことは決まっていたも同然だった。


「さみしくなるねぇ」


 アリアのことをよく可愛がってくれた村の長老は、目頭を押さえた。それを見てアリアの胸も痛む。


「じゃあ、行こうか……」


 一通りの別れ話が終わった頃を見計らって、アーチェが森の向こう側に歩き出した。森を越えれば、村からは完全に外の世界になる。アリアは名残惜しさを覚えながらも、きっぱりと自身の生まれ育った村から旅立ったのだった。



「僕の意思って確認されたっけ……?」


 アーチェはアリアが後ろから無事についてくるのを確認しながら、決して聞こえないように呟いた。

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