表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/176

132.意図せぬ再会

「化けダコ?! 女王じゃなかったのか!」


 ロロがそんな野次を飛ばしたが、その叫びは、誰の耳にもまともに届かなかった。


 女王だったものの裂けた頭部から、ぬらりとした巨体が引きずり出される。

 八本の腕はそれぞれが意思を持つかのようにうねり、神殿の床や柱に絡みついた。その姿はどこからどう見ても化け物だ。目が足に脚に大量についており、それがギョロギョロと辺りを見渡している。まるで、獲物を見定めているような目だ。


「……女王じゃ、なかったってことかな」


 ソラの呟きに答える者はいない。それは独り言だからだ。

 化けダコは低く湿った音を立てながら身を震わせ、その一振りで石柱を叩き折った。倒れた石柱をソラは後ろに跳んで避ける。轟音が巻き起こり、地面を揺らした。


 それだけでなく、神殿全体が大きく揺れる。天井の装飾が剥がれ落ち、白い石片が雨のように降り注いだ。石片を避けることは不可能だ。


「まずい、神殿が……!」


 ロロが叫ぶより早く、一本の触手が床を突き破る。

 亀裂は放射状に広がり、水圧と共に砂埃が舞い上がった。化けダコは神殿が壊れようが、どうでも良いようだ。


「来るよ!」


 アーチェの声と同時に、触手がソラへと振り下ろされる。

 反射的に剣を構え、受け止めるが、その衝撃は想像以上だった。大量の目がソラを怒りに滲んだ目で睨みつけた。


「っ……重い!」


 弾き返した触手が壁に叩きつけられ、壁そのものが崩落する。

 神殿は、もはや戦場であることに耐えられていなかった。


「ねぇねぇ、壊しすぎじゃない?」


 ラーフラは楽しそうに笑いながらも、素早く距離を取る。

 その背後で、料理長は腰を抜かし、泡を吐くように震えていた。


「あわ、あわどうすればいいんだー! 誰か助けてくれー!」

  

 ふくよかな体のわりには、動きが素早い料理長はその場を走り回っている。神殿がどんどんと壊れ始めている。ここにいては、無事では済まないだろう。


「逃げ道は……!」


 ソラが周囲を見渡した瞬間、天井に走る大きな亀裂が目に入る。

 そこから、鈍い音と共に崩壊が始まった。


 神殿が沈もうとしている。守られてきたはずの聖域は、今や化け物と共に崩れ落ちようとしていた。


「わ! ちょっと、くっつかないでよー!」 


「ひー!! 助けてくれー!」


 逃げ回る料理長に抱きしめられたラーフラはうっとおしそうに、彼を地面に投げ捨てようとしたが、かなりの力で抱きつかれているのか振りほどけずにいた。


「逃げよう! ここじゃ不利だ!」

  

 アーチェの声がどこからか聞こえた。蠢く八本の足に場所を分断させているほか、神殿の崩壊の音でどこに誰かいるのかが分からない。しかし、この状況で剣を交えるのは厳しいだろう。


「……」


 ソラは剣を収めると、迫り来る八本の腕を真正面から見据えた。


 そんな時だった。崩壊寸前の神殿に彼女が現れたのは。


「化けダコ……。話には聞いていたけれど、初めて見たわ」


 天に舞うように現れた彼女は特徴的な猫耳を寝かせながら、化けダコを見据えた。


「あれは……」


「テレーナ?」


 彼女の名前をロロが呟いた。正確には彼女はテレーナではない。ソラたちにとって忌まわしき相手であるリヴォルネというべきだ。しかし、見た目では彼女が誰かは分からないだろう。


「久しぶり、ソラ! でも、これがちょっと邪魔かな?」


 リヴォルネは腰に携えられた針を一本取り出した。その瞬間、ロロが怯えたように後ろに下がった。針に嫌な思い出があるのだ。それはソラも同じだ。針とは、リヴォルネがよく愛用していたものだ。彼女はそれを媒介として魔法を使う。


「あれは……。ソラ! 嘘だよな? そんなわけないよな? あいつは死んだもんな」


 ロロが自分を言い聞かせるように呟いている。気が付かない合間に、ソラの側にロロはやって来ていた。 

 化けダコが突然現れたリヴォルネに気を取られていたため、移動が容易になったのだ。 


「あれ、誰?」  

  

 ラーフラがキョトンとした様子でリヴォルネを見やった。彼はリヴォルネとは面識がない。突然現れた彼女が誰なのかは分からないのだ。


「邪魔よ、貴方」

 

 リヴォルネの手から針が飛び出した。その針は化けダコの体を貫き、あっという間に化けダコを地面に倒してみせる。死ぬ寸前、化けダコが呟いた一言がソラの耳に届いた。


「リヴォルネ! 貴様、魔王様に仇をなすきか……」


 その言葉を最後にして化けダコは動かなくなった。ソラが唖然としていると、隣にはもうリヴォルネの存在があった。


「あら、ロロもいるの」


 「!」 


「近づくな」


 ソラはロロを庇って前に出た。ロロはリヴォルネに酷い恐怖を抱いている。ここで接触させるべきではない。


「ねぇねえ、君は誰? なんとなく、獣人じゃない気がするんだけど」  


 側に来ていたラーフラがリヴォルネの服の裾を掴んだ。彼の碧眼とリヴォルネの青い瞳が交錯する。そして、その瞬間彼女の目の色が変わった。


「ルミナス……?」


「うん? 俺の名前はラーフラだけど」


「いいえ、貴方はルミナスに違いないわ。母親の私が間違えるわけがない」


 リヴォルネはラーフラを強く抱きしめた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジー ダークファンタジー バトル 勇者 魔王 魔法 心理描写 復讐・報復 裏切り・葛藤
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ